88.
カメルンの驚きをよそに穴を掘る、深さは約50cm半径が約2m弱だろうか。完全な円を描く。この円の四隅に柱となる4本の木を差込みその木を4本の枝で固定して行く、それから屋根を作り斜面の下側に向いて入口を作る。
その後は、この建物の回りを少し削り水の流れる道を作ると、大量の葦を持ってきて下から縦に積み重ねて行く。
出来たのが、良く写真で見たことが有る竪穴式住居だった。
「将、ここに床を作って子供達をここで寝かせる」
ここに子供達を? 何か意味があるのだろうか。
「なぁ又兵衛。ここを子供達に使わせるのは問題無いんだが、何の意味が有るんだ?」
「ここは、地面を掘って少し下がっている。夏は涼しく冬は暖かくなる。それと真ん中に竈門を置く、その煙で葦を燻してやれば虫も湧かないし雪が多い時はさらに便利だ。
将の作った寝床じゃ雪に耐えられない。だから同じ物を幾つも作って作り方を皆んなで覚えて行く」
「わかった」
その後、湯吉とアンが飯の支度を始める。食べられる野草を教えてもらい、その野草を沢山使い今日の晩飯が出来た。
それを見た子供達が皆ヨダレを垂らしていた。
「ネエチャン、今日こんなに沢山作ったけど俺達食べて良いのか?」
「良いよ、沢山お食べ」
「「「本当か!?」」」
「ああ」
「「「「「いただきます」」」」」
「ゲボゲボッ」
「ほら、大丈夫かい。沢山有るからゆっくり良く噛んで食べな」
コハルが小さい子供達の世話を始める。最初は警戒していた子供達もコハルに少しづつ懐いて来たのかご飯を食べていないコハルに自分の食べ物を分ける子供もいた。
「オネエチャン。あげる」
「良いの?」
「うん」
「有難う。パクパク。美味しい、皆ちゃんと食べようね」
コハルが少しだけ食べると子供の頭を撫でて残りを食べるように言う。
「「「「「うん!!」」」」」
久し振りに腹一杯食べた子供達が眠くなったのか一人、また一人と新しい竪穴式住居に行ってね始める。
添い寝をしていたコハルも一緒に寝てしまったようでアン一人が俺達の所に来た。
「なぁ頭領。コハルはどんな子だい? あんなに青ざめた顔してやって来た時は正直に驚いてしまったけどさ」
「コハルの事は俺が説明するよ。将や又兵衛よりも俺の方が良く知ってるからね」
湯吉がアンとカメルンにコハル事を説明し始めた。
「そっかぁ、コハルは私と同じなんだね。私もさ、父ちゃんが居なくて母ちゃんと旅の仲間とみんなで育ったの。
そしてある程度大きくなったら捨てられたのよ、盗賊から逃げる時に私一人を残して行った。
それも気が付いた時は誰も居なくてさ、まぁ運よく生き抜いたけどね」
「俺はアンとカメルンに出会えて良かったよ。二人共生き抜いてくれた事に感謝だな」
俺がそう言うとカメルンとアンが嬉しいそうに笑う。
翌日は3つの班に別れて作業を行う。
コハルと年長の子供達数名で他の子供達の面倒を見る、アンと数人の女の子達が湯吉から食べられる野草、茸、薬草まで様々な事を教わりながら食糧確保に動く。
残った者達で、竪穴式住居を作っていく。又兵衛が簡易的に作った木の鍬等を使い穴を掘りそこに木を立て住居を作っていく。
こんな作業をした事が無い子供達が多い中、手に豆を作りながらも手伝っていた。
最初の1週間は住居作りがメインになっていった。
その後は小さい子供達以外は皆、猟を行う上で必要な罠作りと弓矢の製作、槍の製作等を行う。
出来た罠を使い仕掛けて行く。
最初は猟師の又兵衛が行い、その後は皆で場所を決めて仕掛けて行く。
狩りは日中に罠を仕掛け、翌朝に確認しに行く、この日獲った獲物は鹿が一頭と猪が二頭いた。
こんなに大量に捕れる事も珍しいようで、かなり興奮しながら集落に戻って来た。
それからは手分けして獲った獲物を捌いて行く。仕留めた時に又兵衛が止めを刺していたようで捌いた後も血生臭くは無く以外に食べやすかった。
それから余った肉を燻製してから干して行く、燻製は又兵衛も湯吉始めて見たようでかなり驚いていた。
燻す時の煙が目立たないように暗くなってから始める事にして皆で先に晩飯を作り始める。野草以外にも肉等が手に入った為か、数日経つ頃には子供達の顔色もかなり良くなってきていた。
弓矢を作るのに必要な物が中々手に入らずに又兵衛が苦慮していた。
「又兵衛、何か必要な物は有るか?」
「ああ、将。悪いが一度材料になる竹とカラムシを捕りに行かないと行けない。カメルンにも聞いたが材料は少し離れた場所でないと取れないらしい」
「そうなのか? 行く人を選別しないと行けないな」
「それだがここの守りもある、まぁまる1日有れば行って帰ってこれるからそれ程注意は要らないと思うが」
「そうだな、まだ狼達の動きも気になる。誰を連れて移動する?」
「カメルンと補佐の男の子2人だな、それ以上は難しい」
「わかった、なら俺も付いて行こう。ここの守りはアンとコハルを中心にする、アンも弓矢を扱った事が有るらしい」
「なら、湯吉を置くか。体は少しよわいが機転も利いて獣の気配にも敏感だ。湯吉も弓矢は扱えるしな」
「わかった、なら3人には俺が持ってきた弓と矢、矢筒を持たせて置く」
「ほ? そんな物どっから持ってきた?」
又兵衛が不思議そうに俺の顔を見る。
又兵衛や湯吉にはインベントリは見せていない。その必要も無いと判断したからだ、一度寝床の住居に入りインベントリから弓矢と矢筒を取り出す。




