49.
その後、少しづつ菅生の棟梁と雉子藤が会話を始める、それに合わせ少しゆっくりと歩く。2人はだいぶ昔からの知り合いらしくちょくちょくと会っていたらしい。
だいぶ親しげに話をしていた。
それから忠勝のおっちゃんの家に入ると菅生の棟梁を降ろす。
すでに忠勝のおっちゃんが家にいて雉子藤の到着を待っていた。
「雉子藤様、お忙しい中有難うございます。本日、我が家の前で又次の親方か息絶えておりました」
そう言うと又次の親方が寝かされた布団の所に案内する、雉子藤が信じられないと言った顔で又次の親方を見る。
忠勝のおっちゃんが雉子藤を見ながら説明をする。
「ここに来た時はすでに」
「そうか」
「雉子藤様、これをご覧下さい。又次の親方がずっと握りしめていたものです」
「拝見する」
そう言って見た刀の鍔を見て驚愕していた。
「すまない、これを又次が持っていたのだな」
「ハイ、我々が気付いて家に入れた時は親方以外に誰もおりませんでした。そして、亡くなってもなお、離そうとはなさいませんでした。
後は背中に深い切り傷があります、ご覧になりますか?」
「頼む」
忠勝のおっちゃんが配下の漁師に体の向きを変えさせる。すると深い切り傷が合った、恐らくこれが絶命に至った傷だとはっきりと分かる位に。
雉子藤が忠勝のおっちゃんに深々と頭を下げた。
「門馬の親方、菅生の棟梁。ありがとうございました。
申し訳ございませんが又次をここで弔って頂けますか?」
「かまいません」
「菅生の棟梁。ありがとうございます」
雉子藤がそう言うと少しの間何も言わずに震えていた。
「又次の所にタガルとヤガルと言う若者がおります。もしタガルとヤガルと会ったら伝えて下さい。
二度と私の前に来ないようにと、もう私は親では無く敵であると。私は桃太郎様の家臣。
そうお伝え願えますか」
「雉子藤様、よろしいのでしょうか?」
忠勝のおっちゃんが雉子藤に聞く。だが、雉子藤は真っすぐな目で忠勝のおっちゃんを見返しただけだった。
「忠勝のおっちゃん。俺が雉子藤を送って行く」
「ああ、そうしてくれ。わしらはまだやる事がある、又次の親方を入れる穴もほらんとな」
「じゃあ、行くか」
俺の声に反応して雉子藤が菅生の棟梁と忠勝のおっちゃんに頭を下げる。
「鬼がしら。本日は助かった」
「俺は何もしていない」
「京から御触れが出るかも知れん、お前の事は良く分からんが出会い方が違えば仲良くなれた気がする」
「そうか、俺もだ」
雉子藤が突然、俺に頭を下げた。
その後は互いに何も言わずに村の出入り口まで来る。雉子藤の連れてきた兵士達は動く事無く雉子藤の帰りを待っていた。誰一人として微動だにせずにいるその姿は如何に雉子藤と兵士達の信頼関係が強いかを表していた。そして、雉子藤が如何に優秀な指揮官であるかも物語っている。
雉子藤が外で待っ兵士達に声をかける、すでに部下をまとめる武将の顔になっていた。
「本日の視察は以上である。皆待たせた」
「「「「「「「「「「はっ!」」」」」」」」」」
雉子藤が戻ると兵士達が整然と並び後をついて行く。如何に統率された優れた兵士達かが良く分かる瞬間だ。
「伝次郎、悪いが俺も先に戻る」
「かまわないが何かあったか?」
「ああ、夢と愛の2人がやり過ぎてない事をねがうよ」
「将、多分無理だぞ。夢も火が着くと止まらん性格してるが、愛様は夢よりも火が付きやすい性格をしている。
下手すると今頃そいつらを肴に宴を開いているかも知れない」
「伝次郎、脅かすな」
「いやいや、本当だ」
「なぁ、一緒に行かないか?」
「こ、断る、お前の妻達だろ。ここは旦那としての度量の広さを見せ所だ」
そう言うと伝次郎が俺から離れてしまう。何か物凄く不味い事になったのを気付かずにいたらしい、ちょっと家に帰るが億劫になって来た。
伝次郎と別れて家に来ると、家の外に複数の人が縛られた上で放置されていた。家に入るとハルナと夢と愛の3人がほのぼのとした雰囲気でお茶を飲んでいる。
「ただいま。なぁ、外にいる人達はどうしたの?」
「どうもしない、私らを女だけで住んでると思って襲って来たんだ。
でも、将の言いつけどうりに家からはでてないぞ」
ハルナが元気良くそう答える。そんなハルナはまるで子犬のように褒めて褒めてと俺の言葉を待っている。
「ハルナ、怪我は無いか?」
「うん、大丈夫」
「良かった。ハルナありがとう」
そう言って抱き締めて頭を撫でる。
すると夢が俺に抱き付いて来る。
「将、私も頑張ったぞ」
「ああ、夢。ありがとう」
お礼を言うと満足気な顔で俺の胸に顔を埋めてくる。
そんな2人を見ていた愛が2人を見て笑いだす。
「なんか大きな猟犬のような感じだな、将に随分と懐いてしまったな」
そう言うと笑い続けてしまい、ハルナと夢が抗議していた。でもこの時代に狩りに猟犬を使った狩りをしていたのか? 時々愛の話に出る言葉が良く分からなくなる事がある。
もしかしたら俺の言語スキルが翻訳する際に俺に分かる言葉として選んでいるだけかも知れないけど。




