57.
「さて、俺は常に戦いの中に身を置いて来た。お前達とは戦い方も流儀も違う、俺はお前達のルールに従うつもりはない」
藤堂 昇太 茂一が刀を構える、他の5人は何もすること無く茂一の後ろで腕を組んで立つ。
「俺は京の都でこの人ありと言われた藤堂 昇太 茂一である、この私一人で貴様を倒す」
「そうか」
何時に無く、頭の中が冷たくなるのを感じる。刀の鬼がしらに魔力を通すと、ブンと小気味良い音を立て振動する。
茂一が斬りかかるのを受ける、力で押し返すと茂一が尻餅を付く。その瞬間を逃がさずに突きを茂一の顔に撃ち込む。
「ガッ ガァ」
刀を抜くと痙攣したまま茂一が前に倒れる。一応、人族でのレベルがMAXだ。力だって幸太郎よりも強い、茂一に負ける要因が無いのも事実だ。
「「「「なっ?」」」」
驚く4人を待つ事無く斬り捨てる。
戦いの最中に腕組みをして見ている方が悪い、俺にはそうとしか思えない。
菅生の棟梁の屋敷を出て降りると幸太郎が一人で震えている。
「幸太郎」
声をかけた所で俺も止まってしまった、そこには又佐が亡くなった状態で寝かされていた。
「将か?」
俺に声をかけてきたのは又兵衛の猟師仲間のじいさんだ。
そのじいさんに話を聞くと、又佐は背中に深々と矢が3本も刺さった状態でじいさんの家に助けを求めて来た。
矢を抜き、手当てをしたが矢の刺さった所が悪かったようで目覚める事無く、事切れてしまったと言う。
「じいさん、又佐を看取ってくれて有難う」
「いい、ただ順番が逆だろう。
わしはそれが悔しくて仕方無い、マタもまだまだ若いんだ。
将、次何かあればわしらを使え。わしらは実田に逆らわなければ何とか生き延びる事が出来ると思っておったが、もう辞めだ、わしらの力を見せんと何時までもやって来るだろう」
「ああ、その時は力を借りるよ」
その後、伝次郎が駆けつける。その時幸太郎が何も言わずにその場を離れてしまう。伝次郎が不思議に思った時、又佐の遺体を見つける。
「将?」
「ああ」
伝次郎の声にならない叫びが村の中に木霊する。
その後、茂一達が大蔵村に攻めてきた事は伏せて、菅生 法明が亡くなった事が公表され葬儀が執り行われた。
その事に一番ホッとしたのが実田を治める時東家と熱海の一帯を治める平山家だ。
万が一、藤堂達が月読みの神職を殺したとなれば、領民の心が自分達のから離れ領地を捨てて出て行かれる所だった。
実田を治める時東家もここ大蔵村を討伐するに当たり月読みの神職は捕らえ京の都に送り、京で管理する予定だったのだ。
だから、その計画を潰されなかった事に胸を撫で下ろしていた。
元々、ババ様と呼ばれた月読みの神職の前の神職が先々代の帝の窮地を救った。その褒美としてこの大蔵村に渡来人達の村を作り住まわせる事にしたのだ。
先々代の帝はお忍びで良くこの村を訪れ、ババ様と呼ばれる月読みの神職が代替わりする時も直接祝福の言葉を述べた程だ。
だがそうなると面白く無いのは京の都のお上達だ。いずれはこの大蔵村を潰さないと行けない、そんな思いに駆られる。
そして武力に定評が合った時東家がこの大蔵村とその近辺を守ると言う名目で関東の地を任されるようになった。
結局はお上と呼ばれる上役達が自らの保身に走り、月読みの神職と、新たに月読みの神職となる可能性が有るものを潰そうとした事がこの大蔵村の騒動の発端だ。
そして葬儀には忠勝のおっちゃんを始め、ハルナや夢達も手伝いで参加していた。
その葬儀には身分を隠した雉子藤 四郎 籠一の姿と、平山家の棟梁の姿も合った。
平山家の棟梁に関しては、自らの領地の代表者を複数連れて来ていた。
葬儀の後、雉子藤と平山が其々に新しい神職の愛と挨拶を行った。
雉子藤との挨拶は直に終わり、雉子藤が帰る。その後、平山家の棟梁が来た時に愛が平山家の棟梁を止める。
「平山家のご当主ですね、先代菅生 法明からも良くお話を聞いておりました」
「いえ、私共も菅生様には何時もお世話になっております。特に二十数年前におきた流行り病の時は大変な御所力を頂きました、あれが無ければ我らはすでに家をたたんでいた事と思います」
「とんでもございません、神職として当然の事。それよりも土産を準備しております」
愛がそう言うと女中に声をかける。
「誰かある。平山様を案内してもらえるか? 今、将が部屋にいるはずだ」
「ハイ、では私が」
女中に付いて移動する平山の後ろに家臣が付いて行こうするのを愛が止める。
「申し訳ございません、これは平山様お一人にしかお渡し出来ません。他の皆様はここでお待ち下さい」
「「「しかし」」」
「良い、このような日だ。何がある訳でも無い」
「「「は」」」
平山の家臣達が皆一様に頭を下げ部屋の隅に移動して座り始める。
そして女中が案内したのは少し奥まった部屋だ。
「鬼頭様、愛様より平山様をお連れするように言われて参りました」
「分かりました。お入り下さい」
女中が部屋の襖を開ける。
平山が中に入ると座布団に座らせる。
「始めまして、俺は鬼頭 将と言う。ここ大蔵村で厄介になっている」
「ほう、そなたが。
それでその鬼頭殿がこの平山に何のようかな?」
「まぁ、腰を落ろしてゆっくりとして下さい。
今日は菅生 法明さんの葬儀の日だ。穏やかにやらないと」
「ふん」




