驚愕
次の日、私はいつものようにアリーのもとへと向かった。こんな監視されているような生活の中で耐えていられるのは、きっとアリーのおかげだろう。
私は友達と言っているが、二人目のお母さんのような感じがするし何より心が暖かくなる。
でももし私がこの王宮を出てしまったら、またアリーは一人ぼっちになってしまう。もしアリーがあそこにいることがばれたら、おそらく殺されてしまうだろう。
「いけないわ、縁起の悪いことは考えるものではないわね。
もしそうなったら、その時にでも考えればいいのだし」
私は心の不穏な空気をとっぱらい早歩きでアリーのもとへ向かった。
「こんにちは~アリーいるかしら。今日も話があるのだけれど」
アリーはたいてい天井に張り付いて眠っている。ほとんどの場合、私が起こしてあげなければいつまでも眠っている。
「アリシア、そんなに大きな声を出さなくても聞こえているわ。それよりももうお昼なの?時間がたつのは早いわね。
あなたがここに来た理由はもう知っているわ、また私に愚痴を聞けっていうんでしょう。私はあなたと話しているだけで楽しいのだけれど、あなたはそれだけで楽になるの?」
「もちろんよアリー。悩み事なんかは一人で抱えているのと二人とでは全く違うでしょう。ストレスもそんな感じよ、私のストレスを一緒に共有しましょ」
さすがに今の言葉は自分でも横暴な感じがするが、アリーが楽しいて言うんだから遠慮する必要はないわね。
ところでそうしてアリーはそんなに私のことを知っているのだろう?
「私の愚痴を聞いてもらう前に聞きたいことがあるんだけどね、なんでアリーは私が話したいことがすでに分かっているの?もしかして超能力かなにかかしら?」
「そうね~超能力ではないわ。よ~く考えてみて、私は言葉は話せるけどもともとはその辺にいるただの虫だったのよ、当然虫たち言葉も分かるわ。
一応あなたに何かないよう、仲間の虫に見張ってもらっていたの。
そしてその虫たちが、私に報告してくれるってわけ。別に私生活は覗いてないわ」
なんだそんなことができるのか、言葉が話せる虫は便利なものだな~
ってそんなのんきなことを考えている場合ではないわ。もしかしたら...
「それじゃあ、昨日の夜に私が王室に呼び出されて話していたこともしっているの?」
「ええ、しっかり耳に入っているわ。でもあの時はありがとうね、あなたがここに人を近づけないようにしたのは、私のためなんでしょう?今あなたはとても疑われているわ、十分に気をつけなさい。もし私のことがばれたら、私に操られていたふりでも何でもしなさい、私が守ってあげるからね」
アリーの言葉に気が付けば私は涙を流していた。私に力が戻っていれば守ってあげられるのに、ごめんなさいアリー。
私が涙をぬぐっていると、唐突に部屋の扉が開いた。
「アリシア様いらっしゃいますでしょうか?王子がお呼びです?」
ああ見られてしまった。この兵の目には思いっきりアリーの姿が映っているわ、こうなったらしょうがない。
「アリー」
「ええ」
私の合図とともにアリーは糸を飛ばし、簡単に兵をとらえてしまった。
私は身動きの取れない兵に近づき、交渉を持ち掛けてみることにした。
「あなたここで死にたくはないわよね?」
私の問いかけに兵はこくこくと頷く。
「死にたくないのなら、今ここで見たことは忘れなさい。いいわね、もしあなたがこのことを話してしまえば、その時は覚悟しておいてちょうだい。
アリーもういいわ」
巻き付いていた糸をほどき兵は一目散に逃げていった。
これで大丈夫だとは思うんだけどね。
「アリs」
「アリーよく聞いてちょうだい、あなたは今とても危険な状況に直面しているの。一応口止めはしたけど万が一にもあの兵が言うかのせいがあるかもしれないから十分に気を付けて頂戴。
ここに長居しているとまた誰か来てしまうから私はもう帰るわね。
何かあったらどんなことをしてでも私を呼びなさい。わかったわねアリー」
有無も言わさぬ私の言葉にアリーはただ頷くしかなかった。
だがまだアリシアは気づいていなかった。アリーの存在がラジエルの耳に届いていることを。




