59.
歩く音が静かに響き渡る中、向い側の家に潜んでいる伝次郎と幸太郎の2人が殺気立つのが分かった。
それでも冷静に慎重に来た者を見極めようと息を潜めている。
砂を踏むような音が一定のリズムを守って歩いているようだ。すると突然話し声が聞こえ始めた、足音は一つ。最初は独り言かと思ったが全く違い話をしている。
「なぁ、この辺だよな」
「ああ、この辺だ」
「どの家だ? 適当に全部入って違ったら中にいる奴を殺せば良くなくいか?」
「馬鹿な事を言うな。メンベからも2人を連れて来いって言われてるだろう。余計な事をする余裕はない」
「ちっ。それが面倒だ。
どうせ大した事がないんだろぉ、やっちまえば良いんだよ、何を恐れているのかね。ここ村のやつらは鬼の末裔なんて言われてるのに、何であんな面倒な双子の命を助けたんだろうな? だって全く関係無いだろ、おかしいやなぁ」
「殺したら情報が手に入らないだろ。情報は戦いを左右する大切な物だ」
「あ、はは。またメンベと同じ事を言われたよ」
「だからな。お前、ちゃんと見習え。これからは情報と情報操作だってメンベも言ってたろ」
「で、お前らなにしに来ている?」
「なにしにって決まっているだろ。面倒だけどメンベに頼まれてタガルとヤガルを取り返しに来たんだよ。ほっと面倒でしょうがない。
でも、メンベが言うにはあの2人はまだまだ使えるって言ってたしな」
「そうそう。でも何処にいるのか分からないだよな、簡単にわかる方法無いもんかね」
「ん? で、俺達誰と会話してんだ?」「だよな、俺も不思議に思った。お前一人二役やってのか?」
「阿呆だろ」
俺が手を上げて合図を送ると伝次郎と幸太郎が出てくる。
「将、こいつらは手加減要らないな?」
「伝次郎、一応生かしておけよ」
「将、今の俺達にそんな約束は出来んぞ」
「おい、幸太郎まで。
まぁ、普段冷静な伝次郎も我慢の限界だろうしな」
月明かりに照らされて伝次郎と幸太郎の姿が見えると、やって来た奴が2人を見て驚愕して震えてしまっていた。
伝次郎も幸太郎も身長は2m近くあって物凄く筋肉質だ。無駄な肉が無い体付きをしている上に、野生の猫科動物と変わらないしなやかさがある、その上見た目が恐ろしい。誰だってビビるよな。
その時、雲の切れ間から月灯りが差し込んできた。その月灯りに照らされるように辺りが明るくなるとやって来た奴の姿が見える。
1人は背の高い細身のひょろっとした男で、その男がまるで子供のような身長で、体と同じ位に頭のでかい男をおんぶしてやって来た。
その2人の余りに異形な姿形に驚いてしまう。
「なぁ、やっぱり俺達を見て変な目で見てきやがる」
そう背負っている男が言う。
「でもや、しかたねぇのは確かだ。お前は細い上に足ばかり長くて、どう考えても変だもの」
「俺じゃねぇぞ。それを言うならお前だって顔だけやたらデカくて自分で歩けもしないだろ、やっぱりお前が変なんだよ」
そう言うと何やらもめ始める、すると俺の頭の中に警告音が鳴り始める。
恐らく事やって来た男のどちらかが洗脳や催眠に関するスキルを持った奴だ。
所謂、洗脳や催眠術は技術だと聞いた事がある、洗脳は基本的に時間がかかるし催眠術は緊張した状態では効きにくい、リラックスした状態が良く催眠術にかかりやすいらしい。
戦いの中で仲間内でもめると言うパフォーマンスをして、緊張を解いて意識をそらすのが目的だろう。
だとすると、この洗脳か催眠術を止めさせる為に必要な事は、やっぱり敵を攻めるのが一番だな。
家の入口を押さえる留木を手に取り、ぐちゃぐちゃと騒ぐ男達の頭を打ち抜くように留木を打ち下ろす。
狙いを定め男を背負っていた、ひょろっとした細長い男の頭を打ち抜く。
ゴン! バキ!! 「べキャッ!」
留木が折れて男が膝を付いた後に前のめりに倒れると、背負われていた男が地面に落ちる。
落ちた頭のでかい小さい男をそのままに、俺に打ち抜かれた男の頭に幸太郎の蹴りが入る。
すると突然変な泣き声が聞こえてくた、まるで赤ん坊のような泣き声に、俺も伝次郎も幸太郎も辺りを見渡してしまう。
その存在が分からずに辺りに、くまなく辺りを見渡すと伝次郎がある事に気が付く。
「おい、うるさいぞ。黙らないとその首をへし折るぞ」
「ひぃっ、ひぃっ」
頭のでかい男が、泣き止んだ後の赤ちゃんのような呼吸をしながら俺達を見る、体と変わらない程のでかい頭と顔のせいで立つこと自体が出来ずにいる。
顔を地面に付け、こっちを見ると警戒の機械音が最大限で頭になる。
ガシ!
思わず顔を踏みつける、すると警戒音が止まる。もしかすると目を使い何かしているのかも知れない。
「伝次郎、その男の目を塞げ」
「了解した」
伝次郎が漁に使う籠を男の頭にかぶせて先を縛る。魚を入れておく籠なのか、罠に使う籠なのか良く分からないが頭のでかい男にすっぽりと入る。
すると頭のでかい男が大人しくなる。
ひょろっとした細長い男と頭がでかい男と其々に縛ると、タガルとヤガルがいない空き家に逃げられ無いように固定する。




