伊織
銃撃戦の中、二人の男が対峙する。他のメンバ-はサポートについているようだ。
「お前らは奪うことしかできないのか!」
「だったら何なんだよ!」
「一度、巫女に会うんだな。」
「巫女だぁ?巫女が飯でも食わせてくれんのか?」
最初の男、星斗の声に伊織が答える。そして伊織の声に杏樹とルナが「ははは」と笑う声が聞こえた。銃声が聞こえる。
「状況がわかってないな」
と柊が話しかける。その声にルナが「そっちもね」と答えた。
「おいおい、待てって。なぁ、お前。巫女に会うと飯を食わせてくれるのかって言ったよな?」
「んん?ああ」
「ある意味当たってるぞ。自給自足って知ってるか?」
「なんだよそれは?」
「俺らは巫女からそれを教わった。まぁ、飯を食えるって事だ」
「へぇっ、そりゃいいねって、いつまでも調子にのってんじゃねぇぞ!!」
伊織が星斗の銃を跳ねのける。また銃撃戦になりそうになる。
「偉そうによぉ!!」
「ちぃっ!それはお前だろ」
「やめて!もういいでしょ星斗?」
二人の言い合いに女性―衣舞―が割って入る。それに伊織は一瞬戸惑う。
「衣舞」
「星斗、撤退を。これ以上は意味がないぞ」
「あぁ、そうだな。柊。みんな!」
「「おぉ!!!」」
「あ、待てよ!!」
去っていく星斗達に向かい、杏樹が叫ぶが彼らは銃を乱射しながらその場を去っていった。
そこには伊織、杏樹、ルカがいる。
戦いの末、見慣れぬ研究所についていた。
「あ~あ、あいつらまた逃げた。これからだったのに。ねぇ、伊織」
「まぁいいんじゃないか?あれ以上やっても弾の無駄遣いだし」
「ん、確かにね。毎回の事だけど、彼ら、本気で殺し合うつもりなさそうだし」
「あぁ、そこがわかんねんだよなぁ。何考えてんだか。どっちかがぶっ倒れん事には永遠に続くぞ、これ」
「とか言いつつ、あっちには誰かさんがいるし伊織も手を抜いてるんじゃない。彼女、貴重種だし、それに」
「別に。それに、もう衣舞は仲間じゃない」
杏樹の問いかけに伊織は即答をした。
「そうだね。あいつは私達を裏切った。もうあんたの妹でも何でもないんだからね。絶対、許さないでよ。」
「・・・あぁ。分かってるよ。俺は今この場にいるお前らしか信用してない。信じられる奴らがおんなじ場所でおんなじ道でいられればいいんだよ。今ここにいるって事が大切なんだ。」
「うん。それにあっちの頭はってる星斗って奴ムカつく。食料、持ってるなら少しくらいよこせっての。自給自足がどうとか偉そうに言ってたけど。」
「あぁ、杏樹。あれ多分、巫女が各地へ伝えてる豊作って奴だよ。彼らは、その豊作をやっているんじゃないかな。」
「ふ~ん、なるほどね。で、その豊作ってどうやるんだよ。ルカ、お前の持ってる資料に載ってんのか?」
「いや、それは見た事ないな。でも、そんな難しい事じゃないと思うよ。」
「へぇ、なんかイメージできるのか?」
「憶測になるけど豊作は多分、アイテムだ。おそらくダイナマイトに限りなく近いものかな。そして自給自足はそのアイテムを活性化するための起爆剤とみた。」
「それで、起爆したらどうなんの?」
「そこからが難しくて想像がつかないんだ。」
「それどんな食べ物?でも爆発するんじゃ危なくて素人じゃ手が出せないわね。」
「うん。旧世界の物だろうけど恐ろしいよ。」
「旧世界、恐るべし。」
「豊作なんていらねぇよ。俺らは今のスタイルでいい。誰かから奪えばいいんだよ。ふっ、とかいいつつ腹減って力、出ねぇや。」
「そうね。ここ食料なんて無さそうだし」
