54.
朝、ハルナと女中の一人が海に向かう。忠勝のおっちゃん達を迎えに行く為だ。
俺と又佐が菅生の棟梁の屋敷に来る、朝一で来たにも関わらず屋敷は菅生の棟梁1人となっていた。
すでに女中等は忠勝のおっちゃんの家に避難している。この日は先々代の月読みの神職であるババ様が敵が来ると指定した日、この日に合わせて様々な準備が出来ていた。
するとそこに客が来る、農家のような格好でやって来た男がいる。その男に対応したのが又佐だ。
又佐は村に来た男に月読みの神職はいないと伝え、村の出入り口まで送って行く。
その帰りに武器を持った男達5人に囲まれたのだ。
「お前ら、怪我したく無ければ帰る事を勧める」
すると来た男の1人が指示を出す。
「こいつは三羽烏と呼ばれる男の一人、名は又佐。三羽烏の中で一番弱いと言われる男だ、数で押せ」
刀を持つ5人に囲まれるが、又佐としては油断しなければ負けることは無いと踏んでいる。又佐の瞬発力やスピードに付いて行ける者は少ない、又佐は自分を良く理解している。
又佐が武器を持つ男達に囲まれたままで、軽く腰を落し手を下に広げるように構える。
又佐は手加減をするつもりは無い、獅子はネズミを捕らえる時も手を抜かない。その言葉を将に聞いてから如何に自分より弱い者であっても油断せず、確実に倒す事にしている。
「シュ!」
後にいる奴が上段から斬りかかる。
ドン!
又佐が体をくるっと一回転させて刀を避けると同時に後から斬りかかる者の首を殴り付ける。殴られた男の首はあらん方向に曲がり男は力なく倒れてしまう。
「しぇっ」「ぬぁ!」
刀を持った男2人が前後から斬りかかる、又佐がヒラリとジャンプをすると後の男の背中を押すように蹴る。
ジャス。ドス。
又佐に蹴られた後の男が勢い良く前に飛び、前から斬りかかるかかる男の刀で斬られてしまう、それに合わせ後ろから刺すように突きを出した刀が前から来た男の胸に深々と刺さった。
「今だぁ!」「おおー!!」
前から来た男2人の刀を交わすと一気に2人との距離を詰め、男達の顔を殴る。
殴られた男達の顔は原型を留めずに後ろに倒れた。又佐がその後、道を確認。特に隠れている者がいないのを確認して村に入ろうとして後を振り向いた。
ドス、ドス、ドス。
突如、音も無く後ろから放たれた弓矢の矢が又佐の背中に深々と刺さる。
「ば、馬鹿な」
又佐が倒れる体に力を入れ、入口の崖に身を預けながら村の中に急いで入る。
「何故だ、油断無く見て確認したはずなのに」
又佐が村の中に入り、近くの家に飛び込む。猟師の男が又佐を怪我を見てすぐに矢を抜くと傷の手当てを始めるが、思った以上に深く刺さった矢が又佐の意識を奪っていく。
その時、俺は菅生の棟梁の屋敷の前に陣取り侵入者と対峙していた。数にして25人、皆かなりの腕だ。
だが、幸いな事に屋敷の前にさほどの広さは無く、目の前は階段で俺に取っては有利な状況だ。
刀を抜いて中段に構え、腰を深く落し少し前屈みの姿勢を取る。
「敵はこの男1人、皆でとらえよ」
「「「「おおー!」」」」
「でゃッ!」
一番手前の男が階段を駆け上がり、下段から刀を振り上げる。
体を斜めに進め刀を交わすと、階段を駆け上がって来た男の胸に深々を刀を刺す。
「珍しいな、京の都の兵士達はみな名乗りを上げて武功を取るものだと思っていたが、こんな戦い方も出来るんだな」
「ふん、我らはすでに死人。死人に武功等必要有るまい」
「そうか、なら相応に対処しよう」
「でゃ!!」「ふん!」
複数の男が俺を狙い刀を振る。あるものは一気に階段を駆け上がり、その勢いそのままに飛び上がる。
あるものは、姿勢を低くし俺の足元に刀を横なぎになぐ。最後の男は身動きが取れないように自らが仲間の攻撃を受ける覚悟で俺に抱き着き動きを止めようとする。
上段と足元に結界魔法を発動。迫りくる刀を結界で抑えると、抱きついて俺の動きを止めようした男を横に斬る。
「うおぉ」「はっ!」
俺の刀が迫る男を胴を横一文字に切り抜けた。
そこから身体強化をかける、負けること無いが屋敷の中に残してきた菅生の棟梁が何故か気にかかってしまい、短期決戦を持ち込む事にした。
刀である鬼がしらに魔力を込めると刀身が白く輝き放つ、魔力を込める事でこの刀である鬼がしらにある変化が起きる。
刀がバイブレーションのように細かい振動をおこす。その振動した刀を使い、目の前にいる男達を一刀両断して行く。
けして負けないと思いがあるが何やら不安な気持ちにさせられてしまう、この男達に時間をかけることは出来ないそう思うだけだ。
だが、数が多い。その上、棟梁の屋敷の前の通りには村の人達の家が立ち並んでいる。こんな所でスラッシュ等の技術を使う事も出来ずにひたすら斬り倒すしか無い状況で、30分以上の時間を費やす。
やっとの思いで菅生の棟梁の屋敷に来た男達を倒し、屋敷の中に入り菅生の棟梁を探す。
時を同じく忠勝のおっちゃんの家についた夢とハルナ達も忠勝のおっちゃんの家の前で5人の男と対峙していた。
「この場所に夢と言う凄腕の女がいると聞いて来た」
「夢は私だ」
「俺は藤堂家家臣、本多 七郎太 直紀(ホッタ シチロウタ ナオキ)。
藤堂家、剣術指南役を務めた男だ。
俺と勝負して頂きたい」
「いいだろう。私は鬼頭 夢、鬼頭 将の妻だ、誰であれ鬼頭 将に敵対する者は許すつもりはない」




