60.
その日、そのままタガルとヤガルがいる空き家の前で伝次郎、幸太郎と3人で過ごす。
伝次郎と幸太郎から又佐の子供の頃の話しなんかをずっと聞いて過ごした。
夜が開けると忠勝のおっちゃんが来て、俺達と交代で捕まえた4人を見てくれる事になる。
俺は2人と別れ家に来るとハルナが黙って朝ごはんを出してくれる。
朝飯を食べていると夢が来る。
「将、おはよう」
「おはよう」
「愛姉から伝言が合った。一度寝てから顔出して欲しいって」
「分かった。先ずは飯食ったら寝るよ」
「うん」
夢じゃなくハルナが返事をする、夢は寝れなかったのか腫れぼったい顔している。
「2人は昨日寝れたか?」
「ムリ」「駄目」
そう言うとハルナと夢が抱きついて来る、その勢いに負けて後ろに倒れて頭を打つ。
ドンッ。「おっ!」
そのまま、布団も敷かずに3人で目をつむり寝てしまう。起きるとハルナと夢は出かけていた、一人で起きて愛の家を訪ねる。
「愛、済まない。だいぶ待たせたな」
「いい、それよりも捕まえた奴等をどうする?」
「分からん、昨日の夜に来た奴はメンベと言う奴の手下だった。
それにその内の一人は特殊な技術を持っている」
「特殊な技術? それは将と同じ妖術か?」
「いや、かなり特殊だけど違う。おまけに効く奴と効かない奴の差が激しい技術だ。
狙われたタガルとヤガルは物凄く利きやすいんだよ」
「そうか」
愛が何か考え込んでいる。
「で、今日俺を呼んだ理由ってなんだ?」
「ああ、忘れる所だった」
そう言うと愛が手紙のような物を出す。
「これは?」
「お告げだ。時々な声に出すこと無く、私の体を使いこうやって文字で教えてくれる事がある」
そう言って渡された手紙を読む。
“弱くずるい人が神の使いを殺さんとやって来る。ルルイの里を奪われ、家族を失い、仲間を失った男。
遠い国から来た男が弱い男を倒す、でも大切なニ羽の雛が亡くなる。
紐のような男と2つ頭の男は姿を消す、だが鬼となった力強い男と氷のように冷静な男に捕まり、その2人は命を落とす”
「愛、これはこれから起きる事で良いのか?」
「そうだ。因みに弱くずるい人はメンベで間違い無いと思う。
ルルイの里は蝦夷の街が合った場所だ、メンベはそこの出身。その街を攻め込んだのは元々ルルイの街と対立していた山賊の王と呼ばれたオガルの一族だ。
オガルも蝦夷の民だ。ただ京のお上達とは上手くやっていた一族でな、その絡みでルルイの街を潰したのは確かだ」
「そうか」
「ああ、メンベは今だに京の都に反旗をひるがえそうと頑張っている」
「そうか、でも不思議だな。
ルルイを潰したオガルがそのメンベの面倒を見ていたんだろ? メンベはそのオガルを倒した。なら、復讐は終わっただろう」
「そうでも無い」
メンベ達がいたルルイの街は現在の福島県の会津地方に有る割と大きな街で、京の勢力との繋がりもある街だった。
行商等の往来も多く、京の都の情報も沢山集まる場所で蝦夷の人々や京の都人達との交流がある場所でもある。
そこを徹底的に潰しにかかったのが、実田の実行支配を目論む京のお上達だ。
蝦夷の人々との戦いの拠点として実田を有効活用しよう考えたのだ。
京のお上達はいつまでも京の実行支配をが出来ない蝦夷の地域とそこに住む人々を疎ましく思っていた。
そして蝦夷に攻め込む為の手筈として実田を支配し、海賊や山賊等を兵士として使う事を考えた。
最初は蝦夷の民からも疎外されていた渡来人の一族を上手く取り入れ、手駒にする事を考えた。
渡来人の一族には古くから月読みの神職と呼ばれる指導者がいた、その月読みの神職を上手く使いこの辺りを治めるる事を考えた。
所が、月読みの神職の人気が高まり、崇める者が増えるとお上達が慌てだす。何時しか月読みの神職がこの京の都に代わりこの世界を支配するのでないか? そんな疑心暗鬼に襲われる。
そこで考え出されたのがルルイの街を潰し京の情報を蝦夷に行かないように遮断する事。その後、月読みの神職が蝦夷の者達に襲われていると嘘の情報を流し、月読みの神職とその一族だけを京の都に移送して管理する事。
その総仕上げに蝦夷の地域に攻め入り実行支配を行うと言う事だ。
それで先ずは月読みの神職と特に能力が高いと言われる渡来人達の一族をまとめて、大蔵村に住まわせる事から始める。
実田は元々湿地が多く海も近い場所で京の都からすると放置しても良かった場所。そこにあえて渡来人達を住まわせた。
そこは海賊や山賊が多く京の兵士が良くこの実田の辺りを通る際に襲われる事も良くある場所だ。それを理由にして海賊や山賊との取り引きを良く行っているルルイの街の商人達を潰し、実田にはびこる海賊や山賊を討伐する事を考えたのだ。
時の帝は月読みの神職に幾度となく救われた事がある。重臣であるお上達から、月読みの神職たち渡来人に住む場所を与えればより帝に忠誠を誓うだろう、そう言い大蔵村に住ませる段取りを取った。
そして、大蔵村を守る目的と銘打って一番邪魔なルルイを潰しにかかった。
ルルイを潰せば安全に蝦夷に侵略出来る、蝦夷の地域を平定すれば誰も逆らう者はない。
そうする事で大陸、当時の朝鮮半島や中国大陸の国にも負けない国を作る事が出来る、そう考えていた。




