90.
実田の桃太郎達が狼達の討伐に奔走している間に一度俺だけ大蔵村に戻って来た。
又兵衛と湯吉のわかりになる人を連れていき、又兵衛と湯吉を一度村に帰す為だ。村に入ってから狼の騒動も有り2週間近くをカメルン達の集落で過ごしてしまった。
ただ、そのおかげでだいぶ集落らしくなって来て、子供達もかなり元気になって来た。
そして愛にアンが作った燻製肉を干した物も持って来て食べてもらい感想を聞く事にしたのだ。
何事も無いのを確認するように村の入口から入り、最初に愛の所に顔を出した。
「おや、帰って真っ直ぐ私の顔を見に来たのかい? 将、私に惚れたな」
「愛、くだらない事を言わないでもらえるか。俺はハルナと夢に今すぐにでも会いたい気分なんだ」
愛が冷めた表情で俺を見る。
でもしょうが無い、ハルナと夢とはほぼ一緒に過ごしている。飽きるんじゃないか? って思う位に一緒にいる。
だからだろう、2週間も会わないと寂しくて寂しくて仕方ない程だった。だからかも知れない、村に帰って来る時はルンルン気分で帰って来た程だ。
「で、何の用だい?」
愛が凄く不機嫌に用件を聞いてきた。
「又兵衛と湯吉を村に帰したい。その代わりとなる人を一人か二人連れて行きたいと思っている。誰かいないだろうか?」
「なんだ、そんな事か。なら、猟師のじいさまを2.3人連れて行くと良い。
後で声をかけておく、猟師だ足腰も丈夫大し山の暮らしになれている」
「助かる。それとこれを試して欲しい」
そう言うと干し肉を愛に渡す。
愛も燻製が物珍しいのだろう。燻製の干し肉を眺めたり、匂いを嗅いだりしてから口にしていた。
「将、これは干し肉だろう。なぜこんなに香ばしいんだ? それと血の匂いがしない、食べやすいぞ」
又兵衛が獲った獲物をしとめ、血抜きを行いその後カメルン達が捌いて燻製にしたのだと説明をする。
「将、その燻製ってなんだ?」
「木を細く砕いて小さな破片を作って、それを薪に焚べて煙を出す。その煙を肉に染み込ませるのが燻製だ、こうすると悪くなりにくく長持ちする」
愛が不思議そうな顔をして俺を見る。
「将、お前さん何歳だ? まさかと思うが私よりも年上なんて事はないだろうね?」
「勘弁してくれ、俺は見たままの歳だ」
愛が物凄く疑った顔で俺を見る。
「いや、絶対に将の方が歳上だ。だって見た目的にはもう歳上だもの」
何か、何が何でも俺を歳上にしたいらしい。面倒臭くなって話題を変える。
「どうだろう、この干し肉は物を交換したり販売したりしても問題無いと思うか?」
「まだ、難しいとは思うがこれ程食べやすい干し肉は貴重だ。どれだけ作れるかによっても変わって来ると思うぞ」
やっぱりそうだよな。ほんのちょっとの量じゃ商売にならない、かといって大量に作るには人手も無きゃ作る場所も無い。
カメルンやアン達の居場所が実田や実田の息のかかった盗賊達にバレると大変な事になる、そうなると別の方法を考え無いと行けない。
「将、今日はハルナと夢とゆっくりとしな。それで明日、門馬の親方の所においで」
「忠勝のおっちゃんの家にか、何かあるのか?」
「コハルの両親が一昨日やって来た。今、門馬の親方の所にいて明日の朝一で村を出る予定だ。
その後、話し合いを行う」
「わかった、ハルナと夢も忠勝のおっちゃんの所に行ってるのか?」
「ああ、手伝いが必要だろ。二人共一緒に住んでいたんだ、門馬の親方も2人がいた方が良いだろうさ」
俺が愛の家から出て、自宅に戻る時に、愛の使いが忠勝のおっちゃんの家に走る。
この日はハルナと夢を自宅に帰して愛のお使いで来た人が、忠勝のおっちゃんの手伝いをする事になった。
家に付いて、のんびりとしているとハルナと夢が走って家の中に飛び込んで来た。
「将、おかえり」「将、帰ったの?」
「ハルナ、夢、ただいま」
「「お帰り!!」」
そう言うとダイブして来た。本当にこの2人は可愛い。俺、こんな2人を残して元の世界に帰れるのかなぁ。めっちゃ不安だ。
翌朝、愛が俺を迎えに来る。
家に来たのを出迎えたハルナを見て愛が少し呆れた顔をする。
「ハルナ、昨日は相当可愛がってもらったみたいだな。
顔がツヤツヤしておるぞ」
「えっ?」ボッと顔を赤らめて手で顔を抑える、その顔の熱さに自分の手をみてしまう程だ。
「ハルナ、どうした?」
俺が寝床から起きて玄関にハルナを迎えに行く、そこに愛がいて少し驚く。
「愛、来てたのか?」
「ああ、もうみんな働いておるぞ」
愛が俺達を呆れたような顔で見る。
「ふぁ、愛姉。おはよ、今日は将を連れて行ったら駄目」
夢が起きて来て直ぐに俺に抱きつきながら愛に文句を言う。
その行動を見た愛が本気で驚いていた。
「あの夢が、完全に将に懐いた」
懐いたって夢は犬か猫か?




