69.
それから下房に向いて先を急ぐ。ここから先は高い山等は無く、湿地が多い場所を通らないといけない。
「将、ちょっと待って」
ハルナが俺達を止めると、林の中に入っていった。
「夢、ハルナが何をしに行ったかわかる?」
「分からない」
その場で待つ事数十分。ハルナが草花を持ってやって来る、小さい白い花が付いた草花だ。
「将、風を起こしたあの妖術使える?」
「急にどうしたの?」
「この花を乾燥させたいの。乾燥したら将の納屋にしまってもらえるか、これから行く先々でこの花見つけたら沢山取るから同じようにして」
「良いけど何に使うんだ?」
「ババ様から聞いたんだだけどね、蚊を殺す薬草なんだよ。家でもたまに煙出して使ってるやつだよ」
「了解」
しかし、イベントリやら風魔法やら結構便利に使われてしまうな。
ハルナが薬草を見つける度に足を止めて沢山の草花を取って来る。それを籠に入れ日に当てながら移動して必要が有れば風魔法を使い乾燥させて行く。
途中の村々で1泊させてもらいその後に牟岐村に付く、そこでショウジと言う男に会う。
顔立ちはハーフだ。白に肌に黒い髪、コバルトブルーの綺麗な目をしている。背は高く無く、体型もちょっとぽっちゃりとした感じだ。
そう、所謂おっさんだ。
愛の姉弟と聞いていたが全く似ていない気がする。まあ、愛も月読みの神職なんてしていなければ歳相応の見た目無のだろうけど。
「お前達か? 大蔵村から来たと言う奴は」
「ああ、神職の愛から手紙を預かった。愛の姉弟のショウジと言う人にこの手紙を渡して欲しいと言われてな」
ショウジが何やら面倒臭そうな顔で俺達を見ると家に来いと言い出す。
「おい、ボヤッとしてないで付いてこい」
ショウジに促され家に向う。家は倉庫を兼ねているのかかなりでかい家だった。
「おい、帰った。
愛と所の奴が来た、今日泊めてやれ」
「はぁ~い」
そう返事をした女性を見ると目が悪いのか、壁沿いに手を付きながら部屋を移動して来る。
俺達の前まで来るとキチンと座り挨拶をする。
それを見たショウジが文句を言うが、女性は楽しそうに返事を返す。
何やら用事が合ったのかショウジがまた家を出で行くる。
「ごめんなさいね。うちの人ぶっきらぼうだから驚いたでしょ。でもあんな態度だけど来てくれて嬉しいんだよ。
ごめんね、私コトリって言うの。目が悪くてねずっとショウジの家で住まわせてもらってるの」
「え? 結婚してないの」
ハルナが驚いて聞いていた。
「ショウジがね、俺と一緒になるといずれ不幸になる、だから結婚はしない。その代わり居いだけここ居て嫌になったら何時でも出ていって良いって言ってくれてさ。
でもね、こんな目の悪い私を匿ってくれるお人好しなんてショウジしかいないのよ。
私、流れ者だしね」
コトリと言った女が楽しそうにそう教えてくれる。愛が言った通りに少し捻くれているが良い奴かも知れない、その日の夜、コトリが晩御飯を作ると言うので手伝うと言ったが我々は台所から追い出されてしまった。
「おい、コトリの邪魔だ。お前達はこっちに来て座ってろ」
ショウジにそう言われ部屋に戻り座るとショウジが話を始める。
「今から独り言を言う。
明日、時東 桃条 小太郎様が下房を治める橘家の視察でここを訪れる。
お前達は朝一番でこの村をたて。
ルルイに向かうなら下野の国(※)に入って何処にも寄らずに行け、あそこは盗賊達の国だ。
普通の農家や猟師達がそのまま盗賊になる、間違っても泊まったりするなよ」
「何難しい話しをしてるの、ショウジ御膳運んでもらえる。私が運ぶとこぼしそうでさ」
「ふん、いつもの事だろ。そんな事しか出来ないから何時までも嫁の貰い手が無いんだ」
「フフ、良いの」
ショウジの文句もコトリに取っては楽しい会話の一つかも知れない。ショウジも何だかんだとコトリの事を面倒を見ているようで、段差の前に来ると手を取ってはしっかりとカバーしていた。
何故かこの2人を見ていると心が暖かくなって来た。
翌朝、ショウジから食べ物を分けてもらいコトリからオニギリを頂いてしまった。
「ふん、持つもの持ったら行け。もう来るなよ」
「ああ、有難う」
3人で頭を下げて村を後にする。
道中はハルナと夢はショウジの話しばかりだった。
あんなに優しくするならちゃんと嫁にしてあげた方が良いとか、あの言い方は良くない等。ショウジの前ではいえなかった事を全て吐き出すかのように喋り続けていた。
ショウジから教わった道を進むと別れ道に来る、どちらを通っても同じ下野の国に入るが場所がかなり違うらしい。安全なのは山道、田んぼ等がある場所に盗賊達の村々が有るようで行商人達も歩く事が無いのだとか。
元はタガルとヤガルの親であるオガルがいた時は、キチンと統制が取れていたらしい。そのオガルがいなくなるとそれまでオガルに抑えられていた盗賊達がやりたい放題になってしまい、ほぼほぼ誰も近付かない場所になったのだと言う。




