↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
天下布愛! ~男少女多のあべこべ世界、賭けるは男子の戦国ゲーム~  作者: 橘 ミコト
第二章 それは『愛』だっ!――vs毛利家編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
48/60

3-19. 動き出す、多々良浜

 大友家と毛利家の初めての衝突、『門司《もじ》城の戦』。

 戦は毛利の勝利に終わった。



 しかし――ここから全ての御家が動き出す。



 山陰の『尼子《あまご》晴久《はるひさ》』。

『門司城の戦』が終わるや否や、居城である”月山富田《がっさんとだ》城”から一万の軍を率いて出陣。

 当主の晴久《はるひさ》率いる軍は南下し、安芸《あき》の毛利家本拠地、”吉田郡山《よしだこおりやま》城”を目指し進軍を開始した。


 これに対抗する形で『毛利《もうり》隆元《たかもと》』と『小早川《こばやかわ》隆景《たかかげ》』は東進を開始。

『門司城の戦』で獲得した備後《びんご》の地で兵を集めつつ晴久《はるひさ》を迎え撃つ。


 時を同じくして、本州西端にまで追い詰められた大内家も挙兵。

『大内《おおうち》義長《よしなが》』は三〇〇〇の兵をかき集め、奪われた周防の奪還へ乗り出した。


 こちらには毛利家側から『吉川《きっかわ》元春《もとはる》』が動く。

 五〇〇〇の兵を従えて、大内の反抗の芽を叩くつもりだ。


 そして、九州豊後が大友家。


 筑前に位置する要衝、”立花山城”を基点とした『団体戦:鶴翼《かくよく》』を申請。

 『毛利《もうり》元就《もとなり》』がこの対処に追われる事となる。


 こうして、勢力を急速に拡大した毛利家を囲む毛《・》利《・》包《・》囲《・》網《・》が一斉に牙を剥いた。



 ――表向きの動きは以上である。


 これらに呼応する形で一世一代の舞台が、水面下で着々と準備を進められていた。



『「輝輝坊主《てるてるぼうず》」 with 戦国男子』。



 彼らの存在が、世の女性たちに色《・》々《・》な(・)意《・》味《・》で(・)火を着けるのだった。



 △▼△



「義隆《よしたか》殿も面白い事を考えるねー」


 間延びした感嘆を漏らすのは宗麟だ。


 尼子《あまご》晴久《はるひさ》と共に月山富田《がっさんとだ》城を出立して数日後。

 毛利軍にこっそりと付いてきた『大内《おおうち》義隆《よしたか》』が、これまたこっそり宗麟の下へとやってきていた。


 義隆《よしたか》の隠密性能が高い。

 本人も知らない才能だった。

 これも裏方に徹する『P(プロイデューサー)』としての本能だろうか。


 小早川《こばやかわ》隆景《たかかげ》という監《・》視《・》がいる中、隆元《たかもと》は迂闊に動けない。

 元就《もとなり》も馬鹿ではない、という事だ。

 自身の長女であり次期当主の隆元《たかもと》だろうと、警戒心を露《あら》わにしている事が伺える。


「肝心の輝弘《てるひろ》と輝元《てるもと》は?」

「隆元《たかもと》のところよ、宗麟様」

「この後の動きは?」

「まだ『戦《いくさ》』の申請がされていないから何とも言わないわね。ただ、隆元《たかもと》はこれ以上動けないわ」

「隆元《たかもと》殿には無理を言っちゃったなあ」

「『宗麟様に頼られたー! 推しの笑顔とか尊死できる!』って滅茶苦茶に喜んでいたから大丈夫じゃないかしら。狂喜乱舞よ」

「狂喜乱舞……」

「狂喜乱舞」

「”尊死”、って何?」

「”極楽”って事では?」


 宗麟は微妙な顔。

 義隆《よしたか》は満足そうだ。


「まあ、いっか」


 これが宗麟である。


「じゃあ、晴久《はるひさ》殿のところへ話を通しに行こうかな」

「こちらの動きに合わせる、という事でよろしくて?」

「うん、問題ないよ」

「分かったわ。ありがとね、宗麟様」


 パチリと義隆《よしたか》はウィンクを送る。

 日乃本で初めて行われたウィンクだった。

 流行の最先端をいとも容易く生み出す女性である。

 ある種、末恐ろしい。


「宗麟様、結局結局、私たちは何をするんですか?」

「おにぃ、眠い……」

「誾千代《ぎんちよ》は寝てれば?」

「仲間外れは良くないんだぞ!」


 義隆が姿を消した後。

 それまで静かにしていた三人組が口を開く。


 紹運《じょううん》、誾千代《ぎんちよ》、塩市丸《しおいちまる》だ。


「そうだねえ」


 毎度の如く、宗麟はのんびりと考える。


