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鬼ケ島伝説 鬼がしらと呼ばれた男  作者: 武田 健太郎


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73/129

73.

異世界Side


これはメルダリアが5歳の時に起きた事件だ。屋敷のメイド数人と何時ものように騎士団の訓練を見に行っていた時だ、乗馬の上手くない新人騎士が馬から振り降ろされてしまう、たが興奮冷めやらぬ馬はメルダリアに向かい突進して来た。


メイドが慌てふためいてメルダリアの前に立って庇うが、メルダリアは手に持った鉄の模造剣を使い突進して来る馬の頭を綺麗に打ち抜いた。


メルダリアからしたら馬を殺すつもりも無かった。ただ危ないから馬を止めようとしただけだった、所が打たれた馬の頭蓋骨は綺麗に割れ一撃で突進する馬を倒してしまった。


咄嗟に回りにいた騎士達がメルダリアを囲み、安全な場所に避難させた事で馬が亡くなった事を知らずに済んだ。

移動した後でメルダリアが「お馬さんに、叩いてごめんねって言わないと行けないね」そう御付きのメイドに伝えたのだ。その顔は反省しきった顔だったらしい。


その後メイドや騎士団は馬が亡くなった事を必死で隠し続けた、これは不幸な事故でありメルダリアは何も悪く無いと言って隠し続けたと言う逸話がある程だ。


メルダリアだけでは無く、実はミューモも強い。聖女等と呼ばれ神聖な姿を崩してはいないミューモだが、元はスラムの出身だ。


光魔法の恩恵を受け初級魔法から最上級の魔法まで扱う事が出来、尚且つ珍しい聖魔法までも使いこなす聖女で、国民からは戦う聖女として人気者なのだ。


通常、回復魔法を使う者はパーティーの後ろにおり安全な場所から援助したり回復させたりが主だ。

だがミューモは違う、特に盗賊等が嫌いで見つけるとたった一人で盗賊のアジトにまで殴り込みに行く位に強い上に気が荒い。


ミューモからしたら今回のような不意打ちのようなやり方が一番腹が立つ。だからだろうメルダリアよりも早く光の攻撃魔法を放ち集まった騎士達を倒し続けていた。


対峙していた騎士達が慌て始める。

メルダリアは仕方ないにしても聖女までがこの強さだ、一つの騎士団に劣らない程の強さを持つ聖女等見たことが無いのだ。


ミューモを人質に取りメルダリアに言う事を聞かせようと考えていた事自体が間違いだったと、対戦が始まってから思わされてしまっていた。


ミューモがが攻撃魔法を使い倒して行く中、取りこぼした騎士達をメルダリアが倒して行く。長らく共に旅をした仲、メルダリアとミューモは何も言葉も交わさないにも関わらず連携が取れていた。


そして、ここに来た騎士達が最も恐怖した事。それはミューモが張った結界魔法だ。

その結界魔法の為に、引くことが出来ず30名を超える数を準備したにも関わらず、ついに団長の男一人を残すまでになってしまった。


「さぁ、お前で最後だ。何か残す言葉は有るか?」

「ならば、皆と共に散るまで」


団長の男が覚悟を決めてメルダリアに斬りかかる、メルダリアが剣で受け止めると空いた手を握り団長の男を殴り付けて戦いを終える。


全てを殺してしまうと最終的に必要な情報が手に入らない。

ただ、そう思っただけの事だった。

ただ、騎士団長はあのメルダリアに殴られたのだ。1週間は首を動かす事が出来ず一ヶ月は体を動かす事もままならないだろう、手加減をしていても死なない事がラッキーだと思える程酷い状態になる。


「誰ぞ出てこい」

「は、お呼びでございますか?」


「この男をつないでおけ、目覚めたら目的を聞いて報告しろ」

「かしこまりました」


「相変わらずだな、いるなら参戦したらどうだ?」

「我らが出るなど姫に取って邪魔にしか成りません」


黒子のような黒い装束の者達が団長を連れて行く。それを見たミューモが嫌悪感を露わにする。


「メル、毎度の事だけど彼奴等は何処に隠れているの? ホッと気配も何も無く出て来られるのは嫌になるよね」

「奇遇ね、私も一緒よ」


この黒子の集団は国王肝入の暗殺部隊、アサシンを中心にレベルの高い者達だけが集められ組織された部隊。


その全てを知るのは国王ただ一人、いかに国王の家族と言えど誰もその詳細は知らないのだ。


村を出た2人が向かったのは過去にキトーが倒した獣人獅子族の女が根城に使っていた古い城だ。


相当古い作りの城で雨風が防げているのが不思議な位にボロボロの建物を寝床して、捨てられた子供達や戦いで手や足を失った者達を養っていた。


ただ、その方法が盗賊として活動だった事も有ってキトーに倒されてしまった。だが、とうの本人はキトーの強さに惚れ込んでしまったようで、何かとキトーにアタックしては結婚を断られていたのだ。


メルダリアとミューモが明方になってその根城に到着する。


不意にミューモがメルダリアを止める、するとメルダリアの足元に矢が飛んできて刺さる。


「私はキトーと共に旅をしたメルダリアだ。お前達の親であるレベッカに会いたい」


「メルダリアにダリアか? なにしに来た、ここはお前達がいていい場所じゃ無い」

レベッカの声は聞こえるが姿や気配は無い。


「我々は、鳳凰様の寝床に向かっている。久し振りにレベッカの顔が見たくてやって来た」


すると不意に前後を囲まれた事に気が付く。建物の奥から1人の男が出てくる、熊族だろう見た目だ。

「メルダリア殿とミューモ殿とお見受けしました。ここに何の用事でしょう、鳳凰様の所であればわざわざここに来る必要も無いでしょ」


「お前は、レベッカの配下の1人だったな。レベッカはキトーを含め私達と魔獣退治を行ったりした旅仲間だ。

例え短い期間でもその仲間を訪ねて来た」


男の後ろに誰かが来ると何かを言って消える。

「お入り下さい、付けられたわけではなさそうですね」


「感謝する」


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