竜騎士ジェイド編・三話
海の上の島という感じだが狭くは無いそれなりの面積がある。
屋敷の周囲を見回ったが建物内の惨状とは違い雑木林や地面は雑草が伸び放題という事もない 周囲には馬や山羊が10頭前後放し飼いで、それなりに綺麗なのはその動物たちのおかげらしい、天候が荒れても大丈夫だろう程度の高さもあるし、なかなかどうして良い環境だ
「持ち物や調度品も値打ち物が殆どだし、金持ちなんだな」
そう呟くと後ろから返答がある
「この大陸は魔術技術や知識はすごく遅れてるからね。その手の仕事をするとだいぶ儲かるのよ」
身支度を整えて現れた、今日は白のドレスを着てきたマリーが答える、だが相変わらず両側に深いスリットのある服だった、ジェイドの考えを読んだようにマリーは腰に手を当てて
「移動は馬に乗ることが殆どだからね」
普通のスカートドレスでは馬に跨がれないよというのを主張する それが分かるジェイドも
「だろうな、良い馬を飼っているようだし」
「で、この大陸の魔術技術や知識が遅れているとは?」
「人造魔人よ」
「人造魔人か、第一次10年戦争時に生み出された、人と獣と武器を魔術で強引に掛け合わせて作られたキメラみたいな兵器だな」
「そ、あの苦い経験があって魔法は一時放棄同然になった、だからあたしのような外世界の普通に魔術を習得した人間は貴重なのよ」
「なるほどな、しかし、百年も前の話だ捨てる必要もなかろうにな」
「同感だけど、その作られた生物が未だに多くは無いけど繁殖して存在しているのだし。自分たちがやった事の結果が常に存在している、そういう状況で目を逸らして魔法をやろうとは云えないんじゃないかしら?」
「ま、其のおかげで神聖術は発展してるし、結果大きなマイナスとも云えないんじゃないかな」
「壊すほうではなく、癒すほうに比重が向いた、か、何かを失った分何かを得たと言えるな」
「人造魔人と言えば」
「ん?」
「戦う、ならあっちのほうがいいんじゃない?竜より数はそれなりに居るし」
「あー‥いや、実は俺は、大陸旅の最中、見たことがあるんだ、しかも2回」
「人造魔人を?」
「そう」
「戦ったの?」
「というより、いきなり襲い掛かってきた」
「!」
「こっちが話しかける間も無く飛び掛ってきた。一回目は3メートルくらいの巨人で会話も成立せず丸っきり猛獣、しかたなく迎撃という感じだ」
「生きてるって事は勝ったのね‥」
「いや、当時は普通のロングソードを使ってたが、全然刀が通らずなんともならんかった。どうにか剣を突き立てて手傷程度を負わせた、がそれを見て相手は逃亡、剣は真っ二つさ、向こうが続けていたら死んでただろうな」
「それで、貴方はその大剣を使うように?‥」
「そうだ、ナマクラで斬ると殴るの中間みたいな性能だが。壊れはしない」
「その時「人以外の者と戦う」にはそれなりの武器がいると悟って用意した、尤もまだ一度も使ってないが」
「で、2度目は中央のヘブンズゲート山脈の近く、見た目は普通の人間の子供、だが右手だけ鉄みたいだった」
「こっちが話しかけて黙って向こうは聞いていたが、言葉を話せないらしいし、見た目丸っきり子供と戦うわけにもいかず、だったな」
「そう‥」
「個体差が大きすぎてな、強さの基準?が曖昧過ぎるし計りえないのがな‥」
「あたしは実物を見た事が無いし、個々でそんなに違いがあるのね」
「ベースは人間らしいしな、半端に生殖能力があるだけに代替わりを繰り返すうち、そうなってしまうんだろう」
「神聖術も「彼ら」を戻す研究はしていたらしいけど。上手くはいかなかったそうだし、発展はその分したんだけど」
「しかたないさ、元体ならともかくその子や孫を人間に戻せる訳もない」
「なんだか悲しい話ね」
「なら話を変えるか」
「そういえば今日はどうしたの?あたしに特別な用事でも?」
「特別‥とか急ぎって事でもないが、まあ、聞きたい事があったってのと、機会を作ろうと言った手前、丁度いいと思ってな」
「へぇ~それで昼ごろ叩き起こしに来てくれた訳ね」
「起こしたのは猫だがな、大体寝てるとは思わんだろ普通、昼過ぎだし」
「まあ、それはいいとして、せっかく昼間に起きたのだし買い物にでも行きましょう」
「露骨に話をそらしたな‥」
「旗色が悪い時はさっさと撤退する、基本ね」
「えらそうに言っても自堕落で情けない事には変わらんぞ」「ん、そういや今日は比較的清楚系な服だな」
「比較的って‥」
「前のは露出多いし色もド派手、装飾品もカラフル過ぎると思ったが」
「酷い言われようね、まるでセンスが無いみたいな」
「と言うわけでもないが‥なんか、初見男漁りに来た踊り子の様な感じにも見えたしな」
「あたしを本気で口説こうなんて胆力のある男はそうそういないし、そんな期待はしてません」
「だろうな」
「なんかあたしの良くない話でも吹き込まれましたか?」
「それもある、が。お前の会話のペースについていけるやつもあまり居なそうだとも思ってね」
「確かにあたしと話のやり取りが続く奴はそうはいないわね‥」
「そうだろう」
「と、このままだと無駄話だけで日が暮れちゃうわ、街に行きましょう」
「貴方馬乗れる?」
「一応な」
それを聞いてマリーは、遠くで草をモサモサ食ってる馬の一頭を呼ぶ。
「スタディーこっちいらっしゃい!」
マリーの元に来た馬は4頭だったが
「全然意思疎通出来てないんじゃないか‥」
「ほ、放任主義なの!」
2人は10頭居る中でも特別健脚で大きなスタディーに2人乗りし、街への道をゆったりと景色を楽しみながら移動する




