(10)感想会
私達の部屋に勝手に入ってきたケノンは私のベットを占領してゴロゴロしている。私は呆れつつベットの余ったスペースに腰掛けた。
「ケノンっ」
「サンティさん。デートはどうでした〜?」
「普通よ。そしてデートじゃないわ」
「エスコートしてくれたのに普通は失礼じゃないですかー」
私からしたらケノンのほうがよっぽど失礼だとは思うけど、口は開かない。
そもそも私はまともなエスコートをされたこともないから普通もわからないと言ったらそうだ。聖女はそれそのものが信仰対象になりやすい一方的で、身近な存在でありたいからと護衛さえいたら自由に動けたし、社交界も1人で出れる。
エスコートをされるとしたら一応婚約者の第3王子。仲は悪いものの一応王子なのでレベルが高い。
他にエスコートされるとしたら護衛騎士兼付き人だけ。彼は私の実家で引き取られ後に聖騎士に推薦された異例だからより何ともいえない。
「ケノンが言うことじゃないわよ」
「え〜じゃあ、何してたんですか?その本の山!」
山積みになった本を指差して目を細めた。歴史書は既に備え付けの棚に入れてある。だから乗ってるのは合計18冊。
「いいでしょ?」
見せびらかす為に上に乗っている3冊を取る。ちなみにすべて聖典だ。
「なんで聖典3冊も買うのよ!1冊分で十分!そもそもサンティさんの出身の孤児院って教会が中心でしょ?元々1冊持ってるじゃん!」
「いやいるでしょ。」
「……」
キャロリはゆっくりと視線をずらした。
「元々持ってた1冊は予備、1冊は使用用、もう1冊は保存用、もう1冊は勉強用!」
「熱心な信者だから。サンティ。」
「それでも、予備と保存ってなによ?あと勉強って何に使うの?!」
「予備は持ち歩いて、保存は部屋においておくの。勉強は色々あるでしょ?」
「怖いって……聖典だけで3冊って……」
「いやいや」
「いやいやいや!」
聖典は女神アルガーペの愛し子、初代女王フレジリが残した日記が元となっていると言われている。
フレジリ様と私では同じ聖女でも女神様の声を聞いたりしたことはないけれど、とっても夢のあることだ。
「本には希望が書いてあるのよ?聖典も神話も歴史書も!」
「歴史書は違うでしょ!」
「いいえ?歴史書はたとえば戦争のときは勝ったものが美化したいから敵の悪さを書いてあるけれど敵となった人々の話を見る勝った人の残酷さもあるわ。読み比べていると新たな発見があって、それを論文にしてさらなる歴史が明らかにな……」
「ケノン、もう帰りなさい。終わんないわよ」
気づいたらキャロリは寝て、ケノンはいなくなってしまった。ああ、聞いていなかったなら歴史書を読み比べていたいのに。
◇◆◇
学活の時間。へスライド先生は大きなあくびをついて教室に来る。
「こんにちは〜今日は、ちょっとした説明で〜す。行事についてなので、心して聞けー」
頭をかきなあがプリントを雑に渡された。私はそれを後に回す、全員に渡ったと分かるとめんどくさそうに説明しだす。
「実行委員がいるし、知ってるかもだけど、6月末、剣術大会があります。基本的に、剣術科以外は自由参加です。なんか質問ある〜?」
雑すぎ説明に文句を言いたいものの、そもそもここでなんの質問があるというのだろう。
「はい」
後から小さな声がして、振り返ると女の子が手を上げる。
「はいスクリスト嬢。」
「剣術科というのも初耳です。普通科の方も出れるという認識であっていますか?」
「はい。あってますよ〜」
「……そうですか」
一瞬だけ、少し残念そうな顔に見えた。
「じゃあ応募者はこの後行きてくださいね〜あっ今じゃないので間違えないようにお願いします。」
先生はまた大きなあくびをつきながら紙をおいておく。
「ここにある紙の名前に丸つけておいてね。」
時間は超のつくほど余っている。どうしようかなとブツブツ言い出して「あ〜」と言い出した。
「やる事ないですな〜かと言って寝る感じじゃない……何かしたいことありますか?」
授業用に何かしら用意もしていないので、こちらも提案のしようもない。授業が早く終わるのなら、読書でもして時間をつぶしたいものだけど。
「は〜い!先生って恋人とか婚約者いますか?」
ケノンが大きく手を挙げて聞く。なんだかこの空気はダメな気がする。いやだめだ。
「いないね〜あっ……質問コーナー」
確実に変な方向に進んでいる。もっと授業1つ使うくらいの何かすることあったでしょ!
「なんか質問ある人は挙手!」
数名手が上がり、もう授業はないのだと確信した。へスライド先生のことだ、ろくなことにはならない。
「え〜じゃあ……セピノール!」
「えっ」
結構ガチめな声が出た。クラノストが手を挙げているなんて思ってもみなかったし、何かこういうタイミングで手を挙げる性格じゃないでしょ。
「へスライド先生は土属性なのは知っていますが、魔法は得意な方ですか?魔力は多いのですか?」
(そういう質問なら大歓迎よ!)
「え〜真面目でつまんないね〜。……う〜ん、土魔法は結構下手な部類かな?魔力は多いらしいけどね」
魔力と才能はくっついてこないのは普通のことだ。教師になるくらいだし得意なのは絶対条件だと思っていた。
「じゃあ次!」
「はい!……なぜ教師になりたいと思ったんですか?」
(面接!)
いきなり声が低くなって指を組んで顎を乗せる。空気が重くなるとは違うなにかをがあった。
「……志望理由は……」
(「乗るな」)
心の叫びとクラノストの言葉が重なった。へスライド先生は常ににゅるっとしているから反応がしやすいという歌詞にくいと言うか。
「……」
その後もへスライド先生の質問大会で時間は過ぎていった。