「義隆《よしたか》殿のお手伝い、かな」

「具体的には、兄様?」

「裏方だね。やって来た女性たちに接触するのは危ないだろうし」

「おにぃ、危ないの?」

「そこは義隆《よしたか》殿が警備を厳重にやるって言っていたから、大丈夫だとは思うけど」

「私は舞台付近の警備にと、なんでかなんでか組み込まれちゃったのですが……」

「まあ、紹運《じょううん》なら大丈夫じゃない?」

「宗麟様? とってもとっても扱いが雑です」

「信頼しているんだよ?」

「とってもとっても頑張ります!」


 紹運《じょううん》はチョロかった。



 △▼△



「兄者---!」

「ここにはいませんよ、義長《よしなが》様」

「兄者ぁぁぁーーー!?」


 船にて豊後へと降り立ったのは大内《おおうち》義長《よしなが》御一行。

 出迎えに来た大友家臣団の前まで走り寄り、そのまま膝から崩れ落ちた。


 家族に飢えているのかもしれない。


「じゃあ、塩市丸《しおいちまる》はっ!?」

「宗麟様とご一緒しているので……」

「え」


 義長ちゃんは涙目だ。


「ほら、義長《よしなが》様。義鑑《よしあき》様はいらっしゃいますです!」


 何とか慰めようと義長《よしなが》へ声をかけたのは『陶《すえ》晴賢《はるかた》』だ。


「母《かか》ぁ……?」

「おお、義長《よしなが》……」

「母《かか》ぁ!」

「義長!」

「母ぁぁぁぁあああ!!」

「義長ぁぁぁあああ!!」


「生きとったんか!」


「生きとるわっ!?」


 感動の再会である。

 ハグする前に義鑑《よしあき》が盛大にヘッドスライディングである。


「で、長門《ながと》の方はどうかしら?」


 母娘の方を放って晴賢《はるかた》へと声をかけたのは『吉弘《よしひろ》鑑理《あきまさ》』だ。


「風前の灯です」


 晴賢《はるかた》は神妙な顔。

 両の拳をギュッと握りしめる。


「そう。それで三〇〇〇も兵を集められるなんて大したものね」

「私には、もう、これくらいしか出来ないです。不甲斐ないです」

「何言っているの」


 鑑理《あきまさ》は呆れたように、片手を晴賢《はるかた》の頭の上へ置く。

 スレンダー体型の鑑理《あきまさ》はそれなりに背が高い。

 未だ成長過程にある晴賢《はるかた》は、鑑理《あきまさ》を見上げる形となった。


「貴女がいて、私は心強いのよ。胸を張りなさい。貴女は決して、弱《・》く(・)な(・)い(・)」


 晴賢《はるかた》は目を見開く。

 ここのところ負け続きの彼女だ。

 何も良い所を見せられていない。


 それでも。

 それでも、自分を必要としてくれている。


 それは、晴賢《はるかた》にとって、


「ありがとう、ございますです」


 素直に受け取れないものの、素直に嬉しい言葉でもあった。


「さて、義鑑《よしあき》様。いつまでいじけているのですか。帰りますよ」

「じゃって、義長《よしなが》がぁっ!?」

「ウチは悪くなか!」

「母を勝手に殺す娘がおるか!」

「知らんもん! ウチだって大変やったんやもん!」

「義長《よしなが》が大変じゃったらワシは死ぬのか、死なんじゃろ! はい論破ー!」

「ふぐぅぅう!?」


「義鑑《よしあき》様……」


 さすが義鑑《よしあき》、大人気ない。

 鑑理《あきまさ》も、これにはため息しか出てこなかった。


「十日後には多々良浜《たたらはま》へ毛利軍がやってくるんですよ?」

「知っとるわぃ!」

「大内家と共闘するのですから、変ないざこざの種を撒かないで下さい」

「撒いとらんわぃ!」

「連携が狂ったら義鑑《よしあき》様のせいにしますよ?」

「ワシのせいじゃないわぃ!」


「母《かか》ぁ……。なんだかウチ、切なくなってきたとよ。ウチが悪かったたい。機嫌直して、ね?」


「何故じゃっ!?」



「鑑理《あきまさ》殿も大変ですね」

「はあ……。宗麟様も尼子家とは別の動きをするようだし……」

「ですです」

「大丈夫かしら」

「大丈夫ですよ」

「あら。先ほどは自信が無い様子だったけれど?」


「だって、宗麟様ですからね」


 晴賢《はるかた》と鑑理《あきまさ》は目線を交わらす。


「はは」

「ふふ」

「そうね」

「はいです」


「「宗麟様、ですからね」」



 そして、近年稀に見る大戦。

 複数の御家と戦場が入り混じる戦役。


 ――『多々良浜《たたらはま》の戦』が始まる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。