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鬼ケ島伝説 鬼がしらと呼ばれた男  作者: 武田 健太郎


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91/131

91.

「ほらほら、そんな事は良いからあんた達も門馬の親方の所に行く準備をしなさい」


愛がまるで母親のように言う。

「え、ヤダ。将と一緒が良い」

「ハルナ!」


「私も、将が行かないならここから動かない」

「おい! 夢まで」


すると何故か愛が俺を睨む。


いやいや、俺は何もして無いぞ。

って言うか、昨日からこんな感じで俺も少し驚いている位だし。


はぁっと、腰に手を当てて愛が溜め息を付く。2人のこんな姿は今まで見ることも無かっただろうし、こんなふうに俺に甘えて、愛にも甘えてわがままを言うような事は無かったのだろう。


「将っ」

そう言って愛が俺を睨む。そんな睨まれましても、俺にもどうにも出来ないです。思わずそっぽを向く。


ハルナと夢は大蔵村きっての猛獣だ。それは自他共に認める程だし、そんな猛獣がここまで飼い慣らされた姿に愛が驚きを覚えたのだろう。


「しかし、まさかここまで将に懐いてしまうとは私達も思わなかったよ。

ハルナ、夢」「「ヤダ!!」」


夢とハルナが俺に抱きついて離れようとしなくなってしまう、無理矢理親元から引き離そうとしている時の幼子のようだ。


「まだ何も言って無いでしょ。

ほっとに。今日は将も門馬の親方の所に一緒に行くの、コハルの両親をおくり返した後で貴女達も話し合いに参加しなさい」


愛にそう言われハルナと夢が顔を見合わせる。

「ならしょうが無い」「しかたないね、愛姉。ちゃんと言う事聞くよ」


「ハイハイ。なら朝の支度をしてからおいで、丁度コハルの両親達も朝ご飯食べてる頃だと思うよ」


「ああ、何か悪いな」

「本当だぞ、将。これでも私はこの村の頭領だ」


ちょっと待て、全てが俺のせいか?

でもな、ハルナも夢も可愛いしな。許しちゃうんだよな。


たぶんだけど、物凄くデレデレした顔になっていたんだと思う。愛が物凄く不機嫌になって俺達の家を後にした。


その時「私だって男とイチャイチャしてた時だってあるわ」そう言って怒りながら帰って行った。


ハルナと夢と手短に支度を済ませてから、忠勝のおっちゃんの所に行く。丁度少し歳を取った感じの男女が家から出て来ていた。


その横で愛がその2人と話をしている、ハルナと夢が2人に挨拶をすると2人の男女もハルナと夢に丁寧に頭を下げる。


そして言う事はコハルの事だ。


‘’まだ信じられない‘’

“こんな事になって悔しい”

“何処かで生きているんじゃないのか”

“コハルに会いたい”

等々と愛に漏らしている。そしてこの2人は、遺体が会ったが顔が判別出来ない為、まだ何処かでコハルが生きてるじゃないのか。


そう言ってコハルを探して欲しいと、愛と忠勝のおっちゃんに頭を下げている。それをやんわりと愛と忠勝のおっちゃんが断っていた。


村の復興に時間をかけないと行けない上、こんなに荒らされては食べる物を確保するのに時間を有しないと行けない等、説明をしている。


その後、泣きながら歩くコハルの母親を男が支えながら村を出て行った。


それから俺と忠勝のおっちゃん、ハルナに夢、愛の5人で話し合いが持たれた。

最初は俺の要望だ。

「又兵衛と湯吉を村に帰す。その為に猟師のじいさまを数人、その集落に連れて行きたいと思っている」


その話しは概ね皆んなが了承した。


それから村の復興にかかる材料をどうやって確保するか等が話し合われた。

村の奥の山から竹や材木を準備して家を立て直す他、ある程度崖から離れた場所に家を建て直して行く事で話しがまとまる。


今回の攻撃で、どこの範囲まで攻撃が届くのかある程度の範囲でわかったらしく、今での家はそのままダミーとして置いて置く事に決まる。


それから、揉めたのは俺がカメルン達の集落に行くのに誰が一緒に行くか? と言う話しだった。


ハルナと夢は当然自分達が行くと主張、忠勝のおっちゃんはじいさまは足腰も弱い為に誰が背負ってやる必要が有ると主張、愛は自分が行って子供達を知る必要が有ると言い張る。


話し合いは平行線をたどる状態だ。

それが面倒くさくなり、話題を変える。

「所でここは、狼の襲撃とかは無かったのか?」

「狼? 無いよ」


愛を始め忠勝のおっちゃんやハルナと夢も不思議そうな顔で俺を見る。


「この村を出て直ぐに有る、又次や、ヤガルとタガルがいた村は全滅していた。


それからルルイの近くの村は狼を追い出す為に村を焼き払ったと聞く、そこから村人やら話は来てないのか?」


愛がキョトンとした顔をしつつも何かを思いだしたようだ。

「そう言えばコハルの父親がそんな事を言ってたね、行商に行ってた村が何か所狼の群に襲われて壊滅したって」


何か、狼の事でかなり大騒ぎしつつ帰って来た俺は何だったのだろうか。


すると忠勝のおっちゃんが話しを始める。

「だとすると、デンとユキは村に残す必要が有る。それとハルナと夢もだ、もし狼の群何かと関わるとしたらそれなりに強い奴じゃないと駄目だ。


そうなるとじいさまの護衛で付けれるのはデンの妹の美雪、ユキの弟の鷹位だな。愛様は村に残って他の村の人達の陳情を聞いてもらわない行けないでしょうね」


愛、ハルナ、夢の3人が仕方ない。そんな顔で俯いてしまう。



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