67.
「ハルナ、久し振りだな」
「おじちゃん元気だった? 最近顔出さないから心配してたんだよ」
「悪いな。元気にしてるぞ」
ツグハルがハルナを見てニコニコして話す、その後夢を見て少し驚いた顔をしていた。
「夢か? 久しく見ない内に凄く綺麗になったな」
「え? そ、そう」
「おじちゃん、夢だけ?」
夢が褒められて自分が褒めなられ無い事にハルナが顔を膨らませて文句を言う。
「はは、相変わらずだな。ハルナも綺麗になってるよ」
ツグハルがハルナの頭を撫でながら言うと俺を見て少し警戒する。
「初めてまして、俺は鬼頭 将。ハルナと夢の夫だ」
「ああ、初めまして。
わしはツグハルと言う、忠勝の弟だ。よろしくな」
挨拶が終ると漁の片付けをしてツグハルの家に向う、村に入ると直に村の男達がツグハルの所に来て取れた魚と野菜や米を交換していた。
「ツグ、コイツラはお前とこの者か?」
「ああ、兄のことの子達だ。月読みの神職から祝福を受けた夫婦だ」
「ああ、今年珍しく祝福を受けた夫婦が出たって聞いたな。その者達か」
「そうだ。数日、俺の家に泊める予定だよ」
どうもツグハルの所に人が訪ねて来るのも珍しいければ、月読みの祝福を受けた者が来るのも珍しいらしい、ツグハルの家に付く頃には子供達をはじめ大人達まで群がって来ていた。
「すまないが、長旅の後だ。
今日はゆっくりと休ませてやってもらえるか?」
ツグハルが村人達にそう言って家の中に入る、それに合わせて俺達も家に入る。
「あれが鬼の子の娘達か?」
「案外可愛い子だな」
「ああ、もっと恐ろしい奴が来るのかと思ってたぞ」
等々、言いたい放題の感想が聞こえて来る。
「将、ちょっと手伝え。薪を持って来ないといけん」
「ああわかった」
ツグハルに付いて家を出て薪を両手に持てるだけ持って家の入口に来ると、集まっていた若い男衆が入口の隙間から中を覗いていた。
「おい、人ん家覗き込んで何してんだ?」
ツグハルの声に驚いて男衆が跳び上がる。
「ツグハル、そっちの男を俺達に寄越せ、男は男どうしで話をして友好を深めるのがいいだろう」
「止めとけ、ハルナと夢は大蔵村きっての強者だ。三羽烏を見てビビってる奴には勝てんよ」
三羽烏と聞いて顔色を悪くさせる男衆、過去に何か合ったのかも知れないな。
「いい、帰るぞ」
男衆の一番後ろにいてふんぞり返る男がみんなを引き連れて帰って行く。
「将、あいつが村の若い衆をまとめている。ヤヒコだ、しつこい性格だまた何かやって来るぞ」
「そうか、なら気を付ける」
ツグハルが俺を見る。
「兄貴に聞いた、お前さん三羽烏と対戦して圧倒したらしいな。あの兄貴が珍しく興奮して教えてくれたよ」
「忠勝のおっちゃんがここまで来たのか?」
「ああ、ちょっと前にな、菅生様の葬儀の件でな」
「そうか、その時は迷惑をかけた」
「いや、お前が悪い理由じゃない。むしろ死に水取ってくれたらしいじゃないか。有難うな」
その後、家に入るとハルナと夢がツグハルと懐かしい思い出話し等で盛り上がっていた。
夜、複数の人間が家を取り囲むように配置されたのを察知して、家を抜ける。
「将、1人で良いか?」
「ああ、それより二人ともツグハルを起すなよ」
「「うん」」
ハルナと夢の頭を撫でてから、家を出る。
「この村は物騒な村だな、よる夜中に武器を持って人んち訪問するのが作法か?」
ザザザッ。
「お前があの鬼がしらか? 実田の話は聞いて無いか」
「悪いが俺は田舎者でな、何の事だか知らないね」
刀を扱う男達は昼間にここに来て家を覗き込んでいたあの男衆だ、いくらか戦い慣れているのだろう、皆落ち着き払って俺に照準を合わせている。
「俺は菅生 法明の孫にあたる、名をヤヒコと言う。お前は?」
「俺か、俺はきとぅ」
俺が名前を言う時に後ろにいた奴2人が斬り掛かってくる。
「結界」ガキン!、ガチン!
後ろに結界魔法を張ると斬り掛かって来た刀を止める。
「俺が鬼がしらの異名を持つ男だ。
俺と対戦するんだ、みんな命はきちんと頂くぞ」
「ひっ、よ、妖術だ。本物だぞ」
集まった男衆がガヤガヤと騒ぎだす。
「おやめ!! 真夜中にお客様をもてなすような作法を教えた覚えは無いよ」
「ち、オネ。少し黙ってろ」
オネと呼ばれた女が俺の前に来る。
「お前ら、この私が斬れるのかい?」
かなり肝の座った女だ、そう思うとヤヒコとかなり顔が似ている事に気が付いた。
「私がこの村の顔役だよ」
「黙れ、親の跡を継いだだけだろう。調子に乗るなよ」
「ならこのまま待とうか。明日の朝一に犬飼 小五郎 綱為様と猿山 胸吉 六郎様が来られる。どうだい、この私を殺してあのお二人を怒らせるかい?」
「ちっ! 覚えておけよ」
「悪いね、私は頭が弱いんだよ。3歩も歩けば忘れるさ」
オネと言う女が馬鹿にしたように笑い手を振ると、男衆が悔しそうにその場を去って行く。
「なんか、悪かったな」
「良いよ、私らもよそ者が来るのが珍しいからね」
「明日、犬飼 小五郎 綱為と猿山 胸吉 六郎がこの村に来るのか?」
「まあね、定期的に顔出すよ。
面倒事が有るなら早めに出て行く事をすすめるよ」
「参考にさせてもらうよ」
オネと言う女が戻ると家に帰る、家に入るとハルナと夢が刀を出して何時でも出れる状態で待っていた。




