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第5-5頁 高鳴る鼓動、魔物の襲撃



 ・・・・・



 善キノコタン領地からわざわざ歩いてきた六花は、街道の整備をしている蜜柑に報告を済ませて、ルイスの家に帰った。


 今日は六花が一番上がりだったので、とてつもなく暇だった。

 誰もいない家がこんなに寂しくて静かなのか、と痛感しつつ、六花は独り言のように呟いた。


「うーむ……何か手伝いに行った方がいいんでしょうか……」


 部屋の布団に潰されるように寝ていた六花は再び靴紐を結び、家を出た。


 六花はキノコタン文明発展プロジェクトの管理者的な物なので、特に任された仕事は無い。


 蜜柑は、街道作り。


 結芽子は、善キノコタン領地で畑仕事。


 静紅は、領地の安全を守るための壁づくり。


 と、他の3人は仕事があるが六花にはない。


 決してハブられている訳では無いのだろうが、他の人が仕事をもらっているのに自分は仕事がないのは何だか申し訳ない。


「悪キノコタン領地はどうなってるんでしょうか」


 オレンジ色に染まっていく空を見ながら六花は悪キノコタン領地へと向かう事にした。


 道中の邪魔な木は全て抜かれ、だいぶ通りやすくなっていた。


 あとは草などを手作業で抜いて、固めるだけだな。


 見た目と広さは善キノコタン領地とそっくりの悪キノコタン領地。


 違うところと言えば、兵器やら武器やらがたくさん置いてあることぐらい。


 物騒だなぁ。


 悪キノコタン領地は、工業や商業の地となる予定だ。


 なので、キノコタン達は屋台などの商店の建設に力を入れていた。


 トンカチで釘を打つ『とんとん、とんとんっ』という軽快な音が少し暗めの森に響く。


「すごいですね……これが文明の進歩ですか」


 ついこの前まで木が切り倒されただけのスペースに家が建っていただけだったものが、今では別の場所のように発展している。


 呆気を取られた六花がそう一人で呟いていると、一匹のキノコタンが近寄ってきた。


 なんだか楽しそうだ。


『ぽーぽ! ぽぽぽぽーーぽ!』


「あ、はい……あー、あれですよね! 分かりますよ、うん……」


 全く理解できない。この森で生活する以上、少しでも早くキノコタンたちの言葉を理解できるようにならないと。


 キノコタンと見つめ合いながら、ボーッとする六花。


 平和ともいえる穏やかな時が流れていたが、それは突然に終わりを迎えた。


 カンカンカンカンッ!!


『ぽーぽーぽぽ!』


「この音は……戦争の時にも聞いた敵を知らせる警鐘!?」


 鐘の音が辺りに響き渡るのと同時に、キノコタンの悲鳴が聞こえてきた。


『ぽーー!!』『ぽぉー!!』『ぽぽっ!』


 建物の工事を取りやめ、逃げ惑うキノコタン達。


「だ、誰か……昼には蜜柑さんがいたはずですが……」


 突如混沌とした悪キノコタン領地に今居るのは六花だけだ。


 警鐘が鳴らされたということは、敵の襲撃が起きた可能性が高い。


「今ボクに出来ることは……!」


 六花は自分の胸をぎゅっと握りしめ、腰に提げた細剣を鞘から抜いた。


「キノコタンさん達! ファールさんは善キノコタン領地に居ます! そこまで走って逃げてください!」


 ルイスとファールはキノコタンの女王なだけあって、民たちに異変が起きると察知できるような性質があるようだが、善キノコタン領地からここまで来るのに時間を要する。


 黄昏色の空の下、暗い木々の隙間から覗くいくつもの紅眼。


 暗闇からゆっくりと六花に近づいてくる気配。


「皆さんが到着するまでこの場を防衛すること! さあ来なさい魔物さん、皆さんが汗水垂らして発展させたこの街を壊すことは許しません!」


 暗闇から出でしは銀の毛並みを持った狼型魔物、静紅が討伐したハームウルフの長とその側近。

 

 六花は一人で魔物たちの前に立つと、燃え盛る建物を背に短剣を握りしめた。

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