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鬼ケ島伝説 鬼がしらと呼ばれた男  作者: 武田 健太郎


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52.

「私はこの実田を預かる総大将、時東 鎌田薫 只信と言う。此度は何事だ?」


「何をしらばっくれている。

この藤堂とか言う一族を俺達の村に送り込ませ、戦いを挑んで来たのはお前達であろう」


只信が俺を睨み付けている所に桃太郎が来て間に入る。

「父上、ここは私が対応いたします」


「鬼がしらよ。今は農作業の忙しい時期、我らと言えど戦をしないのが決まりだ。

まして我らは時東家の一族。藤堂家とは悪いが縁は無い」

「なに? それは済まなかった。

てっきり実田の嫌がらせだと思っていた」


そこに只信が出る。

「藤堂家は確かに縁もゆかりもないのは確かだ。だが、京の都においては我らの同胞。

その者達の処分に付いては私に任せてもらう事が出来るか?」

「かまわない、もしお前達がいらないならここで全ての首を跳ねるつもりだ」


そう言うと刀を抜いて連れて来た男の首に当てる、すると桃太郎が慌てて俺を止める。


「待ってもらえるか。先も言った通りこの農作業の忙しい時期、人手が欲しいのは何処も一緒だ。

お前とて、藤堂家の者を村で預かるのがしんどいからわざわざ連れて来たのだろう」

「なら、預けようか。


しかし勘違いとは言え済まなかった。本当にこいつらを実田の者達だと勘違いしてしまった」


刀を鞘に収めて頭を下げる。その行動に只信と桃太郎が驚いた顔で俺を見る、謝罪した事が余っ程驚いたようだ。


そしてやって来た桃太郎に連れ立ってやって来た者達に付けている縄を渡す。

「桃太郎、こいつな藤堂 孫一 三太(フジドウ マゴイチ サンタ)と言うらしい。藤堂家の棟梁 藤堂 昇太 茂一(フジドウ ショウタ モノイチ)の末弟だと自ら言っていたぞ」

「なっ!?」


「じゃあ悪いが俺達はこれで戻る事にする」


時東 鎌田薫 只信が俺を睨んだ上で気勢を張る。

「鬼がしらと言ったか。今回はこれで許してやろう、だが次は無いぞ」


「そうか、そう思うなら何時でも来い!!

俺一人でこの実田の全てを終わらせてやろう。心配するな、例えお前達がいなくなっても他の奴等がこの実田を再興するだろう、悔いなく死ねるぞ」


只信が真っ青な顔で立ち尽くす。


その後、幸太郎を連れて街を出る。かなり緊張していた幸太郎だが街を出た頃には緊張が解けていた。


只信が桃太郎を呼ぶ。

「桃太郎、あれが鬼の島の総大将。鬼がしらか。あ奴が言うと冗談に聞こえない所が恐ろしいな」


「父上は初めてでごさいましたな、あれが鬼がしらでございます。

それよりも報告がございます。鬼がしらのやつ、この藤堂家と我ら時東家が争っている事を知っていた可能性があります」


「なに? どう言う事だ」

「あの、先頭につながれたやつ。あいつはこの桃太郎の世話焼きとして当家に仕えている者です、名をハンタと名乗っておりました」


「ああ、ハンタは知っておる。働き者で賢い者だ」

「ハイ、ですが鬼がしらから直接名前を言われましたが、藤堂 孫一 三太と言う者。藤堂家の当主 棟梁 藤堂 昇太 茂一の末弟だと言っておりました」


「何? 藤堂 孫一 三太と言えば3年前から平山家に厄介になっていると聞いたぞ」

「ハイ、ハンタが来たのも3年前。一度調べ直した方が良いかと存じます。


そして、ハンタの後につながっているものは、三郎太と言いこの桃太郎の飯番にございます」


只信が戦慄き始める。

「するとあの鬼がしらの奴、こいつらの素性を知った上でこの私に預ける為にわざわざやってきたと言うのか?」

「恐らく、これで京の藤堂家が失職してくれればそれで良し、もし攻めてきても確実に倒すとの意思表示かと」


「ふ、ならその思惑に乗ってやろうじゃないか。丁度兄上からも尻をたかれて所だ、恐らく兄上の配下もいるだろう、そやつらを警備兵士として使え、残りは藤堂家に買取ってもらおうかの」


その後、時東 鎌田薫 只信が直接、俺に捕まった藤堂家の者達を京に連行した。

それに合わせて俺の妖術により、全ての者の名前が晒された事が広がる。


権力の中枢にいる者達に取ってはこれ程に楽しい噂話は無いだろう。

内大臣として権力を掌握しつつあった藤堂 昇太 茂一は時東家と時東の派閥の猛追を受け京の都を追われる事になる。


自らの末弟を時東家の世話焼きとして入れ、情報を集めていた。そんな者に内大臣等危険極まりない、いつ帝の身に何か起きるやも知れない。


それが失職をする理由となる。そうなると藤堂家を付いていた他の一族も手のひらを返して近づかなくなり、時東家の一強体制が出来上がってしまった。


京の都を追われた藤堂 昇太 茂一は、妻の実家である平山家(※)に身を寄せる。場所は今の熱海一帯(※)、平山家は熱海一帯で一大勢力を誇る豪族だ。


平山家は代々お上と呼ばれる京の役人のトップとの繋がりを作り続けて来た。その一つがこの藤堂家だ。


そしてこの藤堂 昇太 茂一の失職が鬼がしらと呼ばれる鬼頭 将に戦いを決意させるきっかけとなった。


茂一が平山家棟梁に兵士を貸してくれるように話す。

「お父上様。この茂一に平山家の兵士を貸して抱きたたくお願いに参りました」


「茂一殿、我らの兵士を使い何をなさいますか?」

「決まっております、このままでは我が藤堂家はお家断絶となります。それを避ける為には実田では出来なかった、あの鬼がしらの首を取ること。


私にはその力がございます」


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