8.
菅生の棟梁や忠勝のおっちゃんの話しをどこまで信用してよいか、全く分からない内に宴が終わる。
菅生の棟梁は途中で帰っていき俺は又佐、幸太郎、伝次郎に捕まり良いだけだ酒を飲まされしまった。
翌朝、皆んなが寝てる中を抜けて村の中を見る。昨日は気付かなった物が沢山ある。
海には桟橋がかけられ10隻ほどの舟がとまり、三方をほぼ垂直切り立つ崖がおおっている。
崖と崖の間に道が有るようにも見えるが、俺がいる場所からは詳しい所まで見えなかった。
目の前に有る切り立った崖が気になり上まで登って見ることにしてみた。
正直にロッククライミング等はやった事がない、と言うわけで結界魔法の登場だ。結界魔法を交互に出して足場にして結界魔法の上に乗り新たに結界魔法を作る。その要領で崖の上まで来る。
崖の上に来ると凄く見晴らしが良かった。村を覗くと三方を崖に囲まれていると思ったが、反対側は崖と言うよりも小高い山のように見える。
そして、三方に道が有るのを発見した。しばらく村の中を散策するのも良いかも知れない、そう思いながらゴロッと横になる。
昨日の酒が抜けていなかったのか、眠くなってしまいそこで寝てしまったようで、目が覚めると太陽が真上にある。
かなり寝ていたようだ、腹も減って来て帰ろうと思った時、人の話し声が聞こえ来た。
「若、間もなくです。ここは人もいなく見晴らしが良くございます」
「分かった、今行くからそう急かすな」
「なっ? 貴様何者だ」
崖と反対側からやってきた男が俺に向い近づて来た。
「随分と失礼な奴だな、知らん奴に指をさされる言われはないぞ」
「き、きさまぁ」
すると腰に付けた刀を掴み構える。
仕方なく、起き上がり鬼がしらの柄に手を置く。
「雉子藤、やめよ!」
後ろから3人の男達が飛び出して来る。
「若、若はおさがり下さい。
こやつ、若に対し刀を構えております」
何を言ってるのかね? 異世界のグランバルト王国の貴族にもこんな奴いたな。
自分から喧嘩売ってきて武器を取って仕掛けて来たのに、誰かに見つかると国王の為と責任転換する奴。
「馬鹿者、刀を収めるのは雉子藤お前だ」
「へ?」
雉子藤と呼ばれた男がポカンとして若と呼ぶ男を見る。
「明らかにお前が構えた上で刀に手を置いた事でその男が起き上がり構えただろう、余計ないさかいを起こすな。
今日の目的を忘れたか?」
「は、失礼いたしました」
雉子藤と呼ばれた男が構えを解いて刀から手を離す。
若と呼ばれた男が俺を見る。
「そなたは随分と癖のない都言葉を話すな、都の出身か?」
「いや、違う」
「そうか、我々もここでのんびりとしようと思って来た、邪魔でなければくつろいでよいか?」
「いいんじゃ無いか、俺はもう戻る」
「そうか、名前を聞いても良いか?」
「俺は鬼頭 将。あんたは?」
「俺は時東 桃条 小太郎(トキトウ モモノジョウ コタロウ) 皆、桃太郎と呼ぶ」
「そうか桃太郎か、俺もそう呼んで良いのか?」
「かまわん」
桃太郎がそう言うが後のお付の連中は怒り心頭のようで俺を睨み付けている。
「じゃあな」
別に争うつもりも無かった事もあり、桃太郎達に声をかけて崖の前に有る結界魔法を使い村まで降りる。
それを見た桃太郎や雉子藤達が慌てる、そして崖を覗き込むように俺を見るがその時はすでに下の村に付いていた。
「なっ? あの鬼頭と言う奴はどうやってこの切り立った崖を降りたのだ?」
「若、蝦夷の一族に妖術を扱う一族がいると聞いた事が有ります。
もしや奴がその一族の可能性もございます」
「仕方ない、父上に報告だ。もし妖術を扱う蝦夷の者達があの鬼どもと一緒にいたりしたら面倒な事になる」
