3 甲斐洋介の日常
友人と話していく中で生まれた、洋介の裏設定が満載。
ネタで終わりそうなものもありますが、気にしないでください。
3甲斐洋介の日常
オレの名前は甲斐洋介。地元の公立高校に通う、二年生だ。学校では、サッカー部に所属。こう見えて、一年からレギュラー張ってたりする。
そんな俺は、実は、五人兄弟の二番目で、一番下の妹は、まだ一歳半だったりする。
兄貴は滋、二十歳。オレより三つ上の、大学生だ。大学進学してからは、バイトして、家賃も生活費も自分で何とかするって約束で、一人暮らしを始めた。五人兄弟なのに親父は普通のサラリーマンといううちには、私立大学に行きながら、独り暮らしまでさせるなんて余裕は無いのだ。
自分で責任もって、てのはすげぇと思うけど、弟妹の世話から逃げただけのように思えるのは、気のせいじゃねぇと思う。
俺の次・・・三番目は、健吾、今年で十一歳。まだ小学校五年生の、生意気なガキだ。滋兄のことはにいちゃんって呼ぶくせに、オレのことは呼び捨てにしやがる。
四番目は、小学二年生の「みお」、小学校低学年にして、英検三級に挑戦しようとしている奇才児だ。親父が海外へ出張するようになったからか、もともと語学に素養があったのか。そのうち、留学するとか言いだしそうで恐ろしい。
一番下の五番目は、「ゆの」。すげぇ現代的な名前だと思う。最近は、「うー」だとか「だー」だとかだけじゃなく、いろいろしゃべる?ようになってきて、おもしろい。けど、俺のことを「ぱぱ」と呼ぶのはやめてほしい。早く帰ってこいよな、親父。
親父は出張でしょっちゅう家にいないし、母さんは母さんで、父さんの稼ぎだけじゃきついからって、パートに明け暮れている。
兄貴もいないし、妹もまだ小さいから、料理以外の家事は、俺も一通りできるようになった。実際、母さんが仕事のときはそうしてる。
でも、最近は、だいたい妹たちの面倒を見ることがほとんどだ。
今日も、ゆのを保育園に迎えに行って、家へ帰る。
健吾とみおは、小学校の放課後教室を利用していて、一定の時間まで先生たちに遊んでもらったり宿題を見てもらったりした後、二人一緒に帰ってくる。健吾なんかはもう高学年だから、一人で留守番させてもいいかとは思う。
事実、オレは小四の時から、パートをし始めた母さんの帰りを、兄貴が中学の部活が終わって帰ってくるまで、一人で待っていた。(健吾はそのころは、保育園にいた。)
家に入ると、二人は玄関まで走ってきて、出迎えてくれる。それはうれしいけど、サッカー部でしごかれた後に、小学生に跳びつかれるのはきつい。
「お兄ちゃん、おかえりー」
「あ、うん。ただいま。・・・で、一回離れろ。」
「えー。」
文句を言いながらも、みおは放してくれた。
「みお、ゆののこと頼んでいいか?」
「どーして?」
「洗濯物入れるから。健吾はこっち来て手伝え!」
「はーい。」
「えー。」
ゆのをみおに抱かせて、オレはリビングに荷物をおろしてベランダに向かう。
「健吾、早くしろ。」
「・・・しかたねぇな。おい、洋介。後でマ○オカートな。」
「わかった、わかった。相手してやるから。」
相変わらず、生意気な弟だ。
洗濯物を入れた後、ゆのをベビーベッドに寝かせて、洗濯物をたたみながら、みおの「今日学校であった事」の話と、宿題の「本読み」を聞いてやる。それが終わると、健吾にせがまれたテレビゲームをやる。
あ、忘れてた・・・。俺はゲームをパースにすると、キッチンに行って米を研ぐ。健吾がギャーギャー言ってるけど、気にしない。
「夕飯いらねぇならいいぞ。」
そう言えば、不機嫌そうな顔をしながらも、黙って漫画を読み始める。
だんだん、自分が所帯じみてきている気がする。米を、洗うじゃなくて研ぐって、普通に言うようになったことだって、大きな変化だ。・・・よし、終わり。ご飯のセットさえしておけば、おかずは、帰ってきた母さんが作ってくれる。
「健吾、いいぞ。」
「よっしゃ、ぜってぇ負けねー。」
「お前、もう一位走ってんじゃねぇかよ。」
「洋介を一周遅れにしてやる!」
「オレだって、そこまで下手じゃねぇよ。」
夕飯の後は、部屋に行って学校のカバンを開ける。部屋って言っても、健吾と相部屋だ。
「洋介、ペリーって、どこから入って来たんだ?」
「浦賀。」
「徳川幕府の最後の将軍。」
「徳川慶喜。」
「一九七三年と、七九年に日本で起きた・・・」
「オイルショック、または石油危機。」
「銀閣寺は?」
「書院造。」
