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ベッドの軋む音〜夜間警備で聞いた、誰もいない314号室の秘密〜【5話完結】  作者: さく


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3/5

ベテラン先輩が、部屋番号を聞いた瞬間に青ざめた理由

三日目。


透はいつものように、マスターキーをキーリングに結着する。

懐中電灯も忘れず机の上に用意する。

腕時計を左手にはめて、時間が正確かチェック。


透は二日程開いて出勤した。

正直、二日開いて良かったと思う。

あの後も、めちゃくちゃイジられた。


この休みでリセットした。

透は頬を叩き、気を入れ直す。


忘れないように、一つひとつ指さしで装備品を確認していく。

今日も相勤者は勝だ。

本当に良く会うなと思う。


「巡回行ってきます。」

透が勝に向かって、声をかける。


「おう!」

いつもの調子で、右手を上げる勝。

その顔はもうニヤついている。


「止めて下さい!」

透は先手を取って、言う。


勝はカメラに向き直って、軽く笑う。

「行ってこい。」


透はいつものバック通路に出る。

当然、真っ暗だ。

しかし、今日は怒りが勝つ。


コツコツコツ…。


革靴が鳴る。

歩き方に感情が出ていることに気がついた。




透は扉の前で深呼吸する。

こんな気持ちのまま、お客様の前に出られない。


「ふう…。」

深く息を吐く。

心を落ち着かせる。


「挽回。」

透は独りごちて、扉を開く。

もう恐怖はない。


胸を張って、客室廊下を歩く。

ガラス張りの扉に映る自分は堂々としている。


さながら、ファッションショーのようにガラス張りの扉を折り返す。

怖さなんて吹き飛ばす勢いだ。


華麗に客室廊下を歩いていく透。

数分歩くと、昨日の客室に差し掛かる。


ギシ…ギシ…。


昨日と同じ音。

透は目を見開く。

(今日もか…。)


そして、溜息が漏れる。

(お盛んなことで…。)

透は呆れながらも通り過ぎる。


ギシ…ギシ…。


透の後ろでベッドの軋む音が一定感覚で聞こえてくる。


ギシ…ギシ…。


その音は透がフロアを出るまで、一定感覚で聞こえていた。




透は巡回を終え、守衛室に戻る。

「帰りました。」


「おう!」

勝は右手を上げる。

そして、こっちを向いた顔はニヤついている。


「どうだった?」

勝が何かを期待したように聞く。


その手には乗らないと透は思う。

「異常なしです。」

透は胸を張って答える。


「なんだよ…。」

そう言って、勝はあからさまに落胆する。


「ベッドが軋む音、今日はしてねぇの?」

勝は背もたれに背を預けて言う。


「今日も同じ部屋で聞こえましたよ。

お盛んですよね。」

もう透はミスらない。

雑談の体で話を切り出す。


勝にニヤついた顔が戻ってくる。

「お!マジ?

どこの部屋だ?」

興味津々と言った様子だ。


「三階です。

314号室です。」

透は飄々と答える。


勝の返事が返ってこない。

透は疑問に思う。


透は勝のほうに目をやった。

そこには青ざめた顔の勝がいた。




「勝さん?」

透は心配になって、声をかける。

勝の目が泳いでいる。


勝は左腕をさすりながら、透に聞く。

「…314号室…って言ったか?」


「はい…。

そうですけど…。」

ただならぬ雰囲気に押される透。


「314号室がなんです?」

透が聞くと、ゆっくりと勝は青ざめた顔を上げる。


「そこの部屋…ここ数年…。

使ってないぞ。」

勝が怯えた様子で言う。


「え?」

勝の言葉が理解できなかった。

(あの部屋が使われてない?)


「ま、またまた…。

そうやって、俺を誂おうとして…。」

その雰囲気に飲まれそうになりながらもそう返す。


透も冗談としか思えなかった。

しかし、勝のその雰囲気は…。


「そ、そうだよな。

じょ、冗談だよ!」

勝は焦った様子で透を見る。


そして、汗を拭いながら目を逸らす。

「きゅ、休憩に行ってくる。」


勝は左腕をさすりながら、そそくさと出て行った。

透はその雰囲気に悪寒がした。




透はカメラを切り替えながら、考える。

カメラを切り替えてはいるが、頭に入ってこない。


あの勝のただならぬ雰囲気。

(314号室に何かあるのか?)

透は何が起こっているのか分からない。


(以前何かあったとか?

それとも、まさか…?)

透の思考が反芻する。

答えのない迷路に迷い込んでいる。


その時。


扉の開く音がした。

透の心臓が跳ね上がる。


扉を恐る恐る確認する。


そこには、休憩から帰ってきた勝がいた。

うなだれている。


「勝さん?」

透は勝に呼びかける。


「お、おう。」

歯切れ悪く勝が答える。

そして、足取り重く近寄ってくる。


その今までとは違う様子の勝に心配になる。

「大丈夫ですか?」


「さっきのことなんですけど…。」

透が言いかけるのを制止して、勝が答える。


「忘れろ。

お前、仮眠の時間だろ?

寝ちまえ。」


透は狼狽える。

「え?」


勝は有無を言わさず、透を仮眠室に押し込む。

そして、扉を閉めてしまった。


「なんなんだよ…。」

透は大人しくベッドに入る。

しかし、今日は眠れそうになかった。


ギシ…ギシ…。

そのベッドの軋む音。

一定感覚で軋む音が頭から離れなかった。




その後、勝はいつも通りに戻っていたが、314号室のことは答えてくれなかった。

そもそも、聞ける雰囲気でもなかった。


「忘れろ」

その一点張りだった。


絶対に何かがある。

それは分かる。

しかし、それを教えてくれない。


(何故だ?)


それにもし空室なら、誰かが侵入しているのかもしれない。

「次の巡回のときに確認してみよう。」


そう決意して帰路につく。

透はあのベッドの軋む音の正体を知らなければいけない。


それは仕事上もそうだが、何故かそう思った。

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