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第5-4頁 協力するキノコタン

キノコタンの文明を発達させていく六花たち。

ところがある日、とある事件に巻き込まれて…


 先日、キノコタンの森で平和条約が結ばれた。


 平和条約が結ばれたのは、キノコタンの歴史の中で最も重要なことになるらしい。


 それほど重要なことを静紅と蜜柑はやり遂げたのだ。


「おーい、ちょっとこっち手伝ってくれ!」


「はいはい、今行きますよー」


 六花の名を呼んだのは、眼鏡をかけた女性の蜜柑だった。


 女性なのにも関わらず、一人称が[俺]で口調も男らしさがある。


 その態度と雰囲気からは察せられないほどの超ビビりだが。


 社会人時代はその口調のせいで取引先に威圧感を与えてしまったりして、本人も気をつけていたのだが今はとても生き生きしていて楽しそうだ。


 さて、今は善キノコタン領地と悪キノコタン領地を結ぶ街道の製作中。


 街道といっても、木を切り倒して雑草を抜いただけの簡易的な道だ。


 蜜柑曰く「文明の発展に欠かせないのは商売だ。誰かが作って、誰かが買う。買った物を他の人に売る。そういうサイクルで、文明は発展していくんだぜ」ということらしい。


 よく分からないが、商業に多少の学がある蜜柑の言うことに従っていたら大丈夫だろう。


 なので今は簡単な物でいいから、売り買いの文化を作ろうという計画を進めている。


 そのためにはまず、運送道路の確保が最優先なのだ。


 これは、「せっかく野菜を育てたのに道の行き来が不便で鮮度が下がってしまった!」などの意見が出るのを未然に防ぐためでもある。


 六花は蜜柑に呼ばれたため、そこへ向かった。


 そこには、ヘルメットのような頭を守る帽子を被ったキノコタンたちも居た。


 もちろんこれも、静紅達の異世界転移組が出したアイデアである。


 この世界の文明がどのくらいなのか、森から出たことのない六花には分からないが、少なくとも日本より100年は遡らなければいけないだろう。


「何か用ですか? 蜜柑さん」


「えっと、善キノコタン領地の畑作りはどうなってるか確認してきてくれ。それと静紅に、『木を抜いて』って言ってきてもらえるか?」


 六花は今は手が空いていたので、快く引き受ける。


「了解です」


 蜜柑の願いを引き受けた六花は、青々とした空を眺めながら善キノコタン領地への街道をゆっくりと歩いていくのであった。



 ・・・・・



 善キノコタン領地までの道のりにも、キノコタン達が沢山歩いていた。


『ぽぽー』『ぽ!』


 組み分けされた一班ごとの編成は、


 ・ヘルメットを被った、工事キノコタン 4匹


 ・武装して剣を持った、護衛キノコタン 1匹


 ・全体の指揮を執る、班長キノコタン 1匹


 という一班六匹で設定した。


 魔物が出る恐れがあるので護衛キノコタンも編成しているが、今のところそう言った報告はない。


 不思議なことにキノコタン達はとても数が多い。見た目もそこまで変わらないので、誰が誰なのか全く分からない。


 一体どこから生まれるのだろうか。そもそも生殖するのか、はたまた湧いてくるのか。


 キノコタン達は本当に働き者である。命じられた仕事を全力で取り組み、必ず成果を上げる……。


 と、言いたいところだが、たまにサボる事もあるので、そこはルイスとファールルイスに監視してもらっている。


 ただ報酬なしで働かせるわけにもいかないので、そこで昨日静紅たちが作ったぶどうジュースの出番だ。


 甘いものが大好きなキノコタンにとって、ぶどうジュースは至福の一杯に等しい。


 ぶどうジュースを飲むために働くのか、飲んでしまったために働かされるのか。


 彼らの性格でいえば後者の方が多いだろう。



 今のキノコタン達には、『悪』と『善』と言う古くからの境界線は壊され、班の中でも善悪とも仲良くしている。


 ずっと歩いていくと、善キノコタン領地に到着した。


 川が近くにある善キノコタン領地には、主に農業をしてもらっている。


 元々小さな畑が領地内にあったのだが、それを拡張してそこに種を植える計画だ。


 ちなみに王都から持って帰ってきてもらったにんじんやじゃがいも、トマトなどの野菜の種などを植える予定だ。


