総集編 エーテル・カンタービレその14
一方その頃、腕銃の青年カザキたちは成れの果てルインズに協力してもらい、ターボやダリア、トゥリスらと合流。
実は彼らは半龍族奪還作戦に失敗し、牢獄に拘束されていたのだ。
「いやァ、助かった助かった! あそこの飯はクソマズだったからさァ!」
「看守うざい、ごはんマズイ、最悪」
「よぉお前ら、久しぶりだな。こういう場合はお勤めご苦労って言うんだっけ?」
カザキは懐かしい面々を見て、珍しく笑顔の表情だ。
そんなカザキに続き、チカコはルインズの方に視線をやる。
「一体どんなトリックを使ったのでしょう?」
「おや、言ったはずだよ。神に誓って約束は守るとね」
腕を組んで微笑むルインズの背後から、冷たい女性の声が飛んでくる。
ルインズの背後から突然話に入って来たのは、長い桃髪の女性だ。
「そしてその神は貴方。ハァ、突然囚人を拐われると困るわ」
ため息をついて髪を巻き上げる女性に向かって、ルインズは口をパクパクさせる。
「どうして君がここにいるのかな?」
「それはこっちのセリフよ、破滅欲求。私もとやかくは言いたくないはけれど、立場上はしっかり注意しないといけないの」
「君は相当僕のことが嫌いなようだね、何なら[あの時]の決着を今つけてもいいんだよ?」
桃髪の女性────ペルソナと、ルインズは過去に何かいざこざがあったようだ。
「そんなことをすれば街どころか国が壊れるわ、やるわけないでしょう? とにかく執拗な干渉は控えなさい」
ペルソナもこんなことは言いたくないのだ。
彼女自身も、運命共同体であるシズクとかなりの回数接触していたり、シズクに個人的な興味があったり。
まるで興味を持つこと自体を罪とするこの規則を、自分の口から言うのはなかなか辛いものでもある。
自分で自分を否定したようになるからだ。
「はぁ、[傲慢]の名が廃るわ」
ペルソナはルインズにそれだけ伝えると、部屋から出ていった。
「ルインズさん、あの方と知り合いなんですか?」
カザキとチカコは一応ペルソナとも知り合いだ。知り合いといっても本当に顔を合わせたことがあるくらいだが。
「過去に少し摩擦があってね、その結果僕が[花園]を追放されたのさ。価値観の違いだ、どんな組織にもある話だ」
「色々あるんだな。まあ、今回のことは感謝する、部下を救い出してくれてありがとう」
機嫌がいいのか、普段のカザキなら絶対に言わないような言葉が出てきた。
「契約に従ったまでだよ、君たちは僕の言ったことをちゃんとこなしてくれた。それに見合う対価を払うべきだろう」
新たな時代の幕開けを、破滅欲求の成れの果ては遠くから見守っていた。
悪の蕾を育てる水は、ただ静かにニヤリと笑うのであった。
・・・・・
エーテルが幽閉されているのは街一番の巨大な煙突、煙炉塔だ。
静紅たちと別れた六花たちは世闇に紛れて、煙炉塔への侵入を目指していた。
メンバーは六花、アルトリア、フレデリカ、アリスだ。
「煙炉塔へ向かえる手段はただひとつ、乗り場から乗車可能なロープウェイだけ」
「で、でもでもそのロープウェイに乗るには審査が必要なんだよね? 刑務所脱獄の件もあって、指名手配されてるんじゃないの?」
アルトリアの言う通り、ここにいる六花含めた全員が既に兵士団から指名手配を受けている。
「それはあくまで人間用のロープウェイの話。機械搬入用のロープウェイは別」
煙炉塔はかなりの規模を誇る塔だ。そのため警備[ムジン]の故障や物資の搬入が不可欠になる。
そのためそれ専用のロープウェイが存在しており、そこなら審査を受けずに潜入することが可能らしい。
「必ず成功させましょう! エーテルさんを助けるために!」
「ひとつだけ言えることがあるとするなら[現実は妄想ほど甘くない]ってこと。さあ、戦闘準備!」
一行は戦闘を行いつつ、なんとか機械搬入用のロープウェイに辿り着いた。
「行きましょうアリスさん!」
「言われなくても!!」
兵士とムジンの大軍をくぐり抜けた一行は、そのままの勢いでロープウェイに乗る。
「おい貴様ら! ここは兵士以外立ち入り禁─────」
「ごめんね!」
死なない程度の致命傷を警備員に負わせて、どんどん進んでいく。
ロープウェイ乗り場の建物に入り、機械搬入用の文字をみつけたアルトリア。
「これに乗ればいいんだよね?」
ロープウェイは思っていたよりも大きく、列車の一号車分程だ。
所狭しと並べられた機械を押しのけて、出来るだけ見つからないように奥へ進む。
「ハァ、ハァ……乗るだけでも精一杯だよ……」
「四人全員いる。良かった……とりあえず第一関門突破だね」
機械搬入用ロープウェイは無事に発進し、緩やかな傾斜を登っていく。
安全装置のランプがほのかに照らすロープウェイの中で、四人は静かに息を着くのであった。
・・・・・
機械搬入用のロープウェイには部品などが入っている箱が所狭しと並べられている。
一行はその箱の中に身を潜め、塔の中に入っていった。
「ここから先は私の指示に従ってもらうよ。この都市の建物には傾向があって、それを理解してるのは私だけだと思うから」
エーテルを探して約三年、潜入作戦を幾度もこなしてきたアリス。
彼女に従うことに誰も何も思わなかった。むしろ心強いとまで思ったほどだ。
「よいしょっと」
箱から脱出し、辺りを見渡す。
肌寒い空気が天井から降りてきている。
だだっ広い無機質な空間だ。
「アルトリア、エーテルが捕まってるのは地下で間違いないよね」
「今確認したけど、やっぱり地下に居るね。動いてるわけじゃなさそう」
「階段でもエレベーターでもいい、一刻でも早くエーテルの待つ地下へ行こう! ついてきて!」
アリスが先導し、一行は煙炉塔の内部へ侵入していくのであった。
・・・・・
煙炉塔の頂上付近にて、数人の男女がこの夜景を見つめている。
「にっしし! 久しぶりに運動出来るぜ!」
「眠い、寝てたい」
「なァボス、殺しはありか!?」
ターボ、ダリア、トゥリスは各々の感情を思い思いに発言している。
「殺しは無しだが容赦も無しだ。誤って殺したんなら仕方ないが」
「なら誤って殺す!」
「男って本当にバカだよね……」
彼らが再び揃ってから初めての作戦。
内容は[この街の心臓を奪おうとする侵入者の排除]だ。
武力行使は許可するが、殺しまではいかないようにとルインズに言われた。
「しかしこの街の心臓って何なんすかねぇ」
この中で最もひ弱なマスラが腕を組みながら言う。
「決まってるだろ、この街の電力の源、エーテルだ」
ルインズから貰った手帳に書かれた作戦内容を、カザキは読み上げていく。
「侵入者ってやつはロープウェイ乗り場のある階、四階からこの塔に入ってくる。そのまま恐らく地下を目指すだろう、その道中で食い止める……だってさ」
「そうと決まれば即行動だな!」
新調した装備に身を包み、テンションが上がっているターボは煙炉塔の頂から飛び降り、それに続いて他の面々も飛び降りていくのであった。




