98.
愛や忠勝のおっちゃんだけでなく、一緒に帰ってきた又兵衛や湯吉までもが驚いた顔で俺を見てくる。
「将? あんたカンバラと会って無事に帰ってきたの?」
愛が俺を見て体をバシバシと叩きながら触ってくる。
「う、うん」
良く分からないが全身を叩かれ、何処もおかしな所が無いことが分かったのか、両肩を掴まれて睨まれる。
「将、陸奥のカンバラ将軍と言えば、たった30の騎馬兵で京の200の兵士を討ち破った伝説の男だぞ?
その男をお前さんは知らんのか?」
「え、う、うん。始めて聞いた」
「「「「はぁっ!!!!!!」」」」
愛、忠勝のおっちゃん、又兵衛、湯吉が俺を呆れた顔で見て、ハルナと夢はキョトンとした顔をしている。
どうやら世代によっては全く知らない話なのかも知れない。
「俺が出会ったカンバラと言う奴は若い男だったぞ。顔に赤い染料を塗って顔が分かりにくいようにはしていたけど」
「「「「若い男?」」」」
愛を初め、歳上の大人達が驚いた顔をしている。
「なぁ、そのカンバラ将軍の話っていつ頃の事だ? ここ、2.3年の話か?」
「いや、もうだいぶ前の事だ。
でも、そうなると将や夢、ハルナは知らないか」
頭の中に何時もの機械音が鳴りはじめる。“スキル鑑定が発動します”
(※)カンバラ将軍は、現在の宮城県仙台市から宮城県白石市までを治めていた蝦夷の豪族。京の都では現在の福島県の一部、宮城県、青森県の一部を含め陸奥と呼んでいる。
(※)平安に都を遷都する際に蝦夷にも京の都に上洛して帝に忠誠を誓うように促すが無視をされた経緯あり、その当時最強よ呼び声の高い京の将軍を派兵。
(※)陸奥にある一豪族であるカンバラと言う将軍が、京の都から派兵された200の兵をたった30名の騎馬兵で打ち破り、実田を越えて進軍。急遽派遣されたお上との交渉で陸奥には攻め入らないと約束させた豪傑。
つまり愛、忠勝、又兵衛、湯吉の4人がその事を言っていると思われる。
俺の鑑定スキルがそう教えてくれる。なるほどね、しかし俺の鑑定スキルさんは優秀過ぎるよな、良くこんか事まで分かるよな。
もしかしたら、俺が勝手に鑑定って呼んでるだけで別の言い方があるのかな? 鑑定では無く全く違うスキルなのかも知れないな。
まあ、今まで鑑定スキルで通して来たからこれからも鑑定スキルで押し通そうとは思う。
でも、愛達が何に驚いて何を心配していたのかは良くわかった。それ程の将軍が良く俺を逃がしたと、何か裏があって然るべきと思ったのかも知れないね。
「あっ。忘れてた」
愛が突然、真っ青な顔で天井を見つめ動きを止める。
「将、月読様の神託を新たに授かっていたから伝えるぞ、次の満月の翌朝、狼の皮を被る者が現れる。
赤い線を持つ者が鬼を従えた男と出会う、いづれは刀を交える者同士だが
仲良くなれ。女が目覚める時・・・。
で、終わった。そっから先は何出てこない、けど刀を交えるのだから端的に言って敵の可能性が高い」
結構軽い感じで愛に言われる。
「愛姉、ちょっと待って。女って言わなかった?」
「私もそう聞いた。将に他の女が出来るの?」
ハルナと夢が愛に詰め寄る。
「落ち着きなさい。恐らく敵対するって話だ、女とは言われたけど赤ちゃんなのか、ばあさんなのか、可愛いおなごかは私も知らない」
「ハルナどうする、敵対するなら私達でけりを付けるって言うのもありだと思う」
「夢、奇遇ね。私も同じ事を考えていたわ」
「おやめ!! 仲良くしろとお告げだ、余計な事はこの私が許さないよ」
愛とハルナ、夢が睨み合う中、忠勝のおっちゃんや又兵衛、湯吉が俺を見てボソボソと攻めて来る。
「将、止めねえと」「モテる男は大変な事もせんといかんよな」
「将、骨はわしらが拾ってやる。ちゃんと止めてくれよ」
何でこの村の奴らはこの3人が言い争うと全てを俺に丸投げして来るんだ?
「取り敢えずはわかった、次の満月の日は何時だ?」
「「「今日だよ」」」
何故か愛、ハルナ、夢の3人の声が合わさる。てか、今日が満月の夜なら明日の朝には何かが起きると言うことなのだろな。帰ってきてすぐだって言うのに、少し面倒だな。
夜になってもハルナと夢の反発は収まらなかった。いつになく俺の横に張り付き離れようとしない二人に少し呆れてしまう程だった。
それは寝る時もおんなじで、体をピッタリと寄せていた。少し暖かくなって来た気温の中では少し暑く感じてしまう程だ。
朝、夜が明ける前に頭の中に警戒音がなり目が覚めると、寝ているハルナと夢を起こさないように家を出る。
こっそりと抜けた後で、刀の鬼がしらが自ら飛んで来る。
「なんだ、お前来たのか」
刀の鬼がしらから、犬が尻尾を振る感覚に似た感じが伝わって来る、刀の鬼がしらを腰に差し村の入口に向かい歩き始める。
(※)実際の史実、事実等とは一切関係ありません。




