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天下布愛! ~男少女多のあべこべ世界、賭けるは男子の戦国ゲーム~  作者: 橘 ミコト
第二章 それは『愛』だっ!――vs毛利家編

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3-20. ここからが本番だ

 様々な思惑が絡み合う中。

 ついに、『多々良浜たたらはまの戦』が始まった。


 仕様は『団体戦:鶴翼かくよく』。


 額に巻いた鉢巻きを奪う、最もシンプルな形の戦だ。

 籠城や飛び道具もあり。

 決められた数人の大将を討ち取るまで、時間制限もない。


 その分、兵力等の純粋な国力、地の利を生かした計略等、様々な要因が勝負の明暗を分ける。


 大友家は当然、


「私が来たぜ!」


 武神、『立花たちばな道雪どうせつ』を主軸としてぶん投げる。


 そもそも、多々良浜を戦場に選んだのも「山城」があるため。

 この城の城主は名の如く道雪である。


 実は城持ちであった道雪だ。


「大内の所領に道雪殿の城があるってのは、何だか不思議なものですけどねえ」

「まあ、大内と大友の仲が良いって喧伝できるから、お姉さん的には良い案だと思う」


 戦の開始直前でこの会話である。

 大友家の家風、ここに極まれり。


鑑速あきすみ長増ながます。行くわよ」

「はいさっさ」

「何それ、可愛い。お姉さんも使ってみようかな」

「似合わないから止めときなさい、長増ながます

鑑理あきまさ、最近冷たくなあい?」

「誰に対してもこんなものよ」

「どうでもいいからさっさと行こうぜ行こうぜー!」

「ああ、道雪殿が楽しそうで何よりです」

門司もじ城じゃ鬱屈していたものね。お姉さんも頑張ろうっと」

「……本当、貴女たちの気楽さが羨ましいわ」

鑑理あきまさ殿、考えるだけ無駄ですよ」

「そうよ。だって宗麟様が何をするか、お姉さんたち結局よく分かっていないのだもの」

「書状は来たけどな。輝弘てるひろたちと、何だったっけか」

「舞台、とはありましたけどねえ。舞でも踊るんでしょうか」

「宗麟様の舞いかあ。お姉さんも見たかったなあ」


「行 く わ よ !?」


「「「はーい」」」


 大友家の家風である。

 家風ったら家風である。

 決して遊んでいる訳ではない。


「そういえば、大友家わたしたちは何を賭けるんだよ」

「え、道雪殿、それ本気で言ってます?」

「ちょっと興味がなさすぎじゃないかしら。お姉さん幻滅」

「仕方ないわよ、道雪だもの」

鑑理あきまさ殿が言うと説得力ありますね」

「てめえら、後で覚えとけよ」

「覚えていたらね。……博多よ」

「博多かあ。まあ、確かに毛利も欲しいだろな」

「そういえば、ザビエル殿はどちらへ?」

()()()よ、鑑速あきすみ

「……元就もとなり殿のところで何やら熱く語ってますね」

「布教も大変ねえ」

長増ながますじゃないけれど、本当に精が出ると私も思うわ」

鑑理あきまさ殿、アレって良いんですか?」

「宗麟様を褒めたたえているのでしょう? 良いんじゃないかしら」

「ザビエル殿って何教なのか、私、分からなくなってきましたよ」

「安心しなさい、私もよ」

「お姉さんも」

「私もだな」



 △▼△



「……随分な出迎えじゃないか、えぇ?」


 少々やつれた様子の毛利家当主、『毛利もうり元就もとなり』。

 ザビエルに付き合っていたのだろう。

 地味に彼女の優しさが垣間見えた。

 ザビエルの押しが強かっただけかもしれない。


「それはこちらの意図するところではないわ」

「ザビエル殿のせいです」

「お姉さんたち悪くないわよね?」

「私は知らねーぞ」

「皆さん、そういうの知ってますカ? って言うのですヨ?」

「良く知っているわね」

「勉強しましたからネ! と、します!」

「あら、歌の才もあるのじゃない?」

「ウフフ、自分の才能が怖いデス……」

鑑理あきまさは別に褒めているわけじゃないって、お姉さん一応言っておくわね?」


