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第三王女は見過ごさない  作者: 若草 玻璃
エピソード1

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第2話 第三王女の誕生パーティー2

「つまり、このヴィオレッタ……ベルナール嬢は、ロッシ嬢に屈辱的な嫌がらせを繰り返していたのです」

「そんな! わたくしは何もしていません」


 発言したヴィオレッタにジュイエは黙って視線を向けた。ヴィオレッタは俯き、謝罪する。


「お許しもなく発言したこと、謝罪いたします。殿下」

「あなたがベルナール嬢だね。発言を許可する」

「感謝します」


 ヴィオレッタは手を組み、無実を王女の前に訴えた。

 

「わたくしは、ロッシ嬢の持ち物に触れたり、食事を邪魔したり、まして危害を加えようなどと考えたことはございません」

 

 ジュイエはヴィオレッタの目を見た。ジュイエには、ヴィオレッタの潤んだ瞳は無垢に見えた。

 そのまま、ジュイエは視線をレオナルドへ向けた。


「いいでしょう。それでは、レオナルド。もう一度聞く。ベルナール嬢がロッシ嬢へ行った嫌がらせについて、証拠はあるのか?」

「はい。まずは、学用品が汚されたときにそばに落ちていたハンカチ」

「以前、わたくしはハンカチを一枚紛失しています。それは今も戻ってきておりません」

「次に、食堂での高位貴族たちによる邪魔」

「身に覚えがありません」

「最後に、校内での階段からの突き落とし」

「そちらについても、同じく」


 静まった広間が再び人々の囁きで騒々しくなっていく。ジュイエは表情を崩さないまま、レオナルドに詰問する。

 

「その被害をレオナルドに申告したのは、ロッシ嬢なんだね」

「はい、殿下。彼女だけではなく、彼女の友人であるモンロー嬢も証人です」

「ハンカチと、ロッシ嬢と、ロッシ嬢の友人の証言。それだけでベルナール嬢の仕業だと断定したのか?――それが本当に、証拠だと?」

「え?」

「事実確認もしていない?」

「……あ」


 今度はレオナルドが青くなる番だった。片方の証言と、曖昧な物証。それだけが証拠と言われても、ジュイエには――いや、誰にも――それが真実だとは言えない。


「に、ニーナが嘘をつくはずがありません」

「なぜ」

「こ、こんなに優しく、心の綺麗な人は他にいません」

「――そう。ベルナール嬢はやってないと言ってる。ロッシ嬢は被害を受けたと言っている。双方の意見が食い違うなら、あとはあなたの心象如何ということか?」


 レオナルドは隣のニーナを見る。ニーナが何か言おうとしたので、ジュイエは左手で制した。


「あなたには発言を許可していない。レオナルドが答えなさい。あなたの心象で、子爵令嬢を公衆の面前で侮辱しようとしたのか」

「ど、動機があります! ヴィオレッタはニーナと私が仲を深めているのを気にしていた!」


 呆れ果ててものも言えない。ジュイエは思わず顔を歪めそうになり、視線を遠く空中に彷徨わせた。

「姫さま」

 ダニエルが耳元でそっと嗜める。

 わかっている。あれに何を言っても無駄だ。

 

「……では結論から言おう。本当にいじめがあったとする。それで、得をするのは誰?」

「と、得……?」

「そう。公爵家の嫡男と仲を深めて、婚約者である子爵令嬢との仲を引き裂いて得をする人物」


 初めてレオナルドが目の色を変えた。彼の腕に縋り付いたニーナを見て、冷静なヴィオレッタを見て、そしてジュイエを見上げて、小さく呟く。

 

「――損得なんて」

「答えなさいレオナルド。あなたの頭で考えて。あなたが本当に信用するのは誰? 優しいとか心が綺麗とか、そんな表面的なこと言ってないで、現実を見て。さあ、この茶番が予定通り進めば、最も得をするのは誰?」


 レオナルドが俯いた。思ったより察しが悪くなくて助かった、とジュイエは心から思った。

 これ以上、ジュイエがレオナルドに説教する必要はなかった。彼の父親が、ジュイエの前に躍り出たからだ。


「さて。いくら従兄といえ、王女である私の誕生パーティーでこんなヘソで茶が沸くイベントをしてくれたんだから、覚悟はできてるね? 公爵(叔父)さま」

「……第三王女殿下にご挨拶申し上げます。愚かな息子で本当に恥ずかしい。申し開きようもございません」

「彼に三日間の謹慎を。もしまだ何か言い足りないことがあるなら、外部調査機関でも設置して徹底的に調べることをお勧めするよ」

「検討します」


 レオナルドは父親に連れられて大広間を後にした。すっかり裁判所と成り果てたこの華やかな広間に、再び聖杖が床をつく音が響いた。


「さあ、皆さま。茶番はこれでおしまいです。引き続き、パーティーを楽しんで」

ここまでお読みいただきありがとうございます。

気に入っていただけましたら、評価・リアクションをいただけますと嬉しいです。


それでは、次話でお会いしましょう!

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