82.
おばさんと呼ばれた愛の顔を先に見てみたい気もするが、刀で刀背打ちして3人の男達を動け無くしてから縛り上げる。
すると、入口の奥で弓を構え愛の援護をしていた猟師のじいさま達が来て男達を連れて来てくれる。
愛を見ると普段と変わらない15.6位の女の顔をしていた。月読みの神職は亡くなる直前になって始めて年相応の顔付きになる、先代の菅生の頭領もそうだった。
思わず愛も老けてしまったのかと思って心配したがなんとも無かったようだ。
「で、こいつらどうするつもりだ?」
愛に聞くと、愛がハルナと夢を呼ぶ。
「ハルナ、夢。貴女達に処分を任せる。死なないなら何しても良いぞ」
「分かった、何か聞くこと有るか?」
夢が当たり前のように愛に聞く。
愛は黙って首を振る。
「ハルナ、海に行くよ」
「あれやるのか?」
「それが一番だろ」
「まあ、そうか」
2人は簡単な話しをした後でじいさま達に言って男達を連れて行った。それに付いて行こうとした所で愛に止められる。
「将、あんたは私と一緒においで」
「何か有るのか?」
「ああ、ハルナと一緒に居たら、出来る話しも出来ないだろ」
話も出来ないだろ、そう聞いてピンと来た。ハルナは優しくて真っ直ぐで、人を疑う事を嫌う性格をしている。そして騙す位なら騙された方が良い、私が傷ついても相手を傷付けるのが嫌だ。
そう言い切るのがハルナだ。だから村人の中に誰か内通者がいると俺が提言してもハルナがそんな事はない、そう言い張って収拾が付かない事が多々ある。
だが、今回俺達3人がいない事が何処かからバレて今回の事態を招いた、その事を重く受け止めているのだろう。俺と愛、忠勝のおっちゃん、又兵衛、湯吉の5人だけで話し合いが持たれた。
場所は湯吉の家。家の裏に小さな小屋がありその小屋に入っての話し合いだ。俺以外の人達は誰が犯人かは分かっているみたいだ、皆んな揃って口が重い。
「で、誰かはわかったのか?」
「ああ、すでに突き止めている」
「捕らえたのか?」
「いや、わしの家で当分預かるつもりだ」
「忠勝のおっちゃんの家でか? なんでまた」
「今回の襲撃でな、最初に家を壊された。裏の畑は被害は無かったが住む事は出来ないだろう」
又左の家は崖側にあって唯一、家の裏の崖側に畑を持っている。この村の中では唯一の家だ、だから直ぐに分かってしまった。
「つまり、又左の家族が内通者だったと言う事か?」
「又左の家族な、親戚の子供と一緒に住んでいる。その子が親戚の家と手紙何かを良くやり取りしてるんだよ、おそらくそれだろうと我々は思っている」
「他に怪しい奴はいないのか? 焦って間違えたら目もあてられないぞ」
「将、その辺の事は私から話そう」
愛が真剣な顔をする。
又左の家族は元々大蔵村に住んでいた人達だ。帝の食料何かを作るためにこの辺りに住み、野菜を作ったり魚を獲ったりしながら暮らしていた。
ある時、帝が急にここを渡来人達に明け渡すと言い出して、その発言の後からやって来たのがババ様と言われる月読みの神職や菅生の頭領を筆頭にした渡来人達だ。
又左の一族も渡来人の一族だ、それもあり帝からここに住むように言われ、何か有れば直に帝に報告するようにと密命を受けていた。
所がそれは先々代の帝の話しであって、現在は全く繋がりが無い。そう思われていたし本人達もそう言っていた。
実際、又左は全く関係無い上に大蔵村の三羽烏の1人に数えられ恐れられた存在だ。所が問題は又左の従姉弟だった、又左とは親子程も歳の離れた従姉弟でその女がある男に恋をした。恋した男は大蔵村にたまに来る行商の男だ。
いつしか2人は親密な関係になり、又左の従姉弟の女は村を飛び出した。
それは又左が産まれたばかりの頃の話しだと言う、それから数年が経ち女が村に帰ってきた。その時1人の女の子赤ちゃんを連れてきた。
それは行商の男との間に産まれた子供だと言う。女は男に付いて各地を行商して歩いている、幼子を長旅に連れて行くには行かないから預かって欲しい。
そう言われて又左の両親が子供を預かって育てて来た。別にその女とも仲が悪い訳では無く度々手紙が届いたり女が遊びに来たりしているらしい。
その預かった娘が、母親から色々と村の事を教えて欲しいと言われて定期的に手紙で村で起きている事を伝えているらしい。
「つまり、その娘が知らず知らずに俺達の動きや情報を相手に全て伝えている。そう言う事か?」
「ああ、将達が村を出た次の日に何時もの行商が来てな、仲間である母親の手紙を渡して、娘の手紙を持って行ったよ」
「そうか、それは誰から聞いたんだ?」
「その娘本人からだよ、驚いていたよ。‘’今日、皆家を出て海に逃げなさい‘’ 母親から昨日届いた手紙にそう書かれていたのさ」
愛がそう言って手紙を俺に渡す。
一瞬、読めるか疑問だったが翻訳スキルが文字を現在日本語に訳してくれてる。
『この手紙を見たら、直に海に逃げなさい。今日、崖の上から石が落とされる、あんたの家も狙われる。
近い内に私達が迎えに行くから、あんただけでもおいで。親子で暮らそう』
そう書かれてあった。




