表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
天下布愛! ~男少女多のあべこべ世界、賭けるは男子の戦国ゲーム~  作者: 橘 ミコト
第一章 貴方はまだ、宗麟の恐ろしさ(優しさ)を知らない――vs大内家編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
28/60

2-23. 決着の時、『大寧寺の変』!②

 ニヤリ。


 晴賢はるかたは黒い笑みを返した。


「戦に回避は存在しません。受けるか、降伏するか。二つに一つです」



 ここに!


 宗麟の策が成る!



「大友家から宣戦布告をすれば、戦の仕様を決めるのは大内家です」


 晴賢は今までの鬱憤を晴らすかのよう。

 朗々とその策を義隆へ語り聞かせる。


「そうすれば、義隆よしたか様は”団体戦”にするはずです。しかし、それでは不確定要素が多すぎますです。確実に勝つには――」


()()宣戦布告させる必要があったんじゃよ」


 晴賢はるかたの言葉を継いで。

 義鑑よしあきが怒りで体を震わせる義隆よしたかへ言葉を突きつける。


「そ、それでも!」


 義隆はキッと義鑑よしあきを睨みつける。


「例えここで負けたとしても! 我が家の男を一人差し出せば終わりでしょう!?」


 絶対に許さない。

 次は覚えていろ。


 そんな心情がありありと義隆の顔に浮かんでいた。


「違うのぅ」


 しかし、義鑑よしあきは静かだ。

 むしろ、その顔には憐憫すらある。



「義隆殿、お主に次ぎはないんじゃよ」



 義鑑よしあきの言葉に、義隆は目を白黒させる。

 理解が追い付いていない。


「分からぬか? そうじゃろうな。何せ、お主は宣戦布告のを見ておらんだろうからのぉ」


 義鑑よしあきの言葉を聞いて。


 義隆はサッと顔色を失った。


「え……まさか」

「私は言いましたですよ?」

「晴、賢……?」

しなくて良いですか? って」


 晴賢はるかたの言葉の通りだ。


 義隆よしたかは、晴賢はるかたへ、戦の事務を()()()


 つまり、



「私が布告した賭けの対象は――『()』ですよ?」



 何を賭けて戦うかすら、義隆よしたかは理解していなかった。



 通常、この時代の『戦』は”男を賭けて”行うものである。


 しかし、それでは”所領”が増える事がない。

 男の行き来だけしか発生していないのだから、当然と言えば当然だ。

 

 ここで、少し昔の話をしてみよう。


 大友家が今回、大内家との全面抗争へと至った切っ掛けは何だっただろうか。

 肥前の少弐しょうに家が大内家に『戦』で負けたからである。


 その後はどうなったか。


 という所領を奪われたのである。


 すなわち。



 『 男以外にも戦にて賭けの対象となる物 』が存在する事に他ならない!



 それが、『所領』!

 そして、『当主の座』!



 では、これらが賭けられる時とはいつか。



 以前一度だけ触れた話だが、男には””が存在する。


 『この精からは男児が多く生まれた』等、寺社にて格付けが行われるのだ。

 血統書のようなものである。


 これにより、賭けるべき対象である『男』の価値において、双方の吊り合いが取れない時が生じる。

 それは小国であればあるほど機会があるだろう。


 その際に。


 領地の一部等を割譲し補填する。


 もしくは、当主の座を退き、敵国へ所領を譲る。




 それら()()()()()()――これが、『いくさ』だ!




 ここで、最後の質問をしよう。


 何故、少弐しょうに家はそうも簡単に所領である肥前を取られたのだろうか。


 答えは一つ。


 ――龍造寺りゅうぞうじによる




「お、大友家が、賭けるのは……?」



 義隆よしたかが目を見開いて震える。


 その先には、


「僕と」

「私と」

当主ワシの位じゃ」


 大友おおとも宗麟そうりん

 大内おおうち輝弘てるひろ

 そして、豊後大友家の所領。


 これらを合わせた価値が西国一の大国、大内家の当主の位と釣り合っている。


 戦を司る巫部かんなぎと尼たちは、そう判断した。


 義隆は呆然と立ち尽くす。


「む、無理よ……」


 呟く。


「無理よ」


 声を上げる。


「無理よっ!」


 叫ぶ。


「無理よぉぉぉおおおっ!!」


 絶叫した。


 義隆よしたかは常日頃から遊んでいた。

 鍛錬など久しくしていない。


 そんな彼女が立花たちばな道雪どうせつと一騎打ち。


「勝てる訳、ないじゃない!!」


 肩を震わせ、俯く義隆よしたか

 しかし、彼女に寄り添う者はその場にいなかった。


 彼女の日頃の行いの結果だ。


 他人を見下し、こき使い。

 自分は贅沢の限りを尽くして遊び呆けていた。


 領民に寄り添う事もなく。

 税を引き上げ。

 他国へと度重なる出兵を強行した。


 彼女の人望は、地に落ちていたのである。




「大内殿」



 