 元就もとなりが顔を引くつかせる。


 大友家とまともに対面したのはこれが初めての彼女だ。

 前回は末娘の隆景たかかげが来ていた。

 隆景たかかげもこんな思いをしていたのかと、若干思いを馳せてしまったのだろう。


 これぞ大友家の洗礼。

 宣教師がいる御家は伊達じゃない。


「……進めてもいいかい?」

「ああ、失礼。どうぞ宜しくお願い致します」


 煽っているようにしか聞こえない。


「天満宮の。さっさとやっておくれ」

「あ、はい」


 今回は「大宰府だざいふ天満宮てんまんぐう」の巫女たちが審判を務める。

 菅原道真すがわらのみちざね公を祀る由緒正しき神社だ。

 祭神がという事もあり、毎年多くの参拝者が訪れる九州でも有数の規模の宮である。


「毛利殿」

「なんだい?」


 突然。

 鑑理あきまさ巫部かんなぎの宣誓より先に一歩、前へ踏み出した。



は、何?」



 清流のように澄んだ瞳で、鑑理あきまさは真っ直ぐに見つめる。

 周囲の人は怪訝な顔だ。

 鑑理あきまさの言葉の意味を上手く読み取れない。


「鑑――」

「道雪、少し、静かにね」


 いつになく真剣な様子の長増ながます

 口を開きかけた道雪は、所在なさげに上げた手を頭に持っていった。


「どういう意味だい?」

()()で、良いのね?」

「意味が分からないって、私は言っているのだけどねえ」

「そう」


 やりとりは極わずか。

 それで何が通じ合ったのか。

 言の葉の応酬に、果たして意味はあったのか。


 理解できるのは、この場では両者のみだ。


「いいわ、力づくで聞き出してあげましょう」

「それはおっかないねえ」



「これより、『いくさ』を始める!」



 △▼△



「不可解なのよ、毛利の動きが」


 法螺貝が鳴り、戦の先端が開かれた。


 道雪は「ヒャッハァー!」。

 我先にと木刀を掲げながら走り出した後だ。


「それは、ですかね?」

「そうね……。ええ、そうよ、鑑速あきすみ


 鑑理あきまさは顎に人差し指を当てて考え込む。


「大友と大内の繋がりは勿論、尼子との繋がりすら掴んでいたのよ」

「領土も広がって叩かれる事など目に見えていた、と。お姉さんも不思議には思っていた」

「そうですね。大内を追い込むやり方も少し雑でしたし。厳島の『特殊戦:蜂矢ほうし』以降はただの悪目立ちでしたよ、アレ」

「ええ。兵力が追い付いていない事など、元就もとなり殿であれば当然気が付いているはず」

「それでも、こちらに拳を上げてきた……。何か別の目的があったって鑑理あきまさは思っている訳ね?」

「……宗麟様とか?」

「あながち、その線が一番濃厚なのよ」

「え゛」

「あら、鑑速あきすみ。貴女、自分で言ったのよ?」

「……鑑理あきまさ殿、本気で言ってます?」

鑑理あきまさは本気でしょうね。だからさっきは元就もとなり殿に直接確認をした。お姉さんの認識は合っているかしら?」

おおむね、ね」

「つまり?」


「宗麟様が狙いではあるけれど、宗麟様を手に入れようとは考えていないのではないかしら?」


 鑑理あきまさの推測に長増ながます鑑速あきすみは、


「ああ」

「なるほど、ね」


 ここにもし道雪や義鑑よしあきがいたら違う言葉が返ってきたことだろう。


「今回は石宗せきそうがいないから、道雪も『雷切』は使えないわ」

「お姉さんたちもを出さねきゃね」

「私はいつも割と本気ですよ」

「いつも以上にって事よ。――吉弘よしひろ鑑理あきまさ、出るわ」


 鑑理あきまさは額に巻く鉢巻きを今一度きつく締める。


「ふふ、久々ね、前線なんて――吉岡よしおか長増ながます、推参します」


 長増ながますはゆっくりと木刀を抜き放つ。


「まあ、頑張りますよ。――臼杵うすき鑑速あきすみ、推して参りましょう」


 鑑速あきすみはメガネの位置を調整。


「行くわよ」

「ええ」

「はい」



「「「狙うは、毛利もうり元就もとなりの鉢巻き、ただ一つ!!」」」

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