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鬼ケ島伝説 鬼がしらと呼ばれた男  作者: 武田 健太郎


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75.

異世界Side


ミューモとレベッカ達によって捕まり捕らえられた者達は、自らをダンマ子爵が派遣させた騎士団だと主張する。そして自分達に何かすればダンマ子爵が黙っていないと口々にそう話す、それはあらかじめ決められていた事のように淀み無く物語を話し続ける。


「なる程な、捕まったらそう言えと教わったのだな? 本当に姑息な奴らだ、反吐が出そうだ」


メルダリアが不快感を露わにそう言い放つ。捕まった者達が正直に素直に自分達の事を話すわけが無い。キトーとの旅の中でメルダリアは幾度となくその姿を見てきた、未だにメルダリアからすると理解が出来ない事ではあるが捕まった者達からするとこの状況から脱して、そして生きて帰った後にいかに自分が有利な立場になるか、その事だけに気を取られてしまい肝心な事を忘れている。


それは捕まった事。


つまり自分達が拷問を受け死の恐怖の中で知っている事の全てを話さないと行けないと言う事、敗北はそれ程残酷だと言う事、生きる事に希望を与えられ無い中で絶望する事、絶対的な屈辱を味わいながら死ぬ事すら自分の意思で自由にならない事、その恐怖をこれから味わうと言う事実を。それすら分からずダンマ子爵を悪者に仕立てようとする姿にメルダリアが嫌悪をあらわす。


このグランバルト王国は一枚岩ではない、本当に薄い氷のような脆弱さで表面上は保たれているが、少し潜れば国王派、貴族派で長年に渡りいがみ合っている。


貴族派の重鎮の一人が何を隠そうサンザリア辺境伯その人だ、かつては国王達から信任も厚く辺境守護の要として位置してきたサンザリア辺境伯は、その歴史の中で現国王の一族ではこの国は亡びる、そう考えるようになった。


そしてサンザリア辺境伯はこの魔人王との対戦を上手く使い現国王の失脚を狙った、所がキトーと言う異世界人が現れ自分達の計画をことごとく潰されてしまう。そして何の間違いか、このキトーと言う男は何を思ったのか魔人王までもを倒してしまった。


現国王の失脚を狙っていた貴族派はキトーの出現により衰退し始める、キトーが魔人王との対戦に邪魔と判断した貴族派の有力貴族の一部を完膚無きまでに叩き潰してしまったのだ。

それにより漁夫の利を得た国王派が勢いを付けて来た。


そこで起死回生を狙った貴族派が、狙いを定めたのが国王派のダンマ子爵だ。ダンマ子爵家は貴族派の筆頭であるサンザリア辺境伯領と接している他、他の貴族派達に回りを囲まれた場所(立地)にいる。


何よりもダンマ子爵は国王の学友であり親友でもあり国王の信任の厚い存在だ、そんなダンマ子爵を失脚させれば国王と言えど責任を負わないと行けない状況になる。それをきっかけに国王を倒し自分達の理想の国を作ろうと考えたのだ。


幸いにまだまだ混乱期、武器を集め人材を集めても誰も不思議には思わない、サンザリア辺境伯はそこにチャンスを見たのだ。


これがメルダリアが嫌悪感を出した理由であり、ダンマ子爵が奴隷商人達の元締めだとは言い切れないと判断し、領に攻め入らない理由でも合った。


「レベッカ、ミューモ。この捕まえた奴らは私が処理する、良いね」


レベッカが嫌そうな顔になる。

「メルダリア、まさかとは思うけど彼奴等が来てるの? ほっとに気配も何も感じない癖にメルダリアの側にいるよね」

「そうね、私から離れる事はほとんど無いわね。私が命令した所で聞かないものね」


メルダリアがそう言うと捕まえた者達を連れて建物の外に引き出す、すると黒子のような格好の者達が現れる。

「コイツラもお願い、わかった事があれば教えちょうだい」


「かしこまりました。先に捕まえた者達は全てサンザリア辺境伯の家の者でございました、それも最近になり集められた者達です。


何の為に姫を付け狙ったか等の理由は本当に知りませんでした。ですがサンザリア辺境伯からの指示だと言う事を今回始めて明らかに出来ました」

「わかりました。奴隷の件に付いてはどうですか?」


「関わった者はいません、ですがサンザリア辺境伯領内ではごく普通に売買されているようです。複数の者がそれを見ておりますし、数人は実際に奴隷を購入しておりました」

「わかりました、またわかったら教えて下さい」


「は、鳳凰様の方はどうなさいますか?」

「先にこっちを解決しないと何も出来ないでしょう。レベッカは獣人の国の宰相の娘、今獣人国と争いになればわがグランバルト王国は壊滅します、キトーのいないグランバルト王国はそれだけ脆弱なのです」


「かしこまりました」黒子達が姿を消す。


メルダリアがレベッカ達の所に戻る。

「レベッカ、貴女達を支援しているのは誰?」


レベッカがこれだけの奴隷達を保護して尚、これだけ普通に生活出来て安全を確保するにはそれ相当の力を持った者達がいるはずだ。

でなければすでに全員が捕まり奴隷となるか、死んでいるのか。そのどちらか、ダンマ子爵にレベッカ達を守る程の力があるとは思えないのが正直な所だ。


レベッカはメルダリアの問に答える気持ちが無いようで、ニヤッと笑い奥に行ってしまう。

そんなメルダリアとレベッカをよそ目に、ミューモが奴隷として囚われていた者達を回復魔法を使い傷の手当て等を始めていた。



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