48.
又次を引き取りたい。その言葉に伝次郎を始め、ここに集まった村の若い衆が緊張する。
すると菅生の棟梁が雉子藤を見てすまなそうな顔をする。
「籠一殿、大変申し訳無いが、又次の親方を生きて引き渡す事は出来ない」
「「「「「「「なにぃ!!」」」」」」」
雉子藤が連れてきた兵士達が怒気を持って菅生の棟梁に詰め寄る、それを俺と伝次郎がおさえる。
「やめろ、私は菅生の棟梁とお話をしている、お前達の出る所ではない」
雉子藤がそう行って兵士達を後に下げる。
「菅生の棟梁、生きてと仰ったがどう言う事か教えて頂きたい」
「分かりました」
菅生の棟梁が静かに今日の出来事を話し始めた。それは俺も知らない事が多かった、菅生の棟梁の部屋に矢文が撃ち込まれそれを見た菅生の棟梁が一人で忠勝のおっちゃんの家に向かった。
そこで村の警備に当たっていた又佐に会い忠勝のおっちゃんの家に連れて来てもらった。
すると忠勝のおっちゃんがすでに亡くなっていた又次の親方を家の納屋に入れて体を調べていた、その体には後から何箇所も刺された後が合った。
又次の親方が自力でここまで来たのか、誰かがここに運んだのかは不明だが忠勝のおっちゃんの家の目の前で倒れていたのは確からしく、すでに事切れていた。
「そんな都合の良い話しを良くのうのうと言えるな、何でもかんでもお前達の都合の良いようになると思うなよ」
1人の兵士がそう叫ぶと残りの兵士達も同調する。
どうやら雉子藤の配下の中にも間者が紛れ込んでいるらしい、雉子藤がその叫んだ男を睨むがすでに後に下り見えなくなっていた。
雉子藤が後を振り向き兵士達を一喝する。
「静まれぇ−!!
ここはこの雉子藤 四郎 籠一と菅生の棟梁との話し合いである。
誰であれ邪魔する者は斬って捨てる」
雉子藤の迫力有る一喝で騒いでいた兵士達が皆に大人しくなる。
しかし雉子藤の胆力は凄い、雉子藤は桃太郎と同じ18才、それでこの胆力だ。若いながらも一家をまとめる男の凄さが返り見えた。
すると兵士達の一番後にいた数人が騒ぎ始めた、雉子藤に対しそんな話は信じる必要等無いと進言し始めたのだ。
「今、発言した奴は前にでろ!!」
雉子藤の声に兵士達が2つに割れる、すると奥に固まり騒いでいた兵士3人がいた。
「そなた達、我が雉子藤家の者ではないな。何処の者だ?」
「何を言われます、我々は長い間雉子藤家に仕えた者でございます」
3人の兵士が震えながら雉子藤に言う。
その姿は完全に不味いと思っているのだろう、何時でも逃げれるように足を前後に軽くずらし腰を屈めている。
「良く、この私の前でそのような嘘が付けるな。この雉子藤 四郎 籠一、お館様及び桃太郎様より切り捨て御免の許可を得た臣下である。
貴様らはその事を忘れている訳ではあるまい」
「ちっ」
真ん中の男が舌打ちするのを聞いた複数の部下達が3人の男を取り押さえる。
どうやら実田の中も一枚岩ではないらしい。
しかしこの雉子藤 四郎 籠一は、頭の良さだけでなく切り捨て御免の許可を得る程の相当な信頼を得ているのだろう。
お館様と呼ばれた者や桃太郎に害が有ると判断したら許可なく切り捨てて良い。そう確約されている。
それ程の信頼関係なのだ。
そんな男が一人で来た。
その意味は大きいのかも知れない。
最後とばかりに雉子藤 四郎 籠一が3人の男に声をかける。
「貴様ら何処の者だ?」
「はっ、我らはカマリの残党でございます」
「そうか、捕まった時はそう言えと言われていたのだな」
雉子藤にそう聞かれると何も答えなくなる。その後、雉子藤によって斬首された。
「誰ぞ、この者達を弔ってやれ。この3人の報告は私が直接お館様に行う」
「「「は」」」
「なれば我らが弔います。籠一様は先に話を進めて下さい」
「ふむ、任せた」
「菅生の棟梁。恥ずかしい所をお見せした。出来れば私の目で見て確かめたいと思うがよろしいだろうか?」
「では、私が案内したいと思います」
菅生の棟梁がそう言うと一人の若い衆に湯吉宛に使いをだす。
「雉子藤、お前達全員を連れて中に入る理由には行かない。連れて行く奴を選んでもらえるか」
「「「「「「「「「な、なにぃ」」」」」」」」」
「やめろ! この男が鬼がしらだ。
お前達が敵うわけも無い」
「ちょっ、ちょっと待ってくれ。
俺はお前達から鬼がしらと呼ばれているのか?」
「何を驚いている? 鬼の頭と書いてキトウと読む。
ならば鬼のかしらと言って何も問題あるまい」
雉子藤のその説明に伝次郎が何故か頷く。
しかし、異世界に行っても鬼がしらとからかわれて、ここでも鬼がしらと呼ばれて何でこうなるのかね。
ふと愛刀を鬼がしらと命名したミューモの事を思い出してしまった、あいつら元気にしてっかね。
「鬼がしら待たせたな。この2人を連れて行く」
「分かった」
返事をすると菅生の棟梁を背負子に乗せて背負うと村の中に案内する、伝次郎とすれ違う時に伝次郎を見ると黙って頷いていた。
すると両側の崖の上の猟師達がスッといなくなる。
「雉子藤、隣に来い。菅生さんの話し相手になってくれるか?」
「俺で良いのか?」
「ああ、菅生さんもそんな長く無い。心残りは嫌だろう」
「な!?」
雉子藤が驚いた顔で菅生の棟梁を見る。菅生の棟梁も黙って頷いていた。




