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天下布愛! ~男少女多のあべこべ世界、賭けるは男子の戦国ゲーム~  作者: 橘 ミコト
第一章 貴方はまだ、宗麟の恐ろしさ(優しさ)を知らない――vs大内家編

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2-ex. 大内の当主、誰がやる?

 大内家との『戦《いくさ》』が終わってから。


 大友家と元大内家の家臣たちによる宴会が催されていた。


 義隆《よしたか》という暴君から解放された人々は顔も晴れやかだ。

 普段、どれほどの無理難題や厄介事を押し付けられていたのか。


 その苦労が偲《しの》ばれる。


「皆、盃《さかずき》は持ったかの? それじゃあ、乾杯なのじゃ~~!」


「「「かんぱーい!!」」」


 笑顔で酒を飲みかわす人々。


 大友家の面々とも、特に遺恨のない元大内家の家臣たちだ。

 会場も和やかな雰囲気である。


「かぁっ! やっぱり勝った後の酒は美味え!」

「道雪《どうせつ》、貴女、何もやってないじゃない」

「……案山子《かかし》」

「鑑理《あきまさ》、石宗《せきそう》。私がいたから義隆《よしたか》は降参したんだぜ?」

「まあ、確かに、そうだけれど」

「……不満」

「今回はお前たちの方が何もやる事なかったんじゃね?」


 へっへーん!