「しゃあねぇ、これでも食うか。あ~あ、豆とか野菜が食いてぇな。」
伊織は保冷剤を食べながら、ひとり言をつぶやいた。その声に杏樹は答えなかった。
「でも変なとこに迷い込んじゃったよね。何これ?」
杏樹はそこに置かれている冷凍カプセル-人が入れるくらいの大きさ-を見つけた様だ。
「あぁ、初めて見るな。ルカ、わかるか?」
「もう調べてるとこ。」
ルカは文献をみている。
「えーと、これは旧世界のものだね。多分、この冷凍カプセルって奴だ。」
「冷凍カプセル?何だそれ?」
聞きなれない言葉に伊織は聞き返す。
「う~ん、なんでも人間を凍らせて何世紀もの間、保存できるみたい。」
「へぇ、旧世界って何でもありね。旧世界、恐るべし。じゃあ、この中に誰か入ってたのかもね。」
そう言いながら杏樹は冷凍カプセルを触る。
「あぁ、もう杏樹。触っちゃだめだよ。危ないかもしれないから。」
「はーい。」
「でもよぉ、杏樹の言う事が当たってたとしたら、これに一体、誰が入ってたんだろうな?」
「「・・・さぁ?」」
「まぁ、それはないと思うよ?このカプセルが動いていたとしたら、それは奇跡だよ。この世界じゃこの手の仕組みの物はほとんどが動かないんだから。」
「旧世界の遺産って奴だな。何なんだろうな。この世界は。誰も知らないってやっぱ変だよな。誰かが皆の記憶を消したって俺の親は言ってたな。」
「確かにそうでもなきゃ説明がつかないよね。」
「なんでそんな事するの?」
「さぁ?ほんとに過去に何があったのか知りたいよね。」
杏樹の質問にはっきりとした口調でルカが答える。
「まぁ、別にそんなのいっか。今が良けりゃね。過去がどうとかそんな風に考えてる奴自体少ないんじゃない?」
「そうなのかなぁ。でも過去から得るものってあると思うよ。」
「まぁそれはなんかあるんだろうけどさ。大事なのは今よ今。」
「うん、それは伊織の受け売りだね。」
「うるさい!いいでしょ!」
杏樹とルカのやり取りを聞いていた伊織が口を開く。
「じゃあ未来の話はどうだ?確か巫女の伝えで、この世界をいい方向へ導く「救い人」が現れるってのがあるよな。」
「あぁ、あるね。この付近じゃ、あの星斗が「救い人」じゃないかって噂もある。彼って豊作もだろうけど巫女の教えを結構守ってるらしいからね。」
ルカが噂を思い出したように話し始めた。
「えぇ?あいつ?そんなはずないよ。私達と争ってる様な奴が何を導くのよ。」
「いや、ま、噂だから。でも、どうより良くするのやら。」
「ま、導けるなら導けばいいさ。その前に俺にやられてなければいいけど。」
伊織の声に杏樹とルカが「ははは」笑う。そこに聞き慣れない声が聞こえてきた。
「お前が死ね。」
「なんだ?」
「誰だ?」
その声に伊織、杏樹の声が続く。驚いていると、突如襲われる。襲ってきた人物-エバ-は素手だがかなり強い。3人は銃で応戦するが、ルカと杏樹はあっさりと倒される。伊織は粘るが、倒されてしまう。その姿に「意外と非力だな」とエバは言い放つ。
「連戦はキツイってんだよ。てめぇ、何者だ?」
「私はエバ。」
「僕たちを殺すつもりか?」
ルカがエバに質問をする。
「いや、あれは冗談さ。実は良い事を教えてやろうと思ってな。」
「良いこと?」「何だってんだ、今日は。で何が言いたいんだよ。」ルカと伊織が立て続けに聞く。
「お前らは人々から食料を強奪しているグループだな?」
「それが何が悪い?生きていく為だよ!」杏樹が噛みつくように言い放った。