 そんな彼女へ。


 一人の青年が声をかける。


宗麟そうりん、殿」


 魂を失ったかのように顔の色を落とした義隆よしたかがいる。


 自業自得。

 そんな言葉が周囲から聞こえてきそうな最中。


 さらに言えば、この状況を作り出したのは宗麟自身だ。


 しかし、



「大内……義隆よしたか殿。僕は、貴女を()()()()



 義隆はピクリと震える。


「ははっ、さっさと戦を始めろって? 顔に似合わずエゲツないのね、貴方」

「違います」


 静かに。

 けれども、力強く。

 義隆よしたかの言葉に被せるように。


 宗麟は、言葉を紡ぐ。


「僕は、貴方を本当の悪人だとは思っていません」

「……私の何を知っているのよ」

「何も知りません」

「じゃあ、適当な事言わないで」

「適当な事じゃありません」

「じゃあ、何だって言うのよっ!」


 義隆よしたかは俯いていた顔を上げる。

 癇癪を起した子供のようだ。


 そんな彼女を真っ直ぐと宗麟は見つめる。


 決して目は、逸らさない。


 義隆よしたかはウッと息を飲む。


 場は完全に宗麟の雰囲気へ。


 そして――!




「貴女はとても綺麗な目をしていますから。とても、美しいです。僕は、そんな貴女が更生するのを、いつまでも、待っています……!」





「へ……?」





 時が、止まる。





 全ての人の、時が、止まる。





「へええええぇぇぇぇぇ!?」




 義隆の奇声が空へと抜けた。



「若ぁぁぁあああ!? 敵に海の幸を送ってどうすんだよぉぉぉぉおおおお!?」

「宗麟がこんな時も宗麟じゃったぁぁぁあああ!! もう駄目じゃあああ!?」

「誰ですか、宗麟様に任せちゃった人ぉ! 私じゃないですよ!?」

鑑速あきすみ、こんな時までお姉さんたちに罪を擦り付けないで!」

「あぁ、私もそんな事言われてみたいわねえ……」

「母様!? しっかりしっかりして下さい!?」

「……重症」

鑑理あきまさ様って面白いな、母」

誾千代ぎんちよ鑑理あきまさが普段からこんななら大友家は即滅びる」

「自覚あったのね、お姉さん感心」

「そこまで馬鹿じゃねえ!!」

「これがあれですか、照れ隠しですか?」

「母、鑑理あきまさ様の事好きだもんな」

誾千代ぎんちよ、すこーし黙ってようなぁ!?」

「今回は付いて来とって良かったばい」

「何で、姉様?」

「兄者の監視ができるとよ」

「うわぁ、重たい妹……」

「あたいの勝ちー」

「え、誾千代ぎんちよ、何の勝負とね!?」

「母様母様! 正気に戻って! ()()を止めなくて良いんですか!?」

「どうしたの、紹運じょううん? アレ、って……」


「宗麟さーーーん! 私も頑張ったんですぅ!」

晴賢はるかた! 貴方、宗麟様に馴れ馴れしすぎじゃなくて!?」

義隆よしたか様こそ何腕絡めてんですか、邪魔です!」

「邪魔は貴女よ!」


「「「こんの泥棒猫がぁぁぁぁああああ!!??」」」


「あの、勝敗は……?」


「ん、何よ、私は今忙し、ああ。大内家わたし()で結構よ!」


「あ、はい……勝者、大友家ーー!」




 後の世に。


 『本能寺の変』と並び、天下にて”二大下剋上”とうたわれた事変がある。


 その一つ。


 『大寧寺の変』は、ここに成った。


 恐らく、成った。


 これで、良いのか。




「宗麟様! 何としても、貴方を手に入れて見せましょう! 例え、()()()()()()!!」


「うん、待ってるねー!」



「「「待たないで下さい、宗麟様ぁぁぁあああ!!??」」」



 女性たちの怒りの包囲網を掻い潜り。


 義隆よしたかへと落ち延びる。


 彼女の置き土産の言の葉は。


 次の波乱の、


 ――はじまり、はじまり~!

まずはここまでお読み頂き、ありがとうございます。

これにて第1章は完結です。

次話は幕間を1話挟み、続いて第2章へと入っていきます。


そして、少しでも面白いと思って下さったならば、下部の☆評価をポチっとして頂けると私のモチベが上がりますので、どうぞよろしくお願い致します!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点] 島津の動向が気になる。 [一言] 大友宗麟は、この世界でもキリスタン大名になるのかな。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