竜騎士ジェイド編・四話
「こいつは良い馬だ名前の通り屈強だ」
「馬は本来臆病で繊細だけどこの子は穏健で勇気もある、珍しい馬よ。たぶん鉄騎馬にしても一段抜けた活躍をするわ」
「ところで「それもある」の所はどんな噂話なのかしら?」
「ん。たいした噂じゃないさ。お前の所への道を何人かに聞いてきたら、堕天賢者様かい?とかおばさん達が呼んでいただけさ」
「何だ、そんなことか。良くないうわさでもないわね」
「ワード的には宜しくないが」
「単に昼間出てこない、とか、知識者なのに伝授や教育を他人にしないから、そういわれてるの、だいぶ前からの事、別に悪意があって言ってる訳でもない」
「まあ、そんな感じだろうな」
「それにまあ魔術士ってのは、この大陸じゃあまり好かれないのは事実かもね」
「ああ、人造魔人のトラウマか?俺は気にせんが、似た様なもんだし」
「と、言うと?」
「人より何らかの形で力ある者、てのは恐ろしいものさ」
「見た目からしておもいっきり怪しいし異常に強そうだからねジェイドは」
壁に囲まれた城下街への門をくぐり、馬を降りて森に放す
「繋がなくていいのか?」
「あの子は勝手にどっかいったりしないよ」
普段昼間で出てくる事が無い賢者様、と旅の剛剣士このツーショットはただ街を歩くだけでも異常に目立つ皆振り返って驚いた様な顔をする マリーが昼間出てこないのもそれが嫌だからでも「あった」
「で、どこに行くんだ?」
「宝石店ね中古の、それとお酒が切れてる」
「あくまでアルコールなんだな、まともな飯食えよ」
「いいじゃん別にどこも悪くないんだし‥」
「生活態度が悪い」
「うっさい」
中古の宝石店というのが気になったが、店に着いてマリーが物色するのを見るとジェイドは
「やっぱり女の子なんだな、宝石を物色する姿を見ると‥」
「残念だけど違うわよ」
「ん?」
ジェイドに体を寄せて、小声で店員に聞こえない様にマリーは
「中古とか年代物宝石には魔石の原石が混じってるのよ山から掘ったとか、川で拾ったとか、誰かのいわく付き中古とかに偶に‥」
「それは‥知らなかったな。どんな効果があるんだ?その魔石ってのは」
「精神力を消費するのを石が肩代わりしてくれたり。何らかの付与魔法が掛けられていたり、呪いだったり、いろいろね」
「そいつは見つけたらぼろ儲けか?」
「そのままじゃ大抵使えないわね、武器や防具に付けて加工したり魔術処理をしたり、ただ、それが分かるのも処理出来る人も殆どいないけど、魔法具は貴重もいいところだから武器や防具に付けて売れれば、どんな小さな物でも最低1個金貨30には化けるわね、そもそもそんなもの欲しがるのも学者、宮廷魔術士、貴族か王族くらいだし‥」
「‥たまげたな‥」
「もしかして‥いつも身に着けてる宝石も?」
「そう、全部処理した肩代わり系の石。いざって時には魔力消費無し疲労無しで魔法を連打出来るわ」
「おっそろしいな‥単なる派手好きの成金趣味で付けてた訳じゃなかったんだな」
そこまでヒソヒソだった声がそれを聞いて思わず大きめの声になってしまう
「貴方!あたしをそんな風に見てたの!?」
小声だったお客さんの若い女性がいきなり大きな声を出したので売り子の若い女性店員さんが、ビクッとなる
「お客様どうされました?‥何か不都合でも‥」と声を掛けてくる
「な、なんでもありません。彼ちょっと失礼な事をいきなり言うから‥」
「あ、これとこれとこれ頂きます‥」
かしこまりました、と店員さんは3点の宝石を包みに奥に下がるチラッと2人を見て少し笑っていたようにも見えた、店員さんにはジャレている様に見えたのかもしれない
「ジェイド‥貴方、思った事ストレートにいい過ぎなんじゃない?‥恥かいちゃったじゃない‥」
「すまん、今のは完全に失言だった‥」
包みを受け取り代金金貨15枚を払ってそそくさと店を出た
その後城には入れないが外から見物したり
所謂オープンカフェの様な場所でお茶をしたり
そこでマリーは「あっ」と何かを思い出した様に言い、ティーカップを置く
「そういえば、あたしに聞きたい事って何だったの?」
ジェイドも思いっきり忘れていたが
「あー、1年2年でどうこうって話じゃないんだが‥」と前置きした後
「大陸の外の地に行くのはどうするのがいいのかなと、マリーは外来人だし知識者だから詳しいんじゃないかと、思ってなぁ‥」
「大陸の外、ねぇ‥船だろうねえ」
「しかし方法は3つかな」
「聞かせてくれ」
「1つ国から船を出す、けど今の情勢だと難しいね豊かなこのメルトでも、戦火は及んでないけど一応戦時だしそんな道楽に金も人も出さないだろうし」
「2つが自分で船を購入して出す。これも金が尋常じゃなく掛かるし難しいかな、最低限の装備でも金100は要るだろうし、そもそもこれも国の許可が要るだろうし、コネかツテでもないとね‥」
「3つが既に学術調査目的で何度か船を出した事のある国に行ってメンバーに入るか」
「そんな国あったか?」
「最南の神聖国で学術都市。フラウベルト王国は2・3回決行して大陸外の南方地と少ないけど交流があったハズ」
「あそこか、一度行った事があるが‥何をするのも制限を多くて不自由な国だ‥」
「でしょうね、学者か敬虔な信者、位の高い僧、貴族、国の兵士か役人くらいしか公的施設には近づくことすら出来ないし‥」
「どれも今の時点じゃどうしょうもないな」
「とりあえず「今」の話じゃないなら、戦争終結してある程度金を貯めておけば、どうにもならない事もない、という程度の状況にはなると思うけど‥」
マリーは紅茶をすすってから
「それにしても、外にそんな行きたいのかしら?。良い世界が有るとも限らないし」
「有る無しというより、このペースだと30前にやる事なくなっちまう気がするんだよな」
「結局暇潰しの種なのね」
「いやー‥俺まだ23だし」
「そうは見えないわね。異常に生き急いでる感はあるわね。気持ちは分からないでもないけど‥」
「自分で言うのもなんだが。あまりに頂上に着くのが早すぎた、と思わなくも無い」
「地位権力に興味が無いなら困り者ね‥あるなら王様か国の重臣か剣王でも目指しなさいとでも言っておけばいいんだけどね」
「ま、いずれ、の事だ、今考え過ぎてもしかたない、状況もどう変わるか予想出来んし」
「とりあえずお金は大事に、かな?」
「そりゃ分かりやすくていい」
「いや、とても参考になったありがとうな、マリー」
「いえいえ」
その後、日も暮れてきたので一日亭で軽く食事をして帰る。
もちろんアルコールボトル1ダースも購入した
マリーの言った通り、城下街北門の橋の向こう側に馬は待っていた。スタディーに荷を乗せて2人は別れる
「送らなくていいのか?」
「あたしこう見えて結構強いのよ」
と、護衛が必要な程、か弱くは無いという意味を込めて返す 常に2本の短刀を帯刀しているのを見ているだけに、おそらくマリーは剣もそれなりにやるのだろうと想像はしていた
「だろうな」と短く言う
「じゃ、またね」
「ああ」
とだけ言ってマリーは屋敷に、ジェイドは宿に戻る