「では聞くが奪わずに生きていければ?それは悪い事か?」
「え、まぁ、悪くないけど。」「まわりくどいなぁ、何だよ」杏樹と伊織が言い放つ。
「森を人工的に再生する方法がある。」
「森?」
初めて聞く言葉に伊織が聞き返した。
「森というものは作物などの集合体。手に入れる事ができれば、もう食料に困る事はない。」
「それほんと?」
エバの言葉にルカが反応する。そして文献を見て言う。
「森って確か、これだ。草や木が沢山あって動物も住んでいる場所だよ。」
「旧世界では、その森が、人口プラントという名で存在したという。」
「人口プラント・・・うん、伊織、こいつの言ってる事ほんとだよ。でも再生なんてできるのか?」
「なんで俺達にそんな事を教えるんだよ。」
「見込みがあるからだ。」
「何の!?」伊織が聞いた。
「彼に勝てる。」
「彼って、そいつがその情報を持ってんの?」杏樹が聞く。
「そうだ。お前達がよく戦っている、あの星斗という男さ。」
「何だって?あいつが!?」思わず伊織が叫ぶ。
「この件を遂行する為に、この数ヶ月で、お前らと奴らの事は調べつくした。」
「はっ!ご丁寧に。」「そういうのスト-カ-っていうらしい。」伊織とルカがそれぞれに言う。
「色々と知る事が出来たよ。」
「こわっ!」ルカが叫んだ。
「・・・だが、お前らにとって悪い話ではないだろう?」
何かの気配にエバが気付く。
「近いうちにまた教えてやる。」
と言い残し、エバは去っていった。
「お、おい!」と伊織達はエバに向かって言うが、すでにその姿はなかった。
「くっそー。訳分かんねぇや。」
「でもどうする?彼の言ってる事がほんとだとしたら絶対、手に入れるべきだよ。もう何も不自由なく暮らせるよ。」
「まだ信用できん。が、もし星斗の奴らを相手するなら相当締めてかからないと。」
「いつもの事じゃない。」
「いや、今回はただものを奪うって訳じゃない。情報を聞きださないといけないんだ、あの星斗からな。」
「うん。彼、絶対、口なんて割らないよ。それに衣舞もいるし。」
「衣舞はもう関係無いって言ってるでしょ!貴重種がそんなに偉いの?子供が産めるからって何よ。」
「あ、ごめん・・・」
杏樹の逆鱗に触れてしまったのかと思い、とっさにルカは謝る。
「別にいいわよ。で、あんたのその文献になんかいい方法とか載ってないの?」
「あぁ、うん!いや、そんな無茶な。」
「何でもいいからさ。内の?それ何でもありの旧世界の文献でしょ?ほら、例えば情報書いてる紙が何処か空から飛んで来たりするお方法とか。通りすがりの人がたまたまその情報知ってて何故かペラペラ喋ってくれる方法とか。朝起きたらなぜか全部知ってました的な方法とか。」
一人で喋る杏樹に圧倒されつつ、言われた事を調べる。が、なかった様だ。
「杏樹。・・・無い。」
「んん、じゃあ、口割らせるドラッグの作り方は?」
「あ、ドラッグかぁ。それなら近いのがあるかも。」
「あんまり卑怯な事させんなよ?物は奪うが残虐な事はしない。まぁ、今はいい。とりあえずあのエバって奴がまた出て来るの待とうぜ。」
「そうね。全くルカったら。」
「えぇ?僕?」
「ははは。今日はここを寝床にするか。」
場所が変わり、二人の人物が現れる。
「サナ様。本当に彼が?」
「えぇ。運命は動き始めました。」
「もうすぐ私達が求めている所へ行けるのですね。」
「でもその道はとても細く、辿り着くのは難しい。」
「危ういバランスを保っている。」
「信じて見守りましょう。」
サナとカナデはまた歩き始める。




