↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
第三王女は見過ごさない  作者: 若草 玻璃
エピソード1

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

11/26

第11話 正面突破1

初めての方は第1話からどうぞ。

婚約破棄の断罪劇を王女が一言で叩き潰します。

「ダニエル。お願い、アビーを助けに行って」

 グレゴリオの執務室にて、カンタスが窓から飛び込んできた直後。ジュイエはダニエルに懇願していた。

 ダニエルは頑なに首を縦には振らなかった。

 

「鴉じゃだめなのか?」

 アロンツォが訊ねる。

「鴉はそもそも、情報収集のための組織よ。武力は高くない。アビーが攫われたということは、相手は一定の戦力を有してる可能性がある。深追いはさせられない」

「王女さまを王宮に届けてから行けば」

「その間に移送されたら見失う可能性がある。ここから近いなら、そんなこと言ってられない」

「この状況で、俺は姫さまのおそばを離れることはできません」

 

 きっぱりとしたダニエルの物言いにジュイエは声を低くして聞いた。

「……市民の命がかかっていても?」

「あなたには代えられない。俺は近衛です、一般兵じゃない。わかっているはずです」

「……ダニエル」

「俺はあなたの騎士です。あなたの騎士になってから、あなたの安全を他人に預けたことは一度としてない。俺にあなたの騎士になれと言ったのは、あなたの母上です」

 

 こう着状態に陥った二人の間に、グレゴリオが控えめに口を挟んだ。

「あー、その、元老院の馬車と、腕利きの門兵を付けて、殿下を王宮に届けるってのは……?」

 その案にジュイエはぱっと表情を明るくした。

「それに、ダニエルひとりじゃ心配よ。敵が複数いるなら、こっちにも応援がいる。ダニエルはカンタスと一緒に先にアビーの元に行って、見失わないように見張っててほしい。私は王宮で近衛を呼ぶわ」

「姫さま……!」

 ダニエルはまだ首を振っていた。けれども、ジュイエだって頑なだった。

「お願い、ダニエル。私は誰の手も離したくない」


 ジュイエはアロンツォと共に、馬車で王宮に向かっていた。

「なんで王女さまには近衛がダニエルしかついてないんです?」

 アロンツォの疑問に、ジュイエはカーテンの隙間から街を覗き見ながら答える。

「通常、王女は城から出ないものよ。王女が戦力を欲しがるなんておかしな話だわ」

 アロンツォはふうん、と頷いてジュイエと反対のカーテンの隙間を覗いた。

 アロンツォは初めて、ジュイエとダニエルが言い争う――というか、ダニエルが怒っているのを見た。

 

 広場のオベリスクを過ぎれば間も無く王宮に到着する。通常であれば馬車のまま、奥の第三王女の宮にそのまま入るのだが、今回は最も入り口近くの正面玄関で停める。

 中に入れば豪奢なフレスコ画の天井と、彫刻の施された壁面装飾の廊下を通り過ぎ、ある広間へ通じる回廊を渡る。

 広間の両端にいるコラッツィエーリ(王の護衛官)に僅かに緊張しながら、ジュイエは扉を叩いた。


「陛下」


 分厚いマホガニーの扉を開けた先には、数人の貴族議員と、国王陛下――ジュイエの父親がいた。


「議会の最中に申し訳ございません。国王陛下」

「何事か」

「近衛兵を五名ほど借り受けたく。急ぎの案件のため、こうして参上いたしました」


 会議を中断されたというのに、陛下は顔色を変えなかった。陛下――父親と会うのは、数ヶ月ぶりだった。


「おまえはまた、首を突っ込んでいるのか」

「私の権限において、王都下の問題を調査しています」

「問題とは」

「陛下のお手を煩わせるわけにはまいりません。すぐに解決しますので、ご放念ください。ですが、武力が必要になるかもしれません」

「勝手に連れていけ」

「ありがとうございます」


 膝を曲げる礼をして、ジュイエが体を翻したとき、王はそれを止めた。


「ジュイエ」

「……はい」

「成人おめでとう」


 まさか、ここで祝われるとは思ってもみなかった。成人の儀も、誕生パーティーも、父王は一切関心を示さなかった。それはジュイエだけでなく、他のきょうだいも同じだったけれど。


「恐れ多いことです。陛下」

「おまえが男だったら、私の後継に最も相応しかっただろう」


 それは王にとっては最上級の褒め言葉だろう。ジュイエは目の前が暗くなった。震えないように、倒れないように、ゆっくり振り返る。


「……陛下。私は4番目の子どもです。男であっても、最も玉座に遠い存在だったでしょう。それは、陛下のせいでは?」

「口が達者なのは母親譲りだな」

「褒め言葉と受け取ります。近衛兵はありがたく連れていきます。失礼します」


 ジュイエは今度こそ、父親の前から姿を消した。


 門前で待っていたアロンツォと合流すると、アロンツォは馬を借りてきてくれていた。

 一頭の手綱を引き受けようとすると、アロンツォが顔を覗き込んできた。


「……顔色が悪いですね。何かありました?」

「平気よ」


 ジュイエは知らずに冷や汗で濡れていた額と首筋を拭って、豪快に馬を跨いで乗り上げた。

 高いところは気持ちがいい。意識的に空気を吸う。


「うわ、ていうかそれ、乗馬服じゃない!」

 街歩き用に簡素なドレスを着ていたのが悪かった。足が出ているらしい。靴は少しだが踵も高い。

 同じく馬に乗ったアロンツォが言うが、今更気づいてももう遅い。


「このまま近衛騎士団の詰所に行く」

「着替え! 先に着替えです! その格好はまずいってほんとに、怒られるって俺が! ダニエルに!」

「だあっうるさいっ、時間がないの!」

「あんた、自分の立場分かってます?!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。