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鬼ケ島伝説 鬼がしらと呼ばれた男  作者: 武田 健太郎


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93/125

93.

桃太郎達が狼の対策に苦慮している時に、猟師のじいさま2人を連れてカメルン達の集落に移動を始める。


同行したのが伝次郎の妹の美雪と幸太郎の弟の鷹だ。

美雪も鷹も産まれて始めて村の外に出ると言うこともあったか、凄く興奮していた。2人は今12歳、新たな探検に胸を弾ませながらの移動だ。


あちこちの村が狼にやられ、安全な場所に移動する人の群も有りいつになく街道が混雑していた。


そしてカメルン達の集落の近くまで来ると狼の出没情報が出る。何でも相模の国付近にいる雉子藤の兵士達が多くやられたらしく、援軍を求めて多くの国の兵士達が右往左往しているらしい。


カメルン達がこもっている山に付くと人影も見当たらなくなる、どうにもこの付近の村々が特に被害が酷く、村人もかなりの数が逃げてしまったようで猪や鹿を始め、熊等も民家の跡地に住みついたりしている有様らしい。


しかし猟師のじいさま達は足腰が強いな、山道を歩くにしても美雪と鷹の方が先にバテてしまいじいさま達がおぶって2人を連れて歩いていたくらいだ。


集落に近づくとアンが俺に気付いて近付いてくる。

「頭領、お帰り」

「アン、みんな無事か? 狼の被害は出てないか?」


「大丈夫、又兵衛さんがいたからね。危険になる前に色々回避してくれて私達は誰もやられていないよ」

「良かったよ。

アン、紹介する。又兵衛と湯吉の代わりにみんなの面倒を見てくれるじいさま達だ」


「わしらは又兵衛の前に猟師頭をしていた。又兵衛ほどは動けんかも知れんがよろしくな」

「こ、こちらこそ」


アンが少し緊張気味に返事をする。

「アン、この子達はハルナと夢の仲間で美雪と鷹だ。歳は二人共に12歳だ。

この2人はハルナと夢と行動を共にする、これからちょくちょくと顔を出すだろうからよろしくな」


「そうなのか? 私達の集落では私とカメルンの他はみんな子供達だからな、間の子供がいると助かるよ」


アンに案内されて集落に入るとコハルがじいさま達を発見して走って来る。

「じいちゃん達。来たの」

「コハル、元気か?」

「コハル、元気にしとるか? わしらも少しお手伝い出来る事があると思ってな、ジジイ2人だがやって来た」


するとコハルの後ろにくっついていた小さい子供達達がコハルの後ろに隠れる。

「コハル姉ちゃん。この人達誰?」


一人の子供が勇気を出したコハルに聞く。

「この人達はコハルのじいちゃん達だ。これからみんなのじいちゃんになってくれる人達だよ」


みんな興味は有るのだが中々近づけ無いようで、コハルから離れようとはしなかった。


それから又兵衛と湯吉と合流する。

「おお、じいさま達も来てくれたか」

「ああ、わしらじゃ役不足かも知れんがな、何かの役にたつだろう」


「何を言っている、昔じいさま達に聞いた狼を追い払う方法が上手く行った。この集落はそのお陰で影響が無い」


この集落は。その言葉に少し疑問を覚えた。

「又兵衛、この近辺の村とかはかなり不味い状況か?」


「ああ、将は良い時に帰った。あの後から激しい攻防が続いたよ」

俺が一人、集落を抜けて村に帰った時にこの辺り全体的に狼達の群がたむろしていたようで、盗賊達の村の馬やら、女子供がかなりやられたそうだ。


だだ、この辺の村の人達はその盗賊の村を誰一人助けようとはしなかったようで、現在村の生き残りの数家族が村の中に籠もって人に見つからないような生活を送っているらしい。


「すると被害はその盗賊達の村だけか?」

「いや、カメルンが確かめたが下房の牟岐村がやられたらしい。

そこの農家頭が機転を利かして、屋根葺き用の材料に火を付けて何とか追っ払ったらしい。


だが、それが国に納める為の物だったらしくな、下総の国の頭領に呼ばれたらしい」


「そうか」

難しい決断だな。村が全滅するのを避けないと行けない、だからといって俺に何か出来る理由も無い。

それが愛の弟のショウジと言えど俺が出しゃばると纏まるものも纏まらなくなる。ただ心配は目が見えないコトリだな、シュウジがいないと大変だろう。


その日、又兵衛と湯吉がじいさま達と話をして様々な事を伝えていた。


翌日、鷹と美雪が体が筋肉痛だと言って体をさすっていた。ここの竪穴式住居はかなりねやすかったようで完全に熟睡していたみたいだ。

「ねえ、将兄。コハル元気にしてたね、ちょっと心配してたんだ」


「そうか、美雪から見てもコハル元気だったか?」

「うん、この所あんなに笑ったコハル見たこと無かったから。嬉しいかな」


それは、美雪だけでなく又兵衛や湯吉、じいさま達も同じ意見らしい。


正直にあれだけの事があってしんどいのには間違い無い、親と思い暮らして来た又左の両親を失った悲しみが癒えた理由でも無いだろうけど、幼い子供達の面倒を1日中見てると悩んだり、考えたりする時間が無いのだろう。


後は時間が解決してくれるのを待つだけだと思う。


大蔵村に戻る準備を進めていると頭の中に警戒アラームが鳴り始める。

勇者として得たこの能力って本当に便利だ、確実に不味い事が起きる時にはだいたい教えてくれる。


「又兵衛、カメルン、アン、コハル、じいさま達。集まってもらえるか」

「ああ」「なんだ?」


「何者かが近付いて来ている、かなり危険なやつだ。コハルは直ぐに回りの子供達を住居に入れて静かにさせてくれ。


じいさま達は子供達の守りを、又兵衛は俺達とじいさま達の連絡係をカメルン、アンは俺に付いて来るように」

「「「「わかった」」」」


カメルンとアンに弓矢を持たせやって来ている奴らの所に向い歩き始める、それはルルイが合った場所からこっちに向かって来ている。


集落から離れ身を潜める場所に来て観察していると、盗賊達が10名程やって来ていた。

「おーい、痕跡はあるか?」

「ねぇーな! 他はどうだー!!」


「こっちもねぇ」「俺達もだ!」

「探し出せ、カメルン達がこの辺で何時も消えるのは確かだ、あいつらを売ればある程度金になる。狼共にやられて大変なんだ何とか金にしないとねぇぞ」


「そうたぞ、金作らねぇと母ちゃん達に家追い出されるぞ」

「ガハハハハ、ちげぇねぇ」


そんなのんきな会話が聞こえて来る。

それを見てカメルンが震え始める、恐らく、ここにいる誰かにこっ酷くやられた経験があるのだろう。


声を潜めカメルンとアンに指示を出す。「カメルン、弓を構えろ。アン、お前もだ」

「わ、わかった」「うん」


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