61.
当時の帝の決定を持って大蔵村に渡来人達の多くが移住、それに合わせ実田を支配する為に沢山の兵士が京の都から送られて来る。
その時、一大勢力を誇り実田を支配していたのがオガル達の一族だった。
馬に乗り馬上から攻めるオガル達に京から派兵された兵士達はことごとく敗れてしまう。
それをどうにかする為に任されたのが時東の一族だった。京の都では右に出る者無し、そう言われる程の武人として名の通った時東 鎌田薫 只信の祖父達が徐々に実田を支配。
そして時東 鎌田薫 只信の時代になると大きく動き出す。雉子藤の一族がオガルの一族を手懐ける事に成功、オガルの一族と実田の国でルルイの街を徹底的に破壊したのだ。
その後は京の兵士がルルイの辺りまで定期的に回り、蝦夷の侵略に備えている。
丁度その頃だろう、蝦夷の地で勢力争いに敗れ逃げて来た真北 辰之助達を助け、自らの部隊としてカマリを創立したのだ。
そして行ったのがカマリを使いオガルの一族を討ち取る事。あれだけの戦力を持つオガル達がいつ、自分達に刃を向けるか分からない。
「一度裏切った者は2度裏切る事がある」
時東 鎌田薫 只信がそう言ってカマリを使いオガル達の一族全てを抹殺したのだ。
つまり、同じ蝦夷の一族が同族を裏切った。であれば何かあれば我々を裏切るだろう、只信がそう考え不安の芽は早い内に潰した方がいい。そう言ってオガルの一族全てを潰す事にしたのだ。
カマリの棟梁 真北 辰之助はルルイの生き残りであるメンベ達を使う事を考えた、メンベをそそのかし酒好きのオガルを上手く誘い出し闇討ちした。
カマリ達はメンベ達を上手く使い、オガルの一族の特に優秀な者達から闇討ちしていき、司令系統が無くなった所を見計り犬飼の一族と猿山の一族と連携をしてオガルの一族全てを葬ったのだ。
唯一、逃してしまったのがタガルとヤガルの2人の子供達だ。
だが、子供達2人で何が出来る訳では無いだろう。そう言うと捜索すること無くタガルとヤガルを野放しにしたのだ。
この時、メンベはカマリの者達からある話を聞く。メンベ達がいたルルイを完全に破壊したのは時東 鎌田薫 只信であると、メンベはその時に初めて自分が利用されている事に気が付いたのだ。
そこからメンベの復讐が始まった。普段は時東の一族や実田の国に忠実であるかの如く働き、報酬と情報を得て仲間と武器を集めていた。
そしていずれは時東 鎌田薫 只信の首を取る、そう決めていたのだ。
「愛、ちょっと待ってくれ。
今の話を聞いて何故、大蔵村が京の都や実田の国から狙われているのか、それは分かった。
何でメンベは愛を狙ってるんだ? そこの意味が良く分からない。わざわざ愛を襲って何の意味がある、何故そんな危険をおかす必要が有るのかが分からない」
「まぁ、普通に考えればそうだよな。
でもね、月読みの神職はこの辺りではかなり人気が有る。
畑仕事の始める日を予測したり、稲作の始める日を時期を予測したり、雨の降り方を予測したりとかね、兎に角農民だけじゃなく、その町々の棟梁や都に仕える重臣達だってわざわざやって来る。
だからだよ。実田の時東の一族に言われて月読みの神職を殺した、そんな噂が立てばそれで良し。
実田や時東達は支配しているはずの地域の兵士達や豪族、家臣達からも狙われる事になる。
国を潰すのは簡単だよ、領民みんなが敵になれば良い。それだけで国は潰れてしまう」
愛がそう言うが言う程簡単には行かない気がする。それに愛の奴は何故ここまで落ち着いて入れるのか、それも不思議だ。
だって自分が狙われているんだぞ。
「まぁ、愛が言いたい事は分かった。それで俺はここに残れば良いのか?」
「いや、その必要は無い。
だいたい今日は夢とハルナと農作業を行う予定の日だ。
将はぶらぶらと村の中を散策していれば良い、月読様が将の所にメンベを導く」
「そ、そうですか」
俺の所にメンベを導くって何? みんな俺の事を妖術使いだって恐れるけど、俺からしたら愛達の方が怖い。だってここまで正確に先の事を示してくれるなんてあり得ないもの。
どんなに優秀な異世界のシャーマンだって無理だぞ。
それと不思議なのはここまでわかっていながら自分達の運命を変えようとはしない事だ、ここまで正確に未来予測が出来ていながらなぜ自分達の未来変えないのだろうか?
俺が余程不思議そうに愛をみていたのか、良く分からないが愛が笑い出す。
「将、不思議か?」
「あ、ああ。
良くここまで先々が分かるのに何故変えようとしないのか、それが分からない」
「変えてるぞ。でも、どんなに変えても変わらない物がある。人の嫉妬と敵対するのもへの執念だ。
我々だって出来るだけの事をして子孫を残そうとしたさ。でも、それでも我々が消える運命だけは変わらない。
だから、将にかけるしか無い。それが今の私達の結論だ。
それよりも早くハルナと夢の間に子供をもうけろよ、別に1人じゃなくても良いんだぞ。ハルナも夢も二、三人は欲しいって言ってるからな」
「ちょっと待て、俺はそんなに何年も間ここにいるのか?」
「それは誰にも分からん。遠い国の大姫達がどれだけ頑張るかだけだ。
分からんから1人でも多くの子供達を作れ。
なに、ハルナと夢で足りないなら私と子供を作っても良いぞ。歳は上だが体はまだまだハルナと夢に負けない位に若いからな、どうだ将? うん?」
「そ、それは勘弁してくれ。ハルナと夢で精一杯だ」
「何じゃつまらん男だな。父の菅生 法明等、10人位のおなごを相手にしておったぞ。
だから、意外とこの近隣の村や町に私の兄弟姉妹がいる」
「一緒にしないでくれ」




