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鬼ケ島伝説 鬼がしらと呼ばれた男  作者: 武田 健太郎


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56/125

56.

「まぁ見てろ」

ハルナがそう言うと桟橋の渡し板を思っきり殴る。


バゴン!! 大きな音を立て分厚い渡し板が割れてしまう。

「私はガキの頃からあんなゴツい男達と喧嘩して来たんだ。言っとくがあの2人の腹はこの桟橋の板よりも硬いぞ」


「失礼した。改めて1人の武将して対戦させて頂く」

木村 湯治 丸松がハルナに頭を下げると油断等無く構える。


ハルナと木村 湯治 丸松が対峙している中、伝次郎が何処かに消える。幸太郎が伝次郎を見て頷いただけで誰も分からないうちに姿を消してしまう。


木村 湯治 丸松とハルナが互いに動けない状態の中、拮抗が崩れる瞬間が合った。


誰かが放った矢がハルナと木村 湯治 丸松の間に突如刺さったのだ、奇しくもそれを合図に2人が一気に攻める。


木村 湯治 丸松は刀を横一文字に斬るように降る、ハルナがその動きを読んでいたのか一歩深く近付くと刀を持つ木村 湯治 丸松の手に拳を当てる。


ガッ!! 「グムッ」ガチャン!


刀を持つ手に打撃を受けた木村 湯治 丸松の手は両手ともあらぬ方向に指が曲がり、刀を持つ所か箸すら持てない状態になる。


悶絶する木村 湯治 丸松の首にハルナの強烈な突きが刺さる。それと同時に鈍いくぐもった音がして、木村 湯治 丸松が倒れてしまう。



それを見た木村家の者達が一斉にハルナに向う、するとハルナが着物の首を持ち急に後ろに投げられる。


「ひゅえ?」

ハルナの変な声が辺りに響くと幸太郎がハルナの前に立ち、木村家の者達との対戦を始める。


「ハルナお疲れ様。後はユキに任せましょう」

「え? でも愛様」


「良いの、私達は私達の必要な事をしないと行けない。

恐らくお父様はもう生きていない、将には悪い事をしてしまった」

「え? ど、どう言う事ですか?」


ハルナの声が小さくなる。

ハルナが走り出そうとするのを忠勝のおっちゃんが止める。

「ハルナ、今行けば将に迷惑がかかるだけだ」

「でも、じいちゃん。また将1人に責任を負わせるの?

将はこの村の人じゃ無いんだよ」


「ハルナ、心配無い。お父様は殺されたんじゃないの、もう命の火を灯す力が無いのよ」


そこに幸太郎が来る。

「愛様、こいつらの事は任せて良いかな?」

「ええ。ユキはどうするの?」


「デンは問題無いだろう。問題はマタが顔を出さない事だ、村の入口に行ってみる。

やっぱりみんな脆い、将程頑丈なら話くらいは聞けたかも知れないのな」

「お願い、タガルとヤガルが来たと言うことはマタもやられた可能性があるわ」


「ふー。考えたくは無いがその可能性は否定出来ない。入口付近も見て回る」

「ユキ、ごめんなさい」


「愛様は何も間違えていません。まして将がいなければ、それこそ我々はすでにいなかったかも知れません。


それにあの又佐ですよ。奴はしぶとい、殺しても死なない奴です」


幸太郎がそう言って愛に頭を下げると村の入口に向かい走って行く。


その時、俺は一人で菅生 法明の最期を看取っていた。

「将、悪いね。君は僕達の村には何も関係無いのね」

「気にするな。高々数ヶ月だが濃い時間だ、菅生さんは俺の家族だ」


「有難う」

その言葉を残し息を引き取る。あの二十歳位の若い見た目だった菅生 法明は、歳相応のお爺さんの顔になっていた。

これでやっと月読みの神職から解放されたのだろう。何故かそう思ってしまう。


菅生 法明を抱きかかえると屋敷の中の当主の部屋に行き、敷かれた布団に降ろし、白い布を全身に被せる。


「少し、屋敷が汚れるかも知れない。勘弁してくれ」

そう声をかけると屋敷の庭に出る。


「待たせたな。もうこの屋敷には俺一人しかいない、もう隠れる必要も無いぞ」


すると5人の男が何処からとも無く現れる。

「菅生さんを静かに行かせてもらった事を感謝する」

「良い、正直あんなにお年を召した方だとは知らなかった、月読みの神職は若いと言う噂しか聞いた事が無かった」


「それで、どうやってこの屋敷に忍び込んだ? 屋敷の出入り口は閉ざしたままだったはずだ」

「ここを渡来人達に与えたのは先々代の帝だ。その前までは帝がお遊びに来られた時の別宅としてご利用なさった場所。

貴様らには知らなくても良い事だ」


「そうか、何故この村が狙われるのか少し理解出来たよ。

お前達の狙いは俺が阻止する、俺がこの鬼の島の大将。鬼頭 将こと、鬼がしらだ」


「そうか、貴様があの鬼がしらかぁ!! 私は藤堂 昇太 茂一(フジドウ ショウタ モノイチ)だ。貴様によって京の都を追われてしまった、貴様の首をてがらに都に凱旋しようと考えている」


「俺の首を取った所で何になる?」

「知らんのか? 京の帝はこの鬼の島と鬼がしらに懸賞をかけた。

ならば私達がお前を倒せば藤堂家の復興が叶うだろう」


「何故、俺に懸賞が?」

「蝦夷の者がでかい顔で帝の土地を闊歩している、それがこそが罪である。ましてや鬼の子孫である渡来人達と蝦夷の妖術使いが手を組み、共に帝を倒そう等と企てるとは何とも恩知らずな奴等よ」


「そうか、要は渡来人達が邪魔になった時にそこに都合良く俺が現れた。だからまとめて倒してしまえ。


そう言う事か」


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