「では、明日の出征は延期なさいますか?」
「それは総大将である父上が決める事。攻めろと言われれば何時でも攻め落としてやるだけだ」
◇◇◇◇◇◇◇
鬼頭 将が今いる大蔵村を含む、関東一帯を実田の国(※)と言う。各地域を治める国が其々にあるが全て実田の支配下に置かれている為、総称して実田の国と呼ばれている。
その実田の国を治めているのが桃太郎の父親である時東 鎌田薫 只信(トキトウ カマタカ タタノブ)。
この時東 鎌田薫 只信は王臣子孫と呼ばれる者で、元々皇族である先代の太政官 時東 太助 小三郎の息子。
武と政治に長けていた事から盗賊や海賊が跋扈するこの関東一帯を任され、たった数年で関東一帯を平定した実力者。
時東 鎌田薫 只信は凄く戦さ上手で、この辺りにいた盗賊や海賊を抑え自らの戦力としてまとめ上げた人物。
関東一帯を支配した時東に対し、大蔵村の者達は時東家に忠誠を誓う事が無かった。そして何時までも言う事を聞かない大蔵村を時東は潰す事にしたのだ。
高々200人もいない村だ、潰してからどうするか考えた所で何も問題無い。そう結論付けた。
この大蔵村は渡来人達に先々代の帝がこの場所を与え自治を許可した、それもあってか実田の国を治める時東に忠誠を誓う気持ちがない。
大蔵村の者達が忠誠を誓うのはあくまでも都にいる帝に対してのみなのである。
その考えは、都から離れたこの場所を管理する立場の時東にとっては、かなり不都合な事でもあった。
そこで思い付いた。
大蔵村は鬼が住む場所であり帝及び都に謀反の疑い有る、そう吹聴したのだ。都のお上達も渡来人は体が大きく力強い者が多く、その強さを元々問題視していた。
そこに大蔵村の謀反の疑いが有りと言う時東による申告により、時の帝より討伐の命令が正式に降りた。
それから、実田の国の中では大蔵村と言う名前は使われ無くなった。代わりに付いた呼び名が鬼の住む島。
渡来人、金髪、白肌は人にあらず鬼である。そう実田の国の様々な場所に吹聴して回る。
そして大蔵村の隣の村の者達によって、ナタだけで熊を捕らえたり猪を捕らえる姿が目撃され事もあり、鬼住む場所と一気に国中に広がっていた。
◇◇◇◇◇◇◇
桃太郎達Side
「父上、報告申し上げます」
「桃太郎か、どうであった?」
「は、あの鬼達に蝦夷の妖術使いが応援に入ったようです。
本日、犬飼 小五郎 綱為(イヌカイ コゴロウ ツナタメ)、雉子藤 四郎 籠一(キジトウ シロウ カゴイチ)、猿山 胸吉 六郎(サルヤマ キョウキチ ロクロウ)を伴い、鬼の島を見下ろす崖に行きました。
そこで綺麗な都言葉を話す蝦夷の者と会いました。その男、あの高い崖を飛び降りピンピンとして鬼達と何やら話しをしておりました」
「「「なに?」」」
「落ち着け」
時東 鎌田薫 只信が周りにいる配下達を面倒臭そうに一括する。
「桃太郎。続けろ」
「ハイ。
あの男は腕も確かです、正直に我々4人揃った所で勝てなかったと思います」
「な?」「馬鹿な、若を含め我らの中でも特に優れた者達だぞ」
「静まれ、静まれ」
時東 鎌田薫 只信が不機嫌にそう言う。
「桃太郎、カマリ(※)を連れて鬼の島に潜らせろ。
いかに強い者と言えど所詮は人だ。昼夜を問わず攻めればいずれ勝てる。
だが、その前に如何程の戦力か調べろ」
「は」
(※)実田の国⇨実際の史実、事実とは関係ありません。
(※)カマリ⇨今風に言う忍びのような人達です。実際に平安時代にそう言う人がいたかは分かりませんが、登場して頂きました。




