68.
翌朝、ハルナと夢と3人でツグハルの漁のお手伝いをする為に近くの川に来る、犬飼と猿山が村に来ると聞いて顔を合わせるのが面倒で川にやって来る。
ツグハルは川漁師で、前日から様々な仕掛けをして魚を捕らえる漁をしているらしい。
その仕掛けを一緒に取り中の魚を取ると籠に移していく、するとガヤガヤと何やら話し声が聞こえて来る。
川岸を見ると数人の男達が川にやって来る。
「汗かいたな、汗を流そう」
「そうだな」
ガヤガヤと騒ぎながら川に入り思い思いに体を洗ったり、汗を流している。
するとツグハルが舟を降りてその男達に声をかける。
「サッパリしたら一度川から出てもらえるか。今、仕掛け漁の最中だ。
余り騒がれると折角の魚が逃げてしまう」
「はぁ? 仕掛け漁?」
「貴様、我らの事を知らんのか?」
先に立つ男二人が騒ぎ始める。
ツグハルが近付いてさらに説明をするが聞く耳を持たないようで、ツグハルを蹴飛ばしたりとやりたい放題になる。
「おじちゃん」
倒れたツグハルを庇うようにハルナが間に入り、夢がツグハルの体を支える。
「おいおい、いい女だな。
こんな所で何をしてるんだ? 水に入って着物が濡れてるだろう、着替えを手伝ってやろうか?」
1人がハルナに近付いて来るのを俺が割って入る。
「おい、貴様何奴だ?」
「この女の夫だ。なんか文句有るのか?」
「だっははははは。
貴様が夫だと、おい聞いたか? こんな小僧が何やら理由の分からん事を言ってきてるぞ」
「かまいません、やってしまいましょう」
「「「「「そうだそうだ」」」」」
「俺は敵になる者には優しく無いぞ」
刀の鬼がしらを鞘が付いたままの状態で手に持つ。
ザザッ!!
男達が一斉に刀を抜く。
「俺は猿山 胸吉 六郎様のいなねっ、 ぶっ」
ガンッ!!
一番先にいた男が名乗りを上げている時に、顔を鞘の付いた鬼がしらで殴り付ける。殴られた男の顔が1回転して倒れた。
「お前ら、俺の女房達にちょっかいを出したんだ。どうなるか分かってるだろうな」
「や、やっちまえ!」
誰かが叫ぶと一斉に男達が来る。
俺をめがけやって来る男達をハルナと夢が殴り付ける。
グハーッ!! ブェッ! グァバッ!!
刀を抜いてやって来る男達を素手でハルナと夢が全て倒し終える、やられた男達のうめき声が聞こえて来るが気にせずに漁の続きをする。
漁が終えても起き上がれる様子の無い男達を置いて村に帰る。村に付くとオネがおり、ツグハルから魚を分けてさもらっていた。
「ツグハルさん、今日は悪いね」
「いや良いよ。前もって聞いてたからな、良い魚だけを残して置いた」
「おや、あんた達。まだ残っていたのかい? 早く出ないとまた彼奴等がやって来るよ」
「昨日のヤヒコと言う奴の事かい?」
オネの目つきが変わる。
「ヤヒコはあんなんでも一応は弟なの。余計な事はしないで村を出てもらえるかい」
「なら、そうしようか。これ以上ここにいてツグハルのおっちゃんに迷惑がかかるといけないしな」
「おっちゃん、一晩世話になったな」
「良い、兄貴によろしく伝えてくれ。
それと、ハルナと夢は幸せになるんだぞ」
ツグハルの家から荷物を取り出し村を出る、次の目的地の下房の方面に向い牟岐村に向かう。
村を出てしばらく進むとヤヒコと手下が待っていて、俺達を発見するとヤヒコを中心に道を覆うように俺達を取り囲む。
「おい、男。
貴様は許さん、昨日はオネのお陰で助かったが今日はそうは行かんぞ」
「お前さ、1人じゃ行動出来ない奴だろ。ツグハルのおっちゃんだけじゃ足りないか?」
「当たり前だ、俺が一番だ。何事に置いても俺が優先されないといけない。貴様ごときに女房が2人など不要だろ、俺がもらい受けてやるよ」
「お前、馬鹿だろ。
中身の無いやつに付いていく程ハルナも夢も安く無いぞ」
「おい、いい加減にしろよ」
仲間の男が俺の肩に手を置き文句を言ってくる、その男をハルナが殴り付ける。
「お前達さ、これ以上騒ぐならあたしらが相手をしてやるよ」
ハルナの声にヤヒコと配下の男達が動けなくなる。
大蔵村の三羽烏はこの近辺の村や町では凄く有名な存在で、その三羽烏が特に可愛がっているのがこのハルナと夢だ。ハルナと夢も三羽烏に引けを取らない強者だとこの辺りの村々にも知れ渡っている。
そのハルナが不機嫌に男達に文句を言うのだ、男達が恐怖で狼狽えてしまうのも頷いてしまう。
「俺が用が有るのはその男だ。お前達に用は無い」
ヤヒコが俺を指指す。
「なら対戦するのか?」
「当然だ」
ハルナと夢の2人を相手にすると負けると思ったのだろう、相手を俺一人に限定して来る。残りの男達が俺達を囲むようにぐるっと距離を取る。
「ヤヒコ、これで負けたらオネの言う事を聞いて大人しくしてるんだな」
「お前だけは許さねぇ」
「オラー!」
ヤヒコの刀をかわし顔を平手打ちする。攻撃をかわす度に右に左に平手打ちを何度も何度も入れる。
その内、余りに何度も平手打ちされた顔は、原形を保てない程に浅黒くなり。ヤヒコは顔を腫らし涙目になりながら膝を付いて負けを認めて悔しがる。
「ヤヒコ、オネの顔を立ててこの辺で許してやる。だが、次は無い。次は確実に命をもらう」
「ヒッ、ヒィ」