 今は、森の入口付近に流れる川から水を引いてくる[かんがい]を成功させて用水路の製作を終え、次は農地となる場所を鉄のくわで耕してもらっている。


 悪キノコタン領地には鉱山資源が集中しており、特に鉄が多い。なので、武力が強かったり武装したキノコタンがちょくちょくいるのだ。


 今回使用している鉄のくわも、悪キノコタン領地産鉄鉱石を使用している。


 職人ではないので見た目は悪いが、少なくとも木よりは性能は高い。


 農場建設予定地では、農業取締役もどきを任された結芽子がキノコタン達に命令していた。


「ぽぽっぽーぽっぽぽやでぇ〜、ぽぽっぽーぽっぽぽ」


「えぇ!? 結芽子さん、キノコタン語分かるんですか!?」


 善キノコタン領地を観察していた六花が、驚いたように彼女に聞いた。


 キノコタン語はほとんど『ぽ』『っ』『〜』で形成された言語。


 微妙なイントネーションの違いがあるのは六花にも理解出来るが、それが何を示しているのかまでは分からない。


 人間には到底扱えたものじゃないはずなのだが……。


「うんー、大体やけど分かってきたで?」


「もうよくわかりません……」


 蜜柑にお願いされた[畑の進行度の確認]をしようと、結芽子に尋ねた。


「結芽子さん、畑の状況はどうですか?」


「うん! 川からのかんがいのおかげで干上がることも無いやろし、キノコタン達もよぉ働いてくれるで! 明日には耕しは終わりそうや」


 実家が田舎の畑農家なので、畑のことは多少は分かっている結芽子が言っているので、本当に大丈夫なのだろう。


 結芽子の後ろでは今でも農業キノコタンが汗水垂らして仕事中だ。


 仕事の邪魔を出来るだけしたくない六花は、そそくさとその場を去るように結芽子に言った。


「分かりました、蜜柑さんに報告しておきますね。それでは次の仕事があるのでボクはこれで!」


「うん、分かった〜。六花ちゃんも頑張りやー」


 さて、次は静紅に森の木を引き抜いて貰いたい。と言うお願いを伝えなければ。


 そう思い、辺りを見渡しながら早歩きで六花は農場を後にした。



 ・・・・・



 前に静紅は、ルイス達と[謎の狼型魔物]について調べていた。


 今後、商売道具を運搬中のキノコタンが襲われたとなれば大問題になるので、森内の安全を保つことも兼ねた調査だ。


 数日前、静紅が殺した[狼型魔物]の死体を観察してみたが、まだ経験の浅い六花に能力で分かったのは名前と説明文だけだった。


[ハームウルフ]

 どこにでも生息している狼の一種。その強靭な牙で家畜達を襲う。狂犬病の可能性があるので昔から討伐指令が出されている。一匹で生息することが多い。


 それだけだ。


 一匹狼なので、「一匹だけ迷い込んだだけで、今後の発展には影響はないだろう」と言う意見もあったが、キノコタン達は今度いつ出てくるか分からないハームウルフに怯えて生活するのはゴメンだ。


 ということで、対策を取るべく、領地に壁を作っている静紅達に会いに行くことにした。


 壁と言っても、木の丸太を縦に並べて地面に突き刺しているだけだが、無いよりはマシだ。


「静紅さん。蜜柑さんが木を抜いて欲しいって言ってます!」


 六花は静紅の邪魔にならない程度の距離で伝えた。


「うん、分かったよ! えっと…ルイス、ファールルイス。ちょっとここ頼める?」


 忙しそうにしている少女の二人を見ながら、静紅は不安そうな顔をするが、その反応はいい物だった。


「分かりました」「私たちに任せろ!」


 ルイスらの了承を得た静紅は壁の工事を任せて、木の板に乗って飛んで行った。


 言うなれば……[空飛ぶスケートボード]。


 静紅曰く、「この木の板に乗って、板を浮かせたら自分も飛べるんじゃないかな……」と言うアイデアから生まれた発明品だ。


 ぐんぐん上昇していくスケートボードを見送り、ルイス達に一度礼。それから六花は一度家に戻ることにした。


 「さて、蜜柑さんに頼まれた仕事はこなしたし、畑の報告だけして、今日は終わりですね」

 

 社畜時代と比べて、かなりの軽労働をしているのでとても楽だ。


 少なくとも夕方に家に帰れるなんて無かった。









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