70.
異世界Side
(ちょっとの間、異世界のお話です)
キトーこと鬼頭 将を再度異世界に呼び戻し、元の世界(日本)に戻す為に奮闘する元勇者のパーティーの4人は、二手に別れ其々に進んでいる。
エルフ族のタクテと精霊族のダリアの2人は、赤龍の頼みを聞き魔人族と獣人族の子供達を連れて獣人族の村のメガタンを目指していた。
残った人族の王女メルダリアと聖女のミューモは、まだ赤龍の寝床に居てこれからどのようにするかを話しあっていた。
メルダリアとミューモが向かう先は鳳凰の寝床、付いたあだ名が死の草原。毒を持つ草花しか無い広大な草原の中に鳳凰の寝床が有る、その寝床は毒沼と呼ばれる沼池の浮島に有る。
浮島は特に猛毒を持つ色とりどりの草花が咲き誇るとても綺麗な場所で、鳳凰とキトー以外に浮島で生活出来る者がいないのだ。
ましてメルダリアもミューモもキトーと同じ毒耐性は持っていない。
キトーが持つのは死毒猛毒耐性、この異世界において最強毒と言われるヒュドラの毒ですら蚊に刺された程度にしか反応を示さない。その位の耐性が無いと鳳凰の居る寝床まで近付く事すら出来ないのだ。
普通、鳳凰に会うには死の草原の手前で鳳凰に祈りを上げるだけ。
祈りを上げていると本当に気まぐれで鳳凰が顔を出してくれる事が有るが、それ以外では近く事すら無く鳳凰と会った者はキトーを抜くとここ300年以上誰一人いないのが現状だ。
メルダリアもミューモもキトーと一緒に行動していて鳳凰に会うにはあったが、死の草原の本当に浅い場所であっていただけで、深い所まではとてもじゃないが入れないのだ。それをどのように鳳凰に会い、宝玉をわけてもらうかその為の話し合いだった。
だったと言うは、ようは解決する方法が無いのだ。メルダリアもミューモもこの死の草原に行ったのは確かだ、その時はキトーの毒耐性を付ける為のトレーニングであって、もっぱら死の草原の入口付近で行っていた。
ただこの入口付近にも、毒耐性を持つ事ができないと言われる程の猛毒を持つ草花が無い訳では無い、それは鳳凰のいる場所に人を誘うようにあしらわれた虹色の花。
その草花を見たことの無いミューモとダリアが、普通の毒草だと思い致死量以上の毒をキトーに与えたのだ。
それをたまたま見ていた鳳凰が助けたのが始まりだ。
キトーが目を覚ました際に、鳳凰の浄化の炎に天国を見たと言った事に鳳凰が本格的に興味を示した、そこで鳳凰がキトーの毒耐性習得の為に一肌脱いだ形だ。
キトーは本当に運が良い。
本来ならこんな事で鳳凰が来ることが無いし助けるとこも無い。たまたまキトーを見た時、キトーの魂がこの世界のものでは無く別世界の物だとわかりそれに最初は興味を持ったのだ。
キトーを助けた理由は単純で久し振りに来た別世界の人を見たかった、本当にそれだけだった。そこで助けたキトーが面白い事を言う、そこからキトーに興味を持って接するようになった。
「おい、何時までここに居るつもりだ? 私の寝床はそれ程に居心地が良いか?」
不意に現実に引き戻される声が聞こえる、メルダリアとミューモが顔を上げると目の前に赤龍が立っていた。
「あ、赤龍様」
「赤龍様、我々はあの死の草原を越える能力を有していません。何かお知恵をお借り出来ないかでしょうか?」
メルダリアが本格的に困り果ててしまい、赤龍に相談をする。
「知らんな。お前達は将に何をやらせて鳳凰と仲良くなった?」
「それは…」
メルダリアが言葉を詰まらせる、そんなメルダリアを見てミューモが代わりに説明をする。
「将は別世界の人間、その魂を見た鳳凰様が珍しがって将と仲良くなり我々も住処に案内して頂いたり、良くお話をさせて頂きました」
「フム、ならやりようが無いな。
死の草原の前で呼び出す以外に無いのではないか?」
「そ、そうですよね」
2人揃い黙ってしまうが、赤龍がそんな2人を寝床から追い出す。
「ほれ、ここから出ていきなさい。バカな者達が悩んだ所で結果は変わらぬ」
「「そんなぁ」」
嘆いていたメルダリアとミューモが気が付くとその時すでに辺境を預かる男爵家の屋敷の前にいた。
赤龍の寝床を追い出された2人は、仕方なく男爵の屋敷に入る。タクテとダリアが移動する際に協力をお願いしていた事もあり、そのお礼を伝え自分達も鳳凰の住処に向うと説明した。
「では、姫様と聖女様で鳳凰様の所に行かれるのてすか?」
「ハイ、次の満月に間に合わせたいと考えています。ここで止まるわけには行きません」
「そうですか。であれば我が領地から鳳凰様のいらっしゃる草原近くの村に向う商会がございます、護衛を兼ねて一緒に移動されてはいかがですか?」
「私が商会の護衛を行うのか?」
「あ、いえいえ。ただ現在勇者キトーを除けばこの国で一番強いのはメルダリア姫になります、姫が一緒に移動するとなると盗賊等は寄ってこないでしょう。
姫が同行すると知れ渡れば、護衛の冒険者達も安心するかと思います」
「まあ、わかりました。我々も女2人で移動するよりは何かと都合が良いと思います」




