4 如月家の食卓
今回の話もかなりネタを詰め込んだ、勢いだけで描いた作品です。
キャラ崩壊もしてるかも・・・とくに主人公が。
こんな感じ・・・だったりして、
くらいに思ってもらえるとちょうどいいかもしれないです。
4如月家の食卓
「かずさー、起きろー!!」
如月家の朝は、少年のこの声で始まる。
「むー・・・、後五分・・・」
「遅刻しても知らねーぞ。俺はもう、朝練行くからな?」
「はーい・・・」
「・・・弁当はいつも通りテーブルの上な。」
三十分後、上総はもぞもぞとベッドから這い出る。
「・・・お腹、空いた・・・」
上総がダイニングに行くと、そこにはジャージ姿の伊予がいた。
「あら。おはよう、上総。」
「おはよー・・・、今日は翻訳家?」
「そ。」
非常勤講師の伊予は、毎日は学校へは行かない。週に二回から三回、自分の受け持ちのクラスの授業があるときだけ、学校へ行く。そのほかのときは、家で本業の翻訳活動だ。
「・・・じゃあ、今日も朝ご飯は大和が?」
「そうよ。・・・ん~、やっぱり、人が作ってくれたご飯っておいしいわー。」
伊予の言葉を横に聞きながら、上総は席に着き、朝食をとる。テーブルの上には、さっき言われたとおり、弁当が置いてある。
「よし、今日もがんばりますか!」
先に食事を終えた叔母を目だけで追って、そのまま視線を壁の掛け時計に移す。
「げ。時間無い!」
いつの間にか、時間は過ぎていたようで。上総は、急いで朝食をかきこんだ。ご飯とみそ汁、出汁巻き卵という、和風の朝食だった。
部活に入っていない上総は、授業が終わればすぐに帰宅できる。そうはいっても、放課後、教室や図書館で勉強していくのが常である。しかし今日は、図書館は休館で、教室では何かの委員会活動があったので、上総は早々に帰宅した。
家に入ると、伊予の「おかえり」という声が聞こえたが、それ以降は部屋にこもりっぱなしだった。
それほど急ぎの仕事でもないようだが、たびたび教務をこなすためには、空いている日に、できるだけやっておいてしまわなければならない。
「ただいまー。」
大和の声がした。いつの間にか、部活も終わって帰ってくるような時間になっていたようだ。
「おかえりー」
上総は、勉強道具を片づけて階下のリビングへと向かった。
「大和―今日のご飯何―?」
「鮭のムニエル。スーパーで特売やってた。」
「わぁーい。」
上総はリビングに敷いてある絨毯の上に来ると、ダイブした。
「うーん、肩凝ったー。」
そう言いながら、上総は絨毯の上でゴロゴロと転がりだす。
「ばーりあふりー♪」
元は、足腰が悪くなった祖父や祖母のために建てられた家。段差などがない、いわゆるバリアフリーで、上総のこれは、この家に住むようになってからの習慣・・・習性というべきか、そのようなものになってしまっている。
「また勉強してたのか?」
「んー。今度模試あるし。」
「再来週だろ?」
大和は、そんな上総の、一見すれば奇行としか取れないものにも動じず、会話をしながらも、荷物の片付けや、料理の支度を進める。
「今度は、絶対大和に勝つんだから!」
「・・・なに、一回しか勝たせてくれないわけ?」
「一学期の期末は取り返したけど、夏休みの模試は大和のが上だったもん。むかつく。」
「・・・やっぱ、すげぇよ。上総は。」
「おだてても、手なんか抜いてやんないんだから。」
「わかってるって。」
闘志むき出しの上総に苦笑しながら、大和はコンロに火を付けた。
しばらくすると、家の中に香ばしい空気が漂いだす。
「ん~。いいーにおいー」
ゴロゴロ・・・と転がって、上総がキッチンまでやってきた。
「ちょっ。こら、足元来るな!」
怒りながらも、もう慣れたことなのか、大和は上総をどうにかすることを諦めていた。
「・・・やまとー」
「なんだよ。」
足元から聞こえてくる声に、適当に返事をする。
「あめー」
「は?」
「雨、降ってきた。」
「なんだって!?」
大和は急いで窓の外を見やる。
「・・・洗濯物―!!」
駆け出そうとして、足を止める。
「上総、火、見てて。」
料理を放置するわけにはいかない。そんなことをすれば、間もなく消し炭が出来上がる。
「むりー」
「焦げ色が付いたら、火を止めるだけでいいから。」
上総が、部活がないにもかかわらず、なぜ家事をやらないのか。それは、単に家事が壊滅的に苦手だからである。大和も、何度か手伝わせようとはしたが、そのたびに家電製品や食材、衣類など、各方面に被害を広げている。
そのため、現在大和が一人でこなしているのは、それが余計な仕事を増やさないための、最良の手段だという結果に達したからである。
しかし、今はそんなことは言ってられない。大和は上総にフライパンの上のムニエルを任せると、ベランダに直行した。
洗濯物を取り込み終えて、大和が下へ降りてくると、嫌な臭いがして顔をしかめた。
「まさか、な。」
いくら料理音痴の姉でも、火を消すことくらいできるはずだ。
「・・・・・・上総、何やらかした?」
「ちゃんと、火ぃ消したよ?」
「なら、この臭いはなんだ?」
「知らないー。・・・ばーりあふりー♪」
「逃げるな!」
ため息をつきながらキッチンへ戻ると、フライパンから煙が上がっていた。中をのぞいてみれば、すっかり焼けすぎた鮭の切り身がそこにあった。
「どうやったら、こうなるんだよ。」
思わずため息が出てしまったのも、仕方のないことだろう。
上総の声に呼ばれ、伊予が仕事部屋から出てくると、おいしそうな匂いと嫌な臭いが入り混じった、妙なにおいがした。
「一体、何作ったの?」
視線の先、テーブルの上には、三枚の皿の上に、それぞれ並んだ鮭のムニエルがあった。いや、二枚はそうだったが、一枚は違った。
「上総のそれ、何?」
「失敗作。」
「・・・・・・食べれるの?」
淡々と言い放つ大和に、伊予は心配そうに尋ねる。
「味付けまでは俺がやったんだ。焦げだけとりゃあ、食べれないことはねぇだろ。」
「・・・・・・そうね。」
「えー!!」
上総が非難の声をあげるが、仕方ないのだ。この甥は、聞き分けがいいが・・・怒らせたら、誰よりも怖い。
「むー・・・。ねぇ、大和。」
「なんだよ」
「とっかえっこ!」
「な。こら!」
大和の皿の鮭を箸でつまみ上げ、そのまま口に放りこむ。
「・・・・・・信じらんねー。」
「うしし。」
上総は、満面の笑みで咀嚼する。
「上総。明日は、弁当ねぇから。」
「えー!」
「疲れた。」
向かいの席でもめる甥っ子と姪っ子を見ながら、伊予は苦笑をこぼした。
「いただきます。」
終
おまけ ~その夜の電話での会話~
『なんや、そんなことあったんかぁ。』
「あぁ。ったく、あいつは。信じらんねぇ。」
『でも、ホンマにお弁当作らないんか?』
「もちろん。一度決めたからな。」
『ハハ。大和らしいっちゅうか・・・。そや、大和。』
「ん?」
『ほんなら、明日の大和のお昼は・・・うちが作ってってもえぇ?』
「え・・・?」
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