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Sランク宮廷魔術師、理不尽な理由でクビになったので田舎でスローライフ(農家)始めました  作者: 仁科異邦


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第35話 騒動の予感

朝、レオから手紙が届いた。

普段の几帳面な字ではなく、少し急いだ様子の字だった。


『ガイウスさん、お久しぶりです。 一つ報告があります。 最近、ラッセル周辺でAランク龍の目撃情報が増えています。 先月だけで六件。 例年の三倍以上です。 討伐依頼も増えていて、ギルドが対応に追われています。 何かご存じですか? レオ』


俺は手紙を畳んだ。

リナが声をかける。

「ガイウスさん、誰からの手紙?」


「レオからです。どうやら龍が増えてるみたいですね」

「え、そうなんだ‥なんで増えてるの、」

「さあ」

「さあって、被害増えそうなんでしょ?」

リナが「ちゃんと考えてよ」と言った。


「考えてはいます、ただ情報が少なすぎるので」

「じゃあ情報を集めればいいんじゃない」

「確かにそうですね」

俺は返事を書いた。


『レオ、情報をありがとうございます。 龍の目撃が増えている方角はわかりますか?

北からの龍が多いようであれば、何か理由があるかもしれません。 わかる範囲で教えてください。 ガイウス・ノア』


「北からかもしれないって、なんで?」とリナが聞いた。

「龍は縄張りを持つ生き物です。 理由なく移動しない。 南に向かって増えているなら、北で何かがあって追われている可能性があります」


「追われている?」

「あくまで可能性ですが」

「何に追われるの、Aランク龍が」

俺は少し考えた。

「Aランク龍が逃げるとしたら——それより上の何かです」

リナが少し黙った。

「……Sランクの龍、とか?」


「もしかしたら、そうかもしれないですね」

「その言い方が気になる」

「でも、本当にまだわからないので」


三日後、レオから返事が来た。

『ガイウスさんの指摘の通り北からが多いです。 特にラッセルの北東、山岳地帯の方向からの目撃が集中しています。 ギルドの古参の人が「こんなことは二十年ぶりだ」と言っていました。 前回はどうだったんですかと聞いたら、黙られました。 気になります。 レオ』

追伸があった。


俺はエリアを呼んだ。

「北東の山岳地帯について、王都の記録に何かありますか」

「調べてみます」とエリアが言った。


「龍の異変に関する記録を中心に」

「わかりました」

「セルジオ殿にも手紙を出してください。 ギルドの古参が黙ったと言うことは何かあるかも知れません、それに王都に記録が残っているかもしれません」


エリアが「すぐに動きます」と言って地図を一枚だけ持って出ていった。

(前より減っている、これも成長ですね)


リナが「レオたち、来るの?」と聞いた。

「来てもらえれば助かります」

「じゃあ呼べばいいじゃん」

「来てくれと言うのも申し訳ないので」


「ガイウスさんって、たまに遠慮するよね」

「弟子は取らないって言いながら、断れなくて。 頼み事もなかなかしなくて」

「面倒をかけたくないので」

「でもみんな来たいんだよ、ここに」

俺は少し考えた。


「……そうかもしれないですね」

「そうだよ」

リナが「私が呼んでおく」と言って宿屋に入った。

少ししてから、扉が開いた。

「ガイウスさん」

「なんですか」

「レオたちに手紙、書いた」

「早いですね」

「来てほしいときは呼ぶ。 それでいいじゃん」

「そうですね」


リナが扉を閉めた。

俺は薬草の様子見る。

ふと、北東の空を少し見た。

山の稜線が見えるいつも通りの景色。

ただ——なんとなく、その向こうが気になった。


五日後。

レオとカナが来た。

「久しぶりです」とレオが言った。

「久しぶりです」と俺は言った。

「報告があります」

「どうぞ」

「来る途中、街道沿いで龍の痕跡を二つ見つけました、どちらも北から南に向かって移動した跡がありましたが、あまり食事を取った形跡はなかったですね」


俺は頷く。

「なるほど、逃げていた可能性がありますね」

レオが頷いた。


「食事を取らずに移動する龍は、追われているか、縄張りを失っています。 この時期に複数の龍が同じ方向に移動しているのは、通常ではなさそうですね」


カナが俺を見た。

「ガイウスさんは——何か分かりますか?」


「そうですね、まだ確証はないですが可能性として」

「北の山に——他の龍が逃げるほどの何かがいるのではと考えてます」


「Sランク、ですか?」

「かもしれないですが、まだ確認していないので何とも言えないです」

カナがレオを見た。

レオが「……つまり」と言った。

「確認しに行くんですか、ガイウスさんが」


「まず情報を集めます。情報が集まったら、行くかもしれないです」


「俺たちも手伝います」

「危険ですよ」

「わかっています」

「Bランクで対応できる相手ではない可能性があります」

「わかっています、でもガイウスさんが行くなら、近くにいたいので」


レオが真面目な顔で言った。

カナも静かに頷いた。

俺は少し間を置いた。

「……助かります」


「やっと素直に言いましたね」とリナが言った。

「聞いていましたか」

「ずっと聞いてた」

「そうですか」

「来てもらえてよかったね」

「そうですね」


アルトが「俺も手伝います」と言った。

全員がアルトを見た。

「測量魔術なら龍の位置を遠距離で把握できます。 少しは役に立てると思って」

俺は少し考えた。

「確かに役に立ちますね」


アルトが「本当ですか」と目を丸くした。

「測量魔術で龍の移動経路を把握できれば、パターンが読めます」

「やります!」

「危険な場所には連れていきませんが」

「それでも行きます!」


「わかりました、よろしくお願いします」

アルトが「やった」と小さく言った。


レオが「アルト、いつの間にか村に馴染んでるな」と言った。

「三ヶ月いましたから」とアルトが言った。

「え、三ヶ月も!?」

「弟子入り志願で来たんですが、帰りそびれて」

「帰りそびれたって」


「気づいたら住んでました」

レオが俺を見た。

「……ガイウスさん、また増えてましたね」

「気づいたら増えていました」

「断れなかったんですか」

「面倒なので諦めました」


「それ断れてないよね」

「まあ‥」

リナが「いいじゃん、仲間が多いほうが」と言う。


ゴードンが縁側から「賑やかになったな」と言った。

グラントがエールを持ってきた。

無言で全員分。

夕暮れが広がっていた。

北東の空を見る。

ただ——その向こうに、何かがいる気がした。

ただ俺だけが、そう思っているわけではないようだ。


「明日から調査しましょう」と俺は言った。

グラントが無言で頷いた。

「グラントさんも行くんですか」とレオが言った。

グラントが無言で首を振った。


「エールの仕込みがあるので」とリナが言った。

「それは優先度高いですね」とレオが言った。

グラントが無言で頷いた。 


スローライフは少し雲行きが怪しくなりそうだ。

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