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Sランク宮廷魔術師、理不尽な理由でクビになったので田舎でスローライフ(農家)始めました  作者: 仁科異邦


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第23話 ザルクとは話が合いそうだ

すいません、本文短めになってます。

昼前、北の街道から斥候の報告が入った。

エリアの術式センサーが反応したのだ。


「来ています。 速度から計算すると、二時間以内に村の手前まで」

「わかりました」

全員が広場に集まった。


レオが剣を確認していた。

カナが魔術の呪文書を見直していた。

エリアが術式の展開準備をしていた。

ゴードンが村の外周を確認して戻ってきた。

グラントが無言で腕を組んでいた。


「作戦を決めます」と俺は言った。

全員が俺を見た。

「まず、俺が一人で村の手前に出て、話し合いを試みます」

レオが手を上げた。

「俺たちは‥」

「村の中で待機してください」

「一緒に行きます」

「いりません」

「でも——」

「レオさん」


俺はレオを見た。

「一人のほうが、話し合いになりやすい。 大人数で出ると、相手が身構えます」


「……それは、わかりますが」

「話し合いが決裂したら、すぐに終わらせます。 その間、村の中に残った人たちを守ってほしい」

レオが少し考えた。


「……わかりました」

カナが言った。

「何かあれば、すぐに動けるよう準備しています」

「お願いします」

ゴードンが言った。

「一人で、本当に大丈夫か」


「三百体相手に一人は多いですが、まあ問題ないです」

「多いけど問題ない、というのはどういう理屈だ」

「三体でも三百体でも、やることは同じなので」

ゴードンが額に手を当てた。


「……お前さんと話していると、感覚がおかしくなる」

「すみません」

「謝ることでもないが」

エリアが手を上げた。

「一つだけ提案があります」

「なんですか」

「術式での連絡を繋いでおきます。 ガイウスさんの状況が、ここからリアルタイムでわかるようにします」


「それは助かります」

「決裂したと判断したら、こちらからも動けるように」

「お願いします。 ただ——」

俺はエリアを見た。


「動くのは、俺が合図してからにしてください。 それまでは待っていてほしい」

「わかりました」

全員が頷いた。


「作戦は以上です」

レオが「短い作戦会議でしたね」と言った。

「シンプルなほうがいいです」

「シンプルすぎませんか」

「面倒なので」

グラントが「頼んだ」と短く言った。


一時間後。

俺は村の北の入り口に、一人で立った。

街道の先に、黒い影が見え始めていた。

整然と並んだ、黒い甲冑の列。


数えるまでもない。 三百体以上、いる。

その中央に、赤い羽根飾りの兜をかぶった男がいた。

俺を見て、止まった。

相手もこちら見た。

手を挙げて部隊を止める。


少しの間、沈黙があった。

男が馬から降りた。

ゆっくりと、俺のほうへ歩いてきた。


二十メートル。 十メートル。 五メートル。

そして止まった。


男が俺を見た。

「……魔術師ですか?」

「元魔術師です。 今は農家ですが」


「ガイウス・ノア殿、ですね」

「そうです。 あなたは」

「ザルク・グレイ。 魔王軍先遣隊の隊長です」


「はじめまして」

「あ、こちらこそはじめまして」

しばらく沈黙があった。

ザルクが俺を見て、ため息をついた。


「……一つだけ聞いていいですか」

「どうぞ」

「Sランクが、なぜ農家をやっているんですか」

「静かに暮らしたかったので」

「そうですか」

また沈黙。

ザルクがまたため息をついた。


「……話し合いに来たんですか」

「そうです」

「俺もそのつもりで来ました」

俺は少し目を細めた。

「戦うつもりはないんですか」

「できれば」

「三百体連れてきておいて」

「任務なので連れてきましたが、戦いたいわけじゃないです」

俺はザルクを見た。


難民の男が「めんどくさそうな顔をしていた」と言っていた。

確かに、そういう顔をしている。

ただ——話が通じそうな目をしている。


「では、話しましょう」と俺は言った。

「そうしましょう」とザルクが言った。

街道に、静かな時間が流れた。

村の中で、エリアが術式越しに全員に状況を伝えているだろう。

レオが「なんか普通に話してる」と言っているかもしれない。


待機しているレオ達

「‥‥」

(なんか普通に話してる)


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