81.
「頭領、収入って何だ? 食えるのか?」
アンが不思議そうに聞いてくる、どうやら販売するとか商売するとかそう言う概念が無いらしい。
「はは、違うよ。燻製した肉を売って他の物を買ったり、物々交換したりと言った事が出来るようになる。そう言う意味だよ」
「あ、なら。他の子達の着物を買ったりも出来るのかな? ほら、この子達の着物さ、実はその辺の家々から取ってきた物を縫ったりして見繕っているからさ」
「大丈夫、出来るようになる」
「なら頭領、早く帰ってきて。私達に色々と教えてちょうだい」
何かカメルンよりもアンの方が乗り気だな。
帰りはアンの案内で森を抜けた先の安全な場所まで送ってもらう、そこから大蔵村に帰る事にした。
旅の途中は大蔵村が恋しくて騒いでいたハルナと夢だが、実際に帰るとなると他にも行きたい所が多々でてくるようでもう少し居たかったとか、他の場所が良く見て回れなかった等の文句がで始めた。
そして大蔵村に到着する頃には少し足取りも重い感じだ。疲れも有ると思うけど、現実が待ってると思うとそれはそれで嫌なのかも知れない。
そして後少しで大蔵村と言う辺りで何か異変に気が付く。別になにが起きたわけじゃないが、何かが変だ。
そう直感したのだ。
通常の街道を使わずに逃げ道になっている山の中の獣道を進んで行くと大蔵村が見える辺りに来て誰かの家が燃えているのに気が付く。
その時ハルナと夢が何かに気が付いて身をかがめる。
「将、村の人達じゃない奴らがいる」
「何処だ?」
「ほら、あそこだ」
夢が指を指して場所を示す。
崖の上に獣の皮に着込んだ奴らを発見、何やら上空から物を投げ飛ばしている。
「俺が先に行く」
「え? 1人で行くつもりなの?」
「ハルナ、ここから村の入口に向かってくれるか。夢、夢とハルナは一緒に移動して入口を守れ。海は心配無いだろう」
「でも、あんな上から物を投げて来る奴らだぞ、いくら将でも勝てないだろう」
「心配するな。こう言う戦いは何度も経験した」
「わかった。将、信じて良いんだな?」
「ハルナ、俺を誰だと思ってる」
「はぁ。その自信が心配だと言ってる、将。無茶だけはするなよ」
「ああ、夢。頼んだぞ」
「ハルナ行くよ」「うん」
ハルナと夢が俺を見て少し不安そうにしているが先に動く。
獣道を少しづつ進み様子を見ると、燃えているのは又左の家族が住む家のある場所だとわかった。崖下に近く、家と崖の間に畑が有る家だ。
それを見て確信した、崖の上からでかい石等を投げ飛ばし攻撃していると。
それが分かると一気に獣道を駆け出す。
下り坂で勢いが付き速度が上がる中、走りながら身体強化をかける。そのままインベントリの中から昨日カメルン達と切り倒した木を取り出すと力一杯に崖上を目指し投げ飛ばす。
ブン!! 投げた木の幹が大きく放物線を作りながら崖上に突き刺さるのが見える。俺は走る速度を落とさないように結界魔法を張り続け崖上まで長い距離を走り抜けて行く。
そこには獣の皮を着込み藁縄の両端に野球ボール大の石を取り付け、振り回して下に投げようとしている奴らを発見した。
崖の上に登ると直に刀の鬼がしらを抜くと魔力を込める。
「ドラコンショット」
石を振り回す者達にスラッシュを放つ、不意を突かれて驚いたような顔をした者達の体が上下に別れる。
「だ、誰だ貴様!?」
奥に3人の人がおり藁縄に漬物石のようなでかい石を取り付けそれを振り回していた。
「お前達がここから攻撃して来たのか?」
「攻撃? 馬鹿を言うな。ただ、石を投げ飛ばしていただけの事だ」
「そうか」
縮地を使い真ん中に立つ男の目の前に来ると頭から一刀両断する。
他の2人は俺の動きがまるで見えていないのだろう、俺の姿を見失い振り回していた漬物石をあさっての方向に放り投げて前ばかり確認していた。
それから2人に近付き首をはねる。
やはり、俺達が村を出て旅にでたのが何処からとも無く筒抜けになっているのは確かなようだ。
先にそいつらを炙り出さないと全てが駄目になる、そう確信した。
その後、先に張った結界魔法を全て消し去り、新たな結界魔法を張って下まで降りてくる。
上から石が降って来ない事を伝えると村の人達が集まって来た、そして燃えてしまった家の片付けが行われる。
「将、お前は入口に行け」
「忠勝のおっちゃん。入口も何かあったのか? 今、夢とハルナが向かった」
「将、いま愛様が入口を守っている。行ってくれ」
「伝次郎と幸太郎は?」
「海だ」
「わかった。忠勝のおっちゃん、色々終わったら話しがある」
「ああ、言いたい事は分かっている。ハルナは呼ばないで話し合いをしよう」
家々の片付けを忠勝のおっちゃんに任せ入口に来る。すると、愛を先頭にハルナ、夢が脇を固め数人の男達と対峙していた。
身体強化をかけたままの状態で愛達3人の頭上を飛び越えて前に出る。
「ウォッ!」
俺が突然飛び越えて来た事に驚いて愛達と対峙していた奴等が尻餅を付く。
「おい、何のようだ?」
「だ、誰だてめぇ?」
尻餅を付きながらも俺を指差して文句を言う。
「俺は今、凄く機嫌が悪い。死にたく無いならこのまま立ち去れ」
「ひぃっ」
刀を首元に出され慌てて大人しくなる。
「将、悪いけどこの3人はそのまま捕らえてもらえるかい?」
「愛、どう言うつもりだ?」
「コイツら私を見ておばさんは帰れ、若い女を連れてこいって言いやがったの。若い女に沢山可愛がってもらわないとね」
愛が物凄く不機嫌にそう言い放つ。




