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鬼ケ島伝説 鬼がしらと呼ばれた男  作者: 武田 健太郎


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85/127

85.

コハルの表情は後悔や苦しさ、悲しさに溢れている。そして自分の行いで義理の両親が亡くなった事に対する悔しさが溢れていた。

「コハル、明日は湯吉と又兵衛も一緒に行く。でも俺も又兵衛も湯吉も一定の期間居たら帰って来る。」


「え? 私は?」

「コハルはその場所に残って俺達、つまりハルナや夢や俺の仲間の手助けをして欲しい」


「そ、そう。つまりまた捨てられるのね」

「捨てるつもりは無いぞ。コハルには大事な役割を担ってもらう予定だ、だいたい捨てるつもりならもうお前の首は体から離れている。」


「なら、ここで私を殺せ」コハルが涙目で俺を睨む。

「お前が死んでそれで終わるなんて簡単に考えるなよ、ここでお前が死んで喜ぶのは今回の事を考えた奴等だけだ。又左や又左の両親、コハルのお母さんは喜ばないぞ」


「お義父さんやお義母さんやあんちゃんを引き合いに出すなんて、卑怯だぞっ」

「なんとでも言え。コハル、お前の事は俺が預かる。お前の意思は関係無い、後悔しようが苦しかろうが関係無い。俺に付いて来てもらう」


「断ったら?」

「さっき言ったろ、お前の意思は関係無い。無理矢理連れて行くだけだ、舌かんで死ねるなんて簡単に思うなよ。俺の妖術はそんな簡単にお前を死なせやしないからな」


一瞬、コハルの顔が引きつるが、諦めたのか表情を無くす。しかし妖術って言葉は様々使い勝手がいい言葉だ。脅しにこんなにも効果があるとは思わなかった。

実際、回復魔法何かは知らないしな。確かインベントリの中に中級回復ポーションが何個か入っていたはずだ、後で確認しよう。ヤケを起こらせたら結構大変な事になるしな。


愛がコハルの横に座る。

「コハル、私も時々だけど顔を出す。私達は貴女を見捨てる訳じゃない、でもここの村に置いておくと貴女を守る事が出来ない。

ごめんね、コハル1人に全部押し付けて」


「愛様、愛様は関係無い」


ガタガタ!!


玄関の板戸が開く音がして玄関に向うと幸太郎が来た。

「将、来い」

「わかった」


「ハルナ、夢。俺は幸太郎とちょっと出かける。コハルの事は任せて良いか?」

「「うん」」


「将、間違っても捕まえた奴等を殺すなよ」

「愛、お前は俺を何だと思ってる?」


「お前は私達を守る為なら鬼にも簡単になる奴だ、コハルの話しを聞いて腹を立てていないわけが無いだろ」

「なんだ、バレてたか?」


「捕まえ奴らは生かして帰す、私らに攻め入ったらどう言う目に会うかをちゃんと伝えてもらわないな」

「わかった、この大蔵村の頭領は愛だ、愛の意見に従おう」


「なら良い」

愛の了承をもらって忠勝のおっちゃんの家を出て幸太郎に付いて行く。


そこは舟を止めておく桟橋だ。

良く見ると、その桟橋に3人の男が括り付けられていた。頭から大きな石がぶら下がり、上半身を使い何とか顔だけ海から出せるように踏ん張っている。


「なぁ幸太郎、あれは何をさせられてんだ?」

「ああ、知らなかったか。

あれな、ハルナと夢がお仕置きする時に良くやる方法だ」


お仕置き? 良くやる方法? なんだそれ!? 俺からしたらかなりの拷問に見える。ギリギリ海から口元がでる、そうなるように固定されているように見える。


体は下半身だけが桟橋に括り付けられ腕は後ろ手に縛られている。そして頭の辺りから漬物石よりもでかい石をぶら下げるように付いており、その重みで頭が海に入る。


だから上半身に力を入れて頭を上げる、だがその重さ故か直ぐに頭が海に落ちる。その繰り返しで何とか生き延びている状態だ。


どんだけ凄い拷問を考えたんだ?


幸太郎と一緒に伝次郎の所に顔を出す。

「将、来たか?」

「ああ、しかし凄い拷問を考えるものだな」


「これか?」

伝次郎が拷問を受けている3人を指さす。しかし、これを拷問と言わずになんと言う。その内力尽きて窒息死するぞ。


「これな、昔ハルナと夢が行水してる所を覗いた奴がいてな。その時あの2人がやったお仕置きだ。」

「は?」


ハルナと夢はなんて恐ろしい事を考えたんだ? 思わず震えが来る。

そんな俺を見た伝次郎が呆れた顔をする。

「将、今更だ」

「そうだな、今更だろう。俺もそう思うぞ」


伝次郎と幸太郎が何故か遠い所を眺めている、この2人も何かやられた事があるんだろうな。


「取り敢えず、愛がこの3人を生かして帰すって言っていた」


「ああ、なら引き上げるか」

「そうするか、この3人もハルナと夢を見ると卒倒するだろうな」


まただ、また伝次郎と幸太郎が何故か遠い所を眺めて現実逃避をしている。この2人に何があったんだ。


「フッ」

なんだ? 伝次郎が笑いながら俺の肩をポンポンと叩く。ちょっと待て、なんだその慰めるような眼差しは? すると幸太郎が俺をハグした。


そして少し涙が落ちたがそれをサッと腕で拭う。


お、おい? おい? この2人は何を知っている? 


だが、幸太郎も伝次郎も俺に何も語る事無く男達を簀巻きにして愛の所に運んで行く。


誰か俺の質問に答えてぇー!!

間違ってもハルナと夢に聞く事が出来ないじゃない、だって怖いんだもの。考えただけで震えが来る位にあの2人に聞くことが怖いです。


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