63.
伝次郎と幸太郎がひょろっとした男と頭のでかい男を捕まえていた時、俺は崖の上で初めて会う男と話し込んでいた。
「うわっ。脅かすな!! 何でこんな所に人が寝そべってんだ?」
「なんだ、うるさいな。いいだろう、俺は畑仕事が下手くそで嫁から外で休んでろって追い出されたんだよ」
山を登って来た男が目をパチクリとさせる。
「畑仕事が下手くそで追い出された? お前大丈夫か。そんな事言われるなんてその内嫁に捨てるんじゃねえか」
「う!」
マジか、やっぱりこの時代の人達はそうだよな。何をするにも畑仕事が出来ないと生活出来ないもんな。
「ああ、悪い。そんなに落ち込むな。俺も言い過ぎた、誰もこんな所にいないからなちょっと驚いて口が悪くなっただけだ」
「いや、いいよ。本当の事だ」
そんなより取りをすると男が俺の横に座る。
「俺な、実田の街で猟師をしてんだ。畑を持つ事も出来ねぇからな取ってきた獣と野菜や米なんかを交換してもらうんだ。
でもよ、ここ最近は実田が騒がしくてな、米や野菜なんかを当主達が全部持って行ってしまうんだよ。
お陰で食いパッグレてしまってんだ」
そう言うと男が何故か干し肉を出す。
「これよ、熊の肉を酒に漬けてから干したもんだ。俺達猟師の必須の食いもんだ、おめぇも食え」
「そうか、有難う」
そう言って猟師の男から干し肉をもらい噛む、硬くしなるような肉を良く噛みながら食べる。
「そういやぁ、お前さん何処から来たんだ。俺も朝早くから登って来たけど誰とも会わなかったぞ」
男が何気なく聞いてくる。
「俺か? 適当に来たから良く分からん。この辺の山を道が無い所を来た」
そう言って適当に誤魔化す。
「ふうん」
男も興味なさげに返事を返してくる。
この男は猟師じゃない。
それは直に分かった、又兵衛もそうだヤガルとタガルも弓矢を持ち歩く。
基本的に弓矢と灘をセットで持ち歩き、罠を仕掛けたりしながら自分達の名張を隈無く見て回るのが基本だ。
所がこの男は刀を背負い、罠に使う物なんかを持たずにいる。そして何よりも足だ、猟師達は常にスネに布を当て枝や動物から足を守る為だ。
だが、この男の足はスネを出している。山を登ってきた時に付いた真新しい傷も見られる、そうなるとこいつがメンベか。
「所でお前は何と言う? 俺はこの崖の下の村で厄介になってる鬼頭 将と言う」
「は? お前が鬼頭 将?」
男の顔が変わる。突如警戒して刀に手を触れ睨むように俺を見る。
「貴様、どうやって俺がこの崖の上に来ることを知った。雉子藤が言ったようにお前が妖術使いか?」
「雉子藤? そうか、するとお前がメンベと言う奴か。
雉子藤からは何かと大蔵村に近付くなと言われていたタガルとヤガルがわざわざやって来たのが不思議だったんだよ」
「貴様、雉子藤とも繋がりが有るのか?」
「いや、敵対してるしな。繋がりは無い。
ただ、雉子藤がタガルとヤガルの事を本気で心配していたのは確かだ。それと自分は桃太郎の配下だと言いきった。
そうなるとあの2人は帰る場所が無いだろう、そんな2人をお前達が利用したのか?」
「確かに俺がメンベだ。だが、俺の事を知ったからには生きていては困る」
背中に背負った刀を抜く、それは大太刀と呼ばれる位の長さが有る。
そんな長い物を軽々と抜いてしまうとは、見た目にそぐわずに力持ちなのかも知れない。
「鬼がしら」
家に刀を置いて来たのを思い出して呼び出す。
俺の刀、鬼がしらは何処にいてもどんな状態でも俺の手元にやって来る、元々ドラゴンだった性質もあるようで、自分より強いと認めた者に絶対の忠誠を誓う、だから呼べば何処だろうと何をしていようとやって来るのだ。
左手を軽く開き待つ事数秒。
ブン!! パシっ。
左手で鬼がしらを捕まえると刀を抜く。
「お、お、おま。ば、バケ、バケ、バケも、モンだ。」
メンベが俺の事を見て尻もちをつく。地面にへばり付いて動けないのか、震えてしまいそのまま動かなくなる。
仕方なく、インベントリから縄を取り出しメンベの手足を縛ると担ぐ。
メンベを担いだまま、結界魔法を使って崖の下まで降りる。その突拍子もない行動にメンベが白目を剥いて気を失っていた、下に降りてからタガルとヤガルがいた空き家に来るとタガルとヤガルがいなくなっており、辺りを見渡すと幸太郎がひょろっとした男と頭のでかい小さい男を担いで帰って来ていた。
「将、悪い。俺達が来た時にはタガルとヤガルが殺られていた、そしてこいつらも逃げたしていた状態だ」
「そうか、忠勝のおっちゃんと他の漁師の人は?」
「大丈夫だ。何かの眠り薬を飲まされたんだろう」
「なら良い」
「それでそいつがメンベと言う奴か?」
「そうだ、愛の言った通りになった。適当にぶらついていたら出会ってしまったよ」
幸太郎が捕まえて戻って来た男達を再度縛ると其々別々の家に入れて隔離する。
伝次郎が忠勝のおっちゃん達を見て回り何も問題無いことを確認した上で、俺達の所にやって来た。




