9.
翌日、忠勝のおっちゃんの家の畑仕事を手伝っていると菅生の棟梁の使いが来る。
「門馬の親方。
菅生の棟梁より、将と言う若者に来てもらいたいと言付かりました」
「わかりました。直ぐですか?」
「出来るだけ早い方がよろしいかと」
「ハルナ、将を菅生の棟梁の所に案内しろ」
「ハイ」
不思議そうに返事をするハルナに案内されて村の中を進む。
奥に行くに連れて上り坂になっており、坂を登る途中から大きな神社が見える。
その作りは今の神社とからない作りで鳥居も真赤に塗られてある。
「ハルナ、ここは何を祀ってるんだ?」
「ここ? ここは良く分からないかな、私達が住むよりもずっと前からあるんだって。
何でも戦の神様を祀った社だって聞いてるけど」
「戦の神様? そうなんだ」
ハルナはこの神社に対しはて興味が無いのか先を急いで行ってしまう。
ハルナに付いて行くと一際でかい屋敷の前でハルナが止まる、その入口を護るように立つ男にハルナが声をかける。
ここが菅生の棟梁の屋敷か、大蔵村で一番偉い人だ言うのは本当らしい。
余りにでかすぎる屋敷だ。その壁の長さは半端無い。そのサイズからするとこの屋敷一つで、一つの町内が出来そうな程の広さだ。本当に広すぎる。
屋敷のでかさに驚いているとハルナに声をかけられた。
「将、行くよ」
「ああ」
そして門をくぐってさらに驚いた。屋敷は崖の目の前にあり、線のように細長い長方形の作りなっている。つまり、一つの町内が出来そうな程の広さでは無く、100m走が出来そうな程の長さの屋敷だった。
奥行きは本当に無く4mも有れば十分な造りだ。
しっかし、何でこんな家建てたんだ?そんな事を思いボヤッとしながらハルナに付いて行く。
通された部屋に菅生の棟梁がいて横に始めて見る男がいる。
この男は危険な男だ、そう直感した。異世界の国、グランバルト王国に有る国王直轄の部隊。国の暗部、アサシンだけを集めて作られた組織で国を脅かす存在を秘密裏に始末する為の組織がある、そいつらと同じ臭いがする。
俺の警戒をよそにハルナと菅生の棟梁はその男と話をし始める、ハルナもこの男は始めて会う奴ではないのだろう。
「将、紹介する。
この大蔵村に良く来てくださる行商のタンジさんだ」
「そうか、俺は鬼頭 将と言う。最近この村にやっかいになっている」
タンジがニコニコと俺を見る。
「そうですか、私はこの界隈で行商を行うタンジと申します。もう1人娘が来ているのですが間もなく来ると思います」
顔はいかにも大人しく穏やかな顔をしているが、その目は一度も笑っていない。
その後、何処の村で病人が出た。この村では新しく結婚した者が出た、等と当り障りの無い会話が続きタンジの娘と言う女が来た。
何処にでもいる可愛らしい感じの女の子だ。姿や立ち振舞だけを見るとハルナより余っ程モテる気がする。
「ネネ、おいで」「ハイ」
「紹介しよう、こちらが漁師の棟梁のおま・・・・・・・」
タンジの話しの途中で何時もの警戒音が鳴り出す、それと合わせ勇者スキルの索敵が自動発動する。
大蔵村に後1人、コイツラの仲間が潜り込でいる。場所は丁度俺の真上、天井と屋根の間、器用にそんな場所に収まって俺を観察している。
「さて、挨拶も良かろう。皆で昼でもどうかな」
菅生の棟梁の言葉で昼飯が配膳される。
そこに酒も付いていた。まぁ、酒を飲んでも毒耐性があるから酔う事が無いんだけどな。
俺は異世界で様々な耐性身につけた。精神異常耐性、猛毒死毒耐性、状態異常耐性なんかもある、俺が生きていればハルナ達は何とかなるだろう。
最初は普通に会話をして皆楽しく飲んでいた、その後ネネが酌を始め皆に酒を振る舞うようになる。
俺の前に来て持ってた徳利の酒が無くなり別の酒を持って来る。それは当たり前のように出して来たが、この屋敷の人間が一度も触っていない物だ。
その酒を見た瞬間、タンジが笑う。ネネとの合図は終わったようだ。
「将様、将様は蝦夷と呼ばれる地域から来られたとか。蝦夷とはどのような場所でございますか?」
ネネの話にハルナが興味を示す。
「私も知りたい。将は何も言わないから興味があったんだよね」
ネネが蝦夷と言った時のタンジがおもしろかった。一瞬真っ青になりネネを睨みつけるが、ハルナが話に加わると一気に顔色を戻し菅生の棟梁と何やら話しをし始めた。
蝦夷と言う言葉が何やらキーワードのようだ。
そしてネネの言葉で上に潜んでいる奴にも動きが有る、少し場所を移動して天井の隙間から目だけを俺に向ける。
「蝦夷か? 悪いが俺は自分達の住んでる所を蝦夷と言った事がない。お前達がそう呼んでいるのは俺が住んでる場所の事で良いのか?」
「蝦夷とはご自身達では呼ばれないのですね」
「ちょっとぉ。将、じゃあなんて呼んでるの。教えなさい」
やはりハルナの反応は少し強烈だ。おまけに酒に酔って少し絡んでくる。ハルナと話しをしているとネネが愛刀の鬼がしらに手をかける。
ガチャッ!! 「ハッ!」
鬼がしらを抑え、ネネから取り上げる。
「ネネ、どんな理由があろうと勝手に人の刀に触れるとは手付きが悪いな、やっては行けない事だ」
「申し訳ございません」
ネネの顔が青い。
「ちょっと、将っ?」
近づいて来たハルナの腕を掴み俺の後ろに引きずると空いた右手でもって、天井から降りて来た男の顔面めがけ鬼がしらを打ち抜く。
バゴン!! 着地と同時に頭を鬼がしらに打ち抜かれ、気を失ったのかそのまま倒れてしまう。
ネネが状況の把握が出来ていなく、辺を見ている時に後ろから袈裟斬りに鬼がしらを振り下ろす。
「ガッハッ!!」
いくら鞘が付いていると言っても、不意を突かれたネネが倒れ動かなくなる。その後、鞘から鬼がしらを抜く。
「タンジと言ったな、動くなよ。動けばお前達の未来は無いぞ」
「ふ、流石だ。蝦夷の妖術使い。」
タンジが逃げ出す算段を取っている時にスキル威嚇を発動。
頭に機械音がなり始める。
‘’スキル威嚇 Lv1を発動します‘’
「ヒッ!! ヒィ」
威嚇を受け、タンジが必死に後退りし始める。そこに鬼がしらを突き立てる。
「グァ−」
「約束通り、これでお前達の未来は無い」
俺の言葉を最後まで聞いたかは定かでは無いが、タンジがその場に倒れて気を失う。




