71.
異世界Side
領主である男爵の勧めも有り、商会のキャラバンに同行して鳳凰の住む場所に向かう事にした2人は、商会の代表者に会いに来ていた。
「では、メルダリア様もご一緒に行って頂けると言う事ですね。
非常に助かります、実は男爵様に我々から強い冒険者がいないか相談していたのです」
商会の代表者が申し訳無さそうな顔でそう発言する。
メルダリアとミューモが顔を見合わせる。
「何かあったのですか?」
「ハイ、実は元獣人族の族長らしき人物が魔人族と獣人族からなる集団を引き連れて、途中の村々で暴れております。その強さは半端ではなく付近の領主達から派遣された騎士団も手を焼いている状況で、その村々に食料等が不足し始めている状態なのです」
「つまり、私にその族長達を成敗しろと言うのか」
「いえ、倒して頂かなくても良いのです。我々は各街の領主様から援助物資を持って行きます。その援助物資を取られないようにと、メルダリア姫の強さは今やどの国にも広がっております。ならばその族長達も滅多な事は出来ない考えております」
商会の代表者の話しを聞いていたミューモが何かを思い出したのか少し顔を引きつらせながら、商会の代表者に我々が同行してその対応を行う旨を伝える。
そして商会の代表者の場所を離れるとメルダリアにミューモが言う。
「メル、覚えてるかな? キトーに結婚を申込んだ獣人族達の盗賊団の事?」
「えっ!! 覚えてるよ。獅子族の子でしょ。可愛い子だよね」
「だから、その盗賊団ってこれから向う場所を拠点にしてたでしょ」
「あっ!! でも待って、あの子キトーに負けてそれから村の人達とも仲良くやってたはずだよ。
この間も村の村長からお父様宛に感謝の手紙が届いていたはずだよ」
「だからだよ。何か良くない事が起きたんだよ、あの子が負けたとか魔人族を庇って村々を逃げて回ってるとか」
「それは、不味いわね。
確かあの獅子族の子って獣人族の国王の側近の娘だよね。
ここで獣人族との対戦に発展したらグランバルト王国は大敗するわ」
「でしょ、メル。これは私達がやらないと誰も解決出来ない出来事よ、キトーの問題よりも先に解決しないと行けないわ。グランバルト王国がなくなったらキトーを呼び戻す事すら出来なくなるわよ」
メルダリアが頭を抱えてしまった。下手をすると満月の夜に間に合わない事が起きてしまうかも知れない。
実はメルダリアの親であるグランバルト王国の国王から秘密裏にある事を言われていた。
「良いかメル、キトーを確実に元いた世界に帰す。これは我がグランバルト王国と赤龍様と交わされた約束だ。
もし、キトーを返せないとなった時は我々の首でだけでは足りない。この世界の全てを赤龍様は消し去り、我々の魂を永遠の苦しみに合わせるとはっきりと言い切られた」
「お父様、それはどう言う事でございますか? 私はキトーさえ良ければ一緒になりたいと思っております」
「すまぬ、メルの思いは叶えてやる事が出来ない。我々はこの国の民全ての代表者だ、我らのわがままでこの世界を潰す理由には行かない」
そう言われてメルダリアがうなだれてしまった。それは魔人王を倒し凱旋した時に一番最初に父である国王から聞かされた言葉だった。
メルダリアは国王と赤龍が何を約束したかは知らない。ただ、キトーを元の世界に返す事でこの国が、世界が救われるならと自分の気持ちを押し殺したのだ。
商会のキャラバンに同行して移動が始まる。今回、護衛についた冒険者達はかつてキトーと共に魔獣退治を行った者達も幾人か混じっており、メルダリアやミューモ共面識が有る人物がリーダーとして動いていた。
「しかし、メルダリア様とミューモ様とまたこうやって旅が出来るとは思っていませんでした」
「本当ですね、駆け出しだったあの頃が少し懐かしく感じます」
「それでメルダリア様、キトーは別行動ですか? あいつがいると暇しなくて良い位に良く騒ぎを起す奴だったから、いないとそれはそれでさみしいんですが」
「すまない、キトーを始めタクテとダリアも別行動だ。我ら2人だと面白く無いかも知れないが勘弁してくれ」
「あ、いえいえ。
むしろ感謝してます。メルダリア様とミューモ様は兎に角冒険者に大人気ですからね。見てください、若い奴等がお二人とお近づきになりたくてウズウズしてる位です」
「そうか、悪いな。我らはこの旅が終わると正式に王女、聖女に戻る。簡単に話しが許されなくなる」
「ハイ、存じております。
それと我々で調べた族の情報です、メルダリア様からお聞きした内容でほぼ間違いが無いかと」
「そうか、それで騎士団の情報は?」
「ハイ、鳳凰様の居場所付近はダンマ子爵、アーム男爵、サンザリア辺境伯が其々に領地を接しています。
その内サンザリア辺境伯とアーム男爵は魔人族や獣人族に対し比較的友好的です。ただダンマ子爵は昔からの考え方の為か、未だに魔人族と獣人族を奴隷にしていると噂が絶えない方でございます」
「わかった」




