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鬼ケ島伝説 鬼がしらと呼ばれた男  作者: 武田 健太郎


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7/9

7.

菅生の棟梁が静かに俺を見つめている。

その時、頭の中に危険を報せるアラームが鳴る。これも勇者として得たスキルの一つ、物理的な攻撃では無く呪術、幻術等の魔法攻撃を受けた時に防御と合わせ警戒を高める為の物だ。


このスキルによって異世界のグランバルト王国内での様々な貴族達とのトラブルや魔人族から受ける呪いや誘惑を回避してきた。


それをこの菅生 法明が使っている、優しい眼差しとは裏腹に物凄い呪術使いなのかも知れない。


「ふ、やはりババ様の仰った通りだ」

「では、やはり」


「うん」

忠勝のおっちゃんと菅生 法明だけがニコニコとは笑い始める。


「なぁ、将。

菅生の棟梁を怒らないでもらえるか?」

忠勝のおっちゃんが唐突にそう言って、俺の前に座り直す。


「菅生の棟梁は人の過去、現在、未来をよむ能力が有る。

ババ様と同じ月読みの神職。今、将る事を調べた事はわしも謝る、すまなかった」


そう言うと忠勝のおっちゃん、ハルナ、菅生 法明、又佐、幸太郎、伝次郎と菅生に付いて来た男達が俺に対して一斉に頭を下げた。


「将、お前に説明しないと行けない」

忠勝のおっちゃんがおもむろに話し始める。


ババ様とは約20年程前に亡くなった先代の月読みの神職だと言う。


そのババ様が有る予言をした。

鬼の使い手が現れこの村を滅亡から救う。その男と共に戦い一族の命を繋げよ、そしてその男の子共をもうけよ。そうすれば未来永劫に栄える。


そしてこの時、ここ大蔵村は消える。敵は数千の兵士を持って何度と無く攻めて来る、抗え。抗え。抗え。


鬼は黒い体に黒白銀の刃を持つ、強き男にのみにその体を預ける。

その男は鬼を従えた、鬼達のかしら。幾千の鬼達をも従える力の有る本当の武将である。


そして我ら一族は孤立させられたこの島から抜け出し、新たな土地に旅立。この世の人達は我らを鬼がいた島から出てきた者と恐れるだろう。

だが心配いらない、男に従え、男と共に生きよ、そうすれば未来が芽生える。と言う内容だ。


「わしと菅生の棟梁の2人が、ババ様からこの言葉を遺言として直接聞いたのだ」


何気なく忠勝のおっちゃんの話しを聞いてある事に気が付く。待て待て、菅生の棟梁ってどうやっても見た目が二十歳位だぞ、いかに病弱な体であっても歳は間違がわないだろ。


20年前に遺言を聞いた? どう言う事だ? 赤ん坊がその話を聞いて覚えていた、そう言う事か?

それと、やけに長い遺言だ。普通死ぬ直前にここまでの遺言は無いと思うけどな。


うん? まて、もっと大変な事を言ってなかったか? ‘’その男の子をもうけよ。そうすれば未来永劫に栄える‘’


いやいやいやいや、あり得ないでしょ。異世界のグランバルト王国でも俺は俺の操は守り抜いたぞ、ならここでも同じだ。俺の操は俺が守る!

そんな混乱の中で俺もやる事を理解する。俺は元の日本に戻る、俺がやる事はそれだけだ。


「なぁ、菅生さんに忠勝のおっちゃん。にわかに信じられない話を聞かされても俺も困る。

それと俺は元の、俺が住んでいた所に帰る予定だ。あんた達に長々と付き合うつもりはない」


「うん、それで良いよ。私達も将の為に出来るだけの事は手伝うつもりだよ」

「そう言う事だ将、今日は宴だ。菅生の棟梁、よろしいか?」


「かまわない、皆で楽しくやろう」

「おし、菅生の棟梁からのお許しも出た。


おい、マタ、ユキ、デン。お前達は将に食わせる美味い魚を獲ってこい」

「「「おお」」」


周りの者達が、何故か宴の準備に没頭し始めた。そして忠勝のおっちゃんの部屋の中で俺と菅生の棟梁の2人だけが、ポツンと残されてしまった。


「将、門馬の親方から何故お前さんが強いか、どこから来たか聞かれなかったかい?」


不意に菅生の棟梁からそう聞かれる。

「ああ、聞かれた。それがどうかしたか?」

「ババ様から、私と門馬の親方だけに伝わる言伝えがある」


それは、驚く内容だった。


「大国の大姫が悪の人から殺されそうとなる時、勇気ある若者が呼ばれる。

その大姫が勇気ある若者に強さを与え、従者の女が癒やしを与え。

長き命を持つ者が妖術を与え、清き心の持ち主の男が戦う術を与える。


勇気ある若者は何度も命を落とし復活を繰り返し、そしてやり遂げ、やがて悪の人を打ち倒し大姫を救う。


その勇気ある若者はやがてこの浜に打ち上げられる。

その勇気ある若者が我らの危機を救ってくれるだろう。その時は我ら総出で勇気ある若者を助けろ、そしてからなず勇気ある若者を家に返してあげろ」


ゴボゴボ。

辛そうに咳き込む菅生の棟梁の背中をハルナ擦る。


「この言葉はね。私と門馬の親方だけに20数年前にババ様から教えられた事なんだよ」

「ちょ、ちょっと待ってもらえるか。

菅生さん。あんたはどう見ても二十歳位に見える、そんな若い奴がどうやればその遺言やらを覚えていられる?  


20数年前だと、あんたは赤ん坊だろう」


俺の言葉にハルナが顔を下げてクスッと笑う。

「やっぱりそう思うよね。私はこんな見た目だけど門馬の親方よりも歳上なんだ。

月読みの神職は亡くなる直前まで体が年を取らないんだよ」


「はっ?」

俺の素っ頓狂な声を聞いた為かハルナと菅生の棟梁がクスクスと笑い出す。しかし、この話をどこまで信じれば良いのか? だが、ババ様と呼ばれた人は俺が異世界に呼ばれ、勇者のパーティーとして、魔人の王を倒した事を知っていた。


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