55.
本多 七郎太郎 直紀と夢が対峙する中、ハルナが残りの4人の相手を買って出る。
「どうする? 勝負が付くまで大人しく待つか、それとも4人まとまって私と勝負するか?」
ハルナが挑発するように言うが残りの4人はハルナの挑発に乗ることは無かった。
「直紀が名乗りを上げた。名乗りを上げた以上は終るまで待つ、我々は戦いの流儀に沿って戦う」
「珍しいな、ここに攻めてくる奴は皆名乗りはぜす将1人に何十人と束になってかかってくる」
ハルナの言葉に1人の男が不快な顔をする。
「そのような有象無象と一緒にしないでもらえるか。我らは由緒正しい本多家の者、我らには戦の流儀があり、礼儀が有る。
それを犯してまで勝ちにこだわるつもりはない」
そう言われるとハルナも仕方無いと言った顔で男達から離れ、反対側に来て夢の対戦を見守る事にした。
夢が上段に構え、足元に隙を作る。
だがこの本多 七郎太郎 直紀はその隙を狙う素振りも見せず、真正面から夢に刀を振り下ろす。
夢が横に体をずらすと返す刀で本多 七郎太郎 直紀の伸び切った腕めがけて刀を振り下ろす。
ブン! 夢の刀が宙を斬る。
咄嗟に本多 七郎太郎 直紀が後ろに思いっきり飛び退いた。
「「「「うおぉ」」」」
2人の戦いを見ていた者達が唸り声を上げる。
「凄い」「直紀の初太刀がかわされた」
夢の実力の高さに其々が感嘆していた。
互いに距離を取り対峙する中、夢が攻める。蹴るように飛び出すと上段、中段、上段と3連の突きを放つ。
その突きの早さに対処出来ず本多 七郎太郎 直紀が左肩に深手を負う。
「素晴らしい。このような場所にこのような凄腕の剣士がいるとは知らなかった。
改めて本多 七郎太 直紀だ。最後の勝負だろう。参る」
左手で刀を持てずにいる本多 七郎太 直紀が右手一本で刀を持ち夢に斬りかかる。だが、速度は遅く力の入らない刀は軽く夢に返され、深く体を斬られてしまう。
「ハルナ、港に行ってちょうだい。なんか嫌な感じがする」
「夢は?」
「残りを倒したら行く。それよりも先に行ってちょうだい」
「わかった」
夢が残った4人に刀を向けながらハルナと話をするが、残った4人も動こうとはせずに夢との対戦を望んだ。
「鬼頭 夢と言ったか、我らとの対戦を許してくれて感謝する。
我ら4人は本多 七郎太 直紀程強くは無い、4人まとめて対戦を希望する」
「かまわない、将を殺そうとした事を後悔して死ね」
「感謝する」
ハルナが走って港に行くと忠勝、愛、幸太郎、伝次郎、又兵衛、湯吉、美雪、鷹が揃って舟から降りて雑談をしていた。
それに合わせ音も無く弓矢が飛んで来る、人が狙える距離には誰もいないのにだ。
それにいち早く気が付いた又兵衛が弓矢を叩き落とす。
「ハルナ、少し伏せてろ」
伝次郎がそう言うと駆け出しハルナの前に飛び出すと、放たれた弓矢を全て叩き落とす。
愛を護るように忠勝、幸太郎、美雪、鷹が前に出ると戦えない湯吉が愛の後から付いて来る。
「ハルナ、状況を教えろ」
伝次郎が辺りを警戒しながら声をかける。
「棟梁の所は将と又佐がいる。
夢は本多 七郎太 直紀と言う凄腕の剣士と対戦して勝った。今は残りをやっている。
夢から港に行くように言われて来た」
「正しい判断かも知れないね。ハルナ、あんたも戦えるね?」
「当たり前でしょ。これでも鬼頭 将の妻よ、愛様。将の妻の座は譲らないわ」
「フフ、そこまで無駄口がきけたら文句無いわ。
矢を放ったのはヤガルとタガルの兄弟よ、少しづつ距離を詰めてきてる。ここから本番だよ」
「「「「「おおー!!」」」」」
すると海の反対側、愛達が帰って来た方と反対側から3艘の舟が来る。桟橋に船をつけると10人の男達が降り立つ。
「俺は藤堂家家臣、木村 湯治 丸松(キムラ トウジ マルマツ)。
我が主、藤堂家の危機を救うために馳せ参じた。門馬 忠勝殿、菅生 愛殿とお見受けした。
お二人お命でこの村を救う事が出来る、我らと共に京の都に来る気は無いか?」
「断る。すでにお前達の仲間がこの村を襲撃している、お前達の方こそ、ここで頭を下げて京の都に帰った方が良いぞ。
我らのかしらは優しくは無いぞ」
「ふん、話は決別した。これより名乗りは要らぬ。皆のもの小奴ら全てを討ち取れぇ!!」
「「「「「おおー!」」」」」
一斉に桟橋を駆けて来る男達を一番最初に攻撃したのがハルナだった。
桟橋の上で走る男達に飛び蹴りを食らわす、直撃した男の首が変な方向に折れ息絶える。
「私は鬼頭 将の妻、鬼頭 ハルナ。
ここは私が預かる」
ハルナを見て馬鹿にするように構える男達に幸太郎が声をかける。
「ハルナを甘く見るなよ、ハルナは我ら三羽烏と喧嘩しても負けること無い位に強い。お前らが何人束になろうと負ける事は無いぞ」
「面白い、木村 湯治 丸松。お相手いたす。
武器は持たんのか?」
「武器? 私の武器はこれだ」
そう言うとハルナが拳を突き出す。
「負けた時の言い訳か?」
「まぁ見てろ」




