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鬼ケ島伝説 鬼がしらと呼ばれた男  作者: 武田 健太郎


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97/126

97.

1人の若い男が俺の前に来る。手には槍を持ち、顔に赤い模様を塗っている。

「貴様がコイツラを捕らえたのか?」


その男の言葉に盗賊達がボヤッとした顔をして見ていた、まるで何を言っているのか分からないと言った顔だ。


「ああ、コイツラは俺の仲間を捕らえて売るつもりでいた。だから捕らえて斬り捨てるつもりだ」

「お前、何故俺達の言葉が分かる?」


やっぱりか、コイツラは蝦夷と呼ばれる地域の人達だ。馬の扱いが上手く、馬上での闘いに慣れきっている。

「お前が知る必要は無いと思うが、答えないと行けないか?」

「「「きさまぁ」」」


数人の男達が馬に乗り俺の前に来る。

刀を抜き、槍を構え何時でも斬りかがれる体勢だ。


「おい、俺は敵対する者には容赦は無い。生きてここから逃げ延びたければ武器をしまい帰る事だ」


「ふっ」

槍を持つ男が1人飛び出して来る、馬の動きに上手く合わせ一気に距離を詰め勢い良く槍が飛んでくる。


ザパン!! 「ぐぅぁ」


槍を持つ腕を切断するとバランスを崩し馬から落ちる。


「貴様ぁー」

回りの盗賊達が殺気立つ中、顔に赤い模様を塗った男が手を横に出す。すると全ての者が動きを止める。


赤い模様を塗った男が俺が捕まえた盗賊に刀を当て俺に言う。

「この盗賊達はお前の仲間では無いのでのか?」


「違う、仲間ならこんな縛ったりはしない。こいつらが俺の仲間を捕まえては売り飛ばそうとしていたから捕まえただけた」

「この盗賊達を我々に譲ってはもらえないか?」


「何故だ?」

「我らの家族、女供が拐われた」


女供が拐われた。つまりコイツラはそれを取り返す為にわざわざやって来たのか?

「かまわない、だがお前達でコイツラの言葉が分かる奴はいるか?」


「俺が分かる」

そう言うと1人の若者が出てきた、見た目がカメルンと良く似ていて思わず驚いてカメルンと口にしてしまった程だ。


「カメルン? いや、悪い。コイツラは好きにしていい。この辺りを縄張りにしている盗賊達だ」

「お前、お前の名前は?」


顔に赤い模様を塗った男が俺を睨みながら聞いて来た。

「俺は鬼頭 将だ。ここ、実田の者達からは鬼がしらと呼ばれている」


「鬼頭 将、鬼がしら。

俺はガンバラだ、お前達が陸奥と呼ぶ所で暮らしている。


一度だけ、お前の言う事を聞いてやろう。何かあったら尋ねてこい」

「良いのか?」


「コイツラを捕らえたのはお前だ。俺達はお前から獲物を横取りした事になる、だからその礼だ」


「わかった」


カンバラ達と別れ、森に入り集落を戻る。カメルンとアンが集落の近くで俺の到着を待っていた。


それから又兵衛を始めカメルン、アン、湯吉を集める。

「ルルイを縄張りにしていた盗賊達に、ここら辺にカメルン達の集落が有るとバレてしまったようだ。


集落を移動させる」


すると直ぐに又兵衛が言う。

「わかった、ならじいさま達に行き先を決めてもらおう、あのじいさま達2人は元々山の中に掘っ建て小屋を建てて狩りをしていた程だ。


実はこの辺の山々にも詳しい」


「そうなのか?」驚いて聞いてしまった。


「ああ」

じいさま達の一族は狩猟生活が主だったらしく、山の中を転々として暮らして来た一族らしい。


一つの所で獲物を捕らえ過ぎると獲物がいなくなってしまう為、あちこちの山々を歩いて渡った遊牧民のような生活を若い頃にしていたらしい。


どうりでな、やたらと山道を歩くのが早いわけだ。美雪や鷹が付いて来れないはずだよ。


それから皆んなで作った竪穴式住居をほぐして、山の中を丸一日程進んだ辺りに集落を作る事になる。


以前の場所よりも平たい場所が多く木々に囲まれた場所だ。そこに付くと竪穴式住居を建て、小屋を作り生活が出来るようにしてから、当初の予定通りにじいさま達とカメルン、アン達と別れて村に戻って来る。


帰りに一度ルルイの跡に出て様子を見ると、捕まった盗賊達の亡骸が捨てられていた。それから何度も馬で往復したのが分かる位に踏み固められた道が出来ていた。


帰りは美雪も鷹も元気で帰って来る。2人はコハルに会えた事が楽しかったのか、コハルの話しをしては盛り上がっていた。


村に戻り、落ち着くと何時もの面々が愛の屋敷に集まり報告会が開かれた。

「そうかい、ならあのじいさま達も喜んでいるな」

「ええ、愛様がよこしてくださって良かったです。山の神に愛された2人ですからね」


皆んな一様にじいさま達が上手く馴染んでくれている事が嬉しかったようで、ホクホクとした顔をしている。


それから湯吉による子供達の健康状態の報告や、猟の手解きを受けた事等を伝える。


「じゃあ、これが最後の報告だ。

ルルイを中心に活動していた盗賊達が完全に殺られた。


まぁ、捕まえたのは俺だけど」

「ちょっと待った。将が捕まえたのに、殺られたって言うのは少しおかしく無いか?」


ハルナが俺の言い回しを聞いて疑問に思ったようだ。

「ああ、捕まえた盗賊達は全部で30程。そこで蝦夷のカンバラと言う奴にあって、カンバラに全てを預けた。


そうして、皆んなで帰ってくる時に確認したら全員亡くなっていたよ」


「「「「はっ?」」」」


あれ? 変な事言ったか?



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