45.
ハルナ、夢、愛の会話録
「あの愛様。将が私達のずっとずっと先の子孫って言ってましたけど、それってどう言う事ですか?」
ハルナが初めて踏み込んた質問をする。
「そのままだよ。私らの全く知らない、想像もつかない程に遠い先の子孫だ。まあ、将もその事は知らないけどね」
「そ、そうですか」
「なんか不思議だ」
「だから、ハルナと夢は鬼頭を名乗る一番最初の人になる、そう言う話だよ」
「ひょっとしてババ様が言ったその男の子共をもうけよ。そうすれば未来永劫に栄えるって言葉は本当って言う事?」
「そうだ、龍神様は別の国を護る神様だ。だから私達には直接影響力は無い、でもその代わり将の子供を得た者達は未来永劫に繁栄が約束されている」
愛がハルナと夢を見る。
「ここまで大雑把な流れはわかったね」
ハルナと夢が何と無くと言いつつ頷く。
「将に付いてだ。
最初に言った通り、将は優しい子だ。
そんな優しい子が大姫に突如招かれて大国に行って戦士にさせられた。
実際に将は何度も心臓が止まり、心が砕ける体験をしながら力を付けて行った。まぁ、農具すら持った事の無い将が、あの重たい刀を縦横無尽に振るうんだ。それくらいしないと覚えられもしないだろうよ」
「愛姉、将は刀だけなの? 他にも何かやらされたの?」
夢が不安そうに聞く。
「あるよ。
妖術の基礎となる妖力と言われる力を引き出す為に、大姫の国に古くから伝わる薬が有って、それを使って将は妖力を得た。
その時も何度も何度も心臓が止まりそれを再生させるを繰り返して行くんだ、その儀式で死ななかったのは過去200年で将ただ1人だけ。
それ程の大変な事をして来た」
愛がそこで話を止めて、一呼吸置いて話を始める。
「将は色んな国の人達を助ける為に色んな人達と戦った、親しくなった人や仲良くなった人達とも戦ってきたんだ。心が完全に壊れなかっただけでも凄い事だと思う」
愛はババ様と共に龍神から将の話を聞いた時に、将の姿を見た。
如何にして連れて行かれ如何にして強くなり、そして心を閉ざしてしまったかを。その変化を愛は見続けた。
最初は、小型の動物のようなものと対峙しただけで、ビビっておしっこを漏らしたりしたのに、半年も経たない内に数百の兵士達と対戦して負ける事が無い程に強くなった。
妖力を伸ばす為の薬、毒に対する耐性を付けるためのトレーニング、恐怖や精神異常を起こさない為のトレーニング等、その一つ一つが将の心に強固な壁を作った。
心が苦しまないように、自分を壊さないように。
そして何よりも、自分達と変わらない人達との戦いが将の感情を押さえ込んで行く。より強く心の壁を強くしてしまった。
そもそも、将を呼び出した国々もまとまりの無い状態だ。表面上は薄い氷のような脆さの中で保っていても、その薄氷の下では様々な対立や主導権争い、自分達の信じる正義の違い。
そんなどうでも良い事に巻き込まれて行き、その国々の多くの兵士達と戦う事になる。多くの裏切りや欺き、信頼と疑いの中で揉まれてきたのだ。
それでも強くなった将は多くの称賛を集める、だが高々5人の人達で世界を手中に収めようする大国を相手にするのは基本的に無理な事だ。
表立って将を呼んだ国は将を護る事はしなかった。大姫自ら敵の大将を捕らえる旅に出ていながら、援護する事が無かった。
将を呼んだ国の王は弱く、敵対する国に攻められるを恐れ将を始め大姫達の活躍が聞こえて来るまで将の存在を隠し続けていた。
そしてこの王が望んだ結末は敵の大将と将が共倒れする事。それこそが完璧なシナリオだと、最終的に結論にいたった。
だが、その時すでに将は複数の国から敵の兵士達を追い出し称賛を浴びる存在となる。
そこで国の王は龍神様に助けを求めた、王のその行動に龍神様は腹を立てた。だが、将を助ける為にそれを利用するのが良いと考えるようになる。
そして国の王に言う。
「私の指示したように動きなさい。もし守れないなら将を元の世界に戻した後。お前を、お前の国の全てを潰して火山の一部にしてやろう」
その言葉を聞いた王が必ず言う事を聞く、そう約束したのだ。
「愛姉、つまり将はその国に、良いように使われて苦しむ位に心を閉ざした状態になったと言う事?」
「夢、早まるじゃないの」
「でもっ」
「将はこの事を知らないの。それに知る必要が無い、将がうなされるのはこれからの話だ」
「え? まだ有るの」
「ハルナ、将をちゃんと支えてあげなさい。それはハルナと夢にしか出来ない事だよ」
「将は仲良くなった人達や兵士達と戦う必要が合ったの。
それも沢山の人達を倒して進むしか無かった」
戦争に参加して人を殺す。そんな経験をした者は皆苦しむ、それが優秀な者であればある程沢山の人を殺す事になる。
ましてや将達は高々5人。5人で様々な国を回り、人々を助け続けた。
その戦いの凄惨さは物凄かった。
そして敵の大将との戦いが将を壊した、将と敵の大将は良き対戦相手だった。実力もほぼ同じであり戦いは一進一退を繰り返す。
将とその敵の大将は、戦いの中で互いを認め合い、信頼し合える位に互いを理解して仲良くなったのだ。互いに互いを理解し、お互いの正義を信じてぶつかり合う。
たが、いずれ戦いは終わる。
「そっかぁ。将が可哀想」
「ハルナ、可哀想なのは確かだけど、でも私達がやらないといけない事がわかった気がするよ」
「夢は強いね、私はそこまでは無理だよ」
「ハルナ、ハルナは1人じゃない。私も一緒。私も怖いもの」
「うん」
「ほら、気持ちを切り替えよう。将を迎えに行って一緒に沢山の思い出を作ろう。そして沢山産まれた子供達に教えてあげなきゃね」
「え? 夢、沢山子供を作るの?」
「え? だって1人だけなんて言われて無いでしょう」
「ムッ、夢に負けない」
「私だってハルナに負けないんだから」