「それじゃなくて・・・」
「足利義政?」
「そうそれ!」
「あとは・・・」
「自分でやれよ。」
勉強中に、宿題を聞かれるのもよくあることだ。
「今終わった。」
「・・・・・・はぁ。」
「だって、洋介こんくらいしか使えねぇじゃん。」
失礼な奴だ。小学校の内容くらいなら、オレにだって教えられる。
「ったく、お前はなぁ。・・・小学生は、さっさと寝る支度しやがれ!」
「はーい。」
今の時間は午後七時三十分。うちの決まりじゃ、良い子は八時におねんねだ。小学生は、さっさと風呂入って寝ろ。
「洋介、電話よ。」
下から母さんの声がして、階段を下りる。
「女の子からよ、美作さんだって。」
「弥生から?」
母さんが、ニヤニヤしながら受話器を渡してくれる。ったく、何だと思ってんだか。ちなみに、オレは携帯をもっていない。無駄な金は無いし、切羽詰まった必要性も感じていないからだ。てか、こないだ二人に奢ったせいで、今月の小遣いは、すでにピンチだ。
「もしもし?」
『あ、洋ちゃん。起きてた?』
「ガキかよオレは。宿題やってたっつーの。」
『そっか。』
弥生がこうやって、うちに電話してくることは珍しいことじゃない。小学校のとき行っていた塾が同じで、そのころから宿題の確認をしたり、いろいろで、電話をかけてくる。けど、こうやって・・・母さんがいる時間に電話してくるのは、久しぶりだった。
「どうした?」
『こないだは、ありがとうね。最近、やっと元気回復してきた。』
「そっか、良かったな。」
『へへ・・・。で、ね。』
「あぁ。」
『また、今度の休み、洋ちゃんちに遊び行っていい?』
「久々だな。別に、いいけど。・・・みおなら、もう幼児じゃねぇぞ?」
昔は、よくチビのみおを抱っこして、「かわいー」とか言ってた。みおも、弥生によく懐いてたと思ったけど。高校受験のころくらいから、もうずっとうちに来ることはしていない。
『赤ちゃんならゆのちゃんがいるでしょ。それに、みおちゃんだってかわいいじゃん。』
「お前のこと覚えてるかわかんねぇぞ。」
『いいよー。また、お友達になるから。』
うん、声が明るい。回復したってのは、本当みたいだな。表立った変化はあんまりなかったけど、大和に・・・ずっと好きだった(らしい)幼馴染に恋人ができたのを知ってから、弥生は少し様子が違った。感情隠すのがうまいやつだから、注意してなきゃ気付かなかっただろうけど。
「でも、なんでわざわざ電話で?まだ、明日学校あるじゃねぇか。」
『洋ちゃんには、心配かけちゃったしね。』
・・・オレが気づいてること、気づいてたんだな。
「さすが。」
『え?なにがぁ?』
「いや・・・うん。」
『うん?・・・それに、やよ遠慮したんだよ?上総ちゃんの前で、洋ちゃん家行く!なんて言ったら、上総ちゃん誤解しちゃうでしょ?』
「・・・そうだな。」
あいつは、ホントに鈍いから・・・。
「弥生、」
「あー、洋介が電話してるー!彼女か?彼女か?」
「ちげぇよ、バーカ。てか、さっさと髪乾かせ。」
風呂から上がった健吾が、目ざとく電話してるオレを見つけて、騒いでくる。騒ぐ、とはいっても、電話の相手を気にしていつもよりは小声だ。
『弟くん?・・・健吾くんだっけ?』
まぁ、ばっちり聞こえていたようだが。笑いながら訊いてくる弥生に、オレは肯定の意を示す。
「用事は、これだけか?」
『うん。ごめんね、勉強の邪魔しちゃって。』
「いんや。まだ、勉強は始めてなかったしな。」
『あれ?さっき、宿題してたって・・・』
「言葉のあやだっつの。まだ教科書詰め直してただけだよ。」
『そうなんだ・・・。大丈夫なの?英語の課題、出てたよね?』
は?
『あれ?洋ちゃん寝てたかな?英語、リーディングの方。』
・・・熟睡でした。
「忘れてた・・・。何やってくるんだっけ?」
『最後に分けられた、A4のプリント三枚。・・・センター試験の過去問。』
・・・・・・・なんだって?
「三枚?過去問?」
『うん。全部、明日の昼休みに提出・・・』
「やっべー!」
英語なんて、上総とか、弥生の数学ほど極端じゃねぇけど、古典と並んで苦手な科目だ。
「悪い、もう切る。今から即行やんねぇと。」
『わかんないとこあったら、明日の朝教えてあげるよ?』
「サンキュ!助かる。じゃな!」
オレは、電話を切ると、階段を駆け上がった。
宿題やんねぇと!
ただ、それだけを考えて。
終
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