 道雪は得意気に鑑理《あきまさ》と石宗《せきそう》を弄る。


 鑑理《あきまさ》はあきれ顔だ。

 石宗は無表情である。


「あのねえ、宣戦布告の雑事等、誰がやっていると思っているの?」


 「貴女がやる?」と鑑理《あきまさ》は微笑む。

 石宗はやはり無表情だ。


 彼女の鉄面皮は酒が入っても崩れない。


「そうですよぉー。道雪殿は事務仕事、からっきしじゃないですかぁ」

「鑑速《あきすみ》、てめえ、酒よえぇクセに」

「お酒は好きですよぉー」

「だから面倒クセぇんだよ!」


 ぐでー。

 鑑速《あきすみ》は道雪の肩へもたれかかるように彼女と肩を組む。


「あらあら。鑑速《あきすみ》はお姉さんのところねー」

「いやぁ、長増《ながます》殿ー。やわらかー」

「ふふっ。義鑑《よしあき》様みたいね。お姉さんの母性本能くすぐられちゃう」

「え、ワシ、そんなじゃないじゃろ!?」


 急に名前の出てきたご当主様が愕然とした顔でやってくる。


「名前を呼んだらすぐ来る辺りとか、お姉さん的には似てるかなって」

「犬みたいじゃの」


 まるで他人事だった。


 戦に勝利し気分が良いのだろう。

 細かい事は気にしないとばかりだ。

 酒が入っているのも大きい。


 しかし、宴は始まったばかりだ。


「一番、陶《すえ》晴賢《はるかた》! 一気飲みやりまーす、です!」

「よっしゃ! 私と飲み比べだ、おら!」


「あの二人大丈夫かの?」

「お姉さん知らない♪」 


 長増《ながます》はきっぱり言う。


「長増《ながます》って笑顔でそういう事を言うのよね……」

「じゃが、鑑速《あきすみ》の面倒は見るじゃろ?」

「鑑速《あきすみ》は彼女にとって子供枠なのでしょう」

「……楽」


 「なるほどのー」と鑑理《あきまさ》の言葉に納得の義鑑《よしあき》。

 鑑理《あきまさ》は「義鑑《よしあき》様もですよ」という事を飲み込んだ。


 今日くらいは優しくしようと思ったのかもしれない。


 石宗は無言で義鑑《よしあき》を見つめる。

 目は口以上に物を言うが、子供には聞こえないらしい。


「紹運《じょううん》! この梅茶、上手いぞ!」

「誾千代。ずっとずっと気になってた事があるの」

「何?」

「どうしてどうして私だけ呼び捨て?」

「だって紹運《じょううん》だもん」

「それはそれはどういう意味かな!?」


 酒の飲めない子供たちは漬け込んだ梅で入れたお茶を飲んでいた。

 大人たちのテンションとは異なるが、こちらはこちらで楽しそうだ。


「市姉ー。紹運《じょううん》がジョウってる」

「お、今日も元気にジョウってるね」

「ジョウってる!?」

「ジョウっとる」

「え、それはそれは共通言語なんですか!?」

「乙姉も乙ってるー」

「オツって……? それは悪口じゃなかと?」

「誉め言葉だよ、姉様」

「じゃあ、よか!」

「私の姉様が今日も可愛い」

「乙姉は馬鹿だね!」

「それは分かると、悪口たい!」


 キャイキャイとはしゃぐ女性たち。


 そんな和気藹々とした光景を、宗麟は微笑みながら見つめていた。


「宗麟様」

「ん、鑑理《あきまさ》。どうしたの?」

「いえ……」


 珍しく一人でいるから来た、などとても鑑理《あきまさ》の口からは言えない。


 用事がないと声をかけられない乙女な彼女だ。

 仕事なら問題なくとも、プライベートでは緊張が勝るようである。


 もしやチャンス、など思っていない。

 見た目は二十代でも通じそうなアラフォーである。

 ワンチャンあるかも、など断じて思っていない。

 

 思い切って声をかけた、なんて。


「そんな、そんな恥ずかしい事、私には似合わない……!」

「鑑理《あきまさ》、全部漏れてんぞ?」

「ぇ」


 ニヤニヤした道雪がいた。

 鑑理《あきまさ》は目の前の宗麟を見れない。


「鑑理《あきまさ》は可愛いね」


 これには宗麟もニッコリ。


「あ、死んだぞ、こいつ」

「鑑理《あきまさ》殿、かーわーいーいー」

「はいはい。ほら、鑑速《あきすみ》。お姉さんのとこにおいでー」

「はーい!」

「二階崩れの変の時も思いましたけど、大友家は愉快です」

「晴賢ちゃんよぉ、大友家の一部だぜ、あれ」

「そうです?」


 晴賢は横を見る。


 宗麟に誰が酒を注ぐかで、諸将による醜い争いが行われていた。


「そうです?」

「いや、わりぃ、いつもこんなだわ」

「ですです」


「そういえば」


 ここで。


 宗麟が思い出したように手をポンと打つ。


 一瞬で宗麟へと身体を向け、静寂が場を支配する。

 訓練されたかのようなそれは、芸術の域であった。



「旧大内家の所領を誰が統治するかなんだけど」



 お酒の席でその話するぅ?

 などと言う輩はここにはいない。


 宗麟の深い御心に従うまでだ。


 完全に宗教である。


「大内家の家臣さんたちがそのまま統治で良いと思うんだ」


 元大内家の方々がガタリ。

 驚きで酒を零す人までいた。


「そ、宗麟さん? それで、良いのです?」


 晴賢《はるかた》は恐る恐る聞く。


 普通は大友家の者が出張ってくる。

 それが戦国の世の習わしだ。


「一応、当主は大友家から出すけど、実質的な政務は任せた方が効率良いと思うよ?」


 対して、宗麟は不思議そう。

 「その方が良いでしょ?」と、ただそれだけの顔である。


 元大内家諸将は、


「「「ありがとうございます!!」」」


 揃って、宗麟へと頭を下げた。

 

 宗麟の御心に触れた瞬間だった。


 信者が増えた。


「では、誰を派遣するかは後程でこちらで候補を出しておきます」


 仕事の事なら任せなとばかり。

 すっくと鑑理《あきまさ》は立ち上がる。


「お、復活した」

「やっぱり紹運と鑑理《あきまさ》は親子よね。お姉さん最近よく思うの」

「……酷似」

「え、そうですか? なんだかなんだか照れますね……!」

「これで褒められてると思える辺り、紹運《じょううん》はまだ純粋だな」


「あ、ごめん、鑑理《あきまさ》。候補はもう考えてるんだ」


「え……」


「ぶっはー! 鑑理《あきまさ》が捨てられた子犬みたいな顔してやがる!」

「道雪笑い過ぎよ。ふふっ」

「長増《ながます》殿も、笑ってるじゃないですかー。ぷーーーっ!」

「鑑速《あきすみ》、こそ。ふふっ、ふふふ」

「あーっはっはっはっは!!」


「義鑑《よしあき》様は笑いすぎです」


「なんでワシだけ!?」


 真っ赤な鑑理《あきまさ》の照れ隠しの矛先は、義鑑《よしあき》一人に絞られた。




「じゃあ、お願いね。――塩乙丸《しおおとまる》」




「任せると、兄者! ……何を?」


 後日。


 元服を行った塩乙丸《しおおとまる》は『大内《おおうち》義長《よしなが》』となる。



「え、ウチ、何やると?」

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 通常負けた大名の領土は、勝った大名がその領土に代官などを一部クビにして、勝った大名の家臣が納めるものだが、全てを負けた大名の制度のままにすることは一般的に、ありえないからなー。本当に宗…
